News & Topics

横浜合同法律事務所ニュース1

新春のごあいさつ

弁護士 根岸 義道

 新年、おめでとうございます。

 さて、昨年9月に小泉純一郎前首相の後を受けて安倍晋三首相が誕生しました。安倍首相は、憲法改正を政権公約としており、防衛庁の防衛省への昇格、教育基本法の改悪などへの動きからも明らかなように、憲法9条を改変して我が国を戦争のできる国にしようとする志向は小泉前首相より強いと言われています。

 しかし、安倍首相の意向とは反対に、米国中間選挙における共和党の敗北に見られるように、今や世界の多くの人は平和を望んでおり、ブッシュ大統領の戦争政策に対しては多くの批判がまきあがっています。そして、この動きは我が国においても必ずしも例外ではありません。

 昨年3月に岩国市で行われた米軍艦載機移駐の賛否を問う住民投票では、有権者の過半数が米軍艦載機の厚木基地から岩国基地への移駐計画に対する反対の意思を表明しましたし、昨年12月には横須賀市で行われた原子力空母の横須賀配備についての住民投票条例を制定するための署名運動が成功裡に終了し、今年1月にはこれらの署名を武器として市議会で条例制定のための論戦が行われようとしています。

 今年はまた、1977年9月27日に米軍機が緑区に墜落し、林和枝さんと2人の幼い子を殺し、椎葉悦子さんに大やけどを与えてからちょうど30年になります。椎葉さん一家は、国は国民に対し平和のうちに暮らす権利ー平和的生存権を保障する義務があるとして裁判を行い、この裁判を支援した人々によって横須賀市長沢の丘に1985年9月29日に平和の母子像が建立されました。現在は、この平和の母子像の横に椎葉さん一家の裁判闘争の経過を記載した誌碑の建設が取り組まれています。

 なお、昨年の正月早々、横須賀市に居住する佐藤好重さんが横須賀に入港した空母キティホークの乗組員に金品目的で惨殺されるという事件が発生し、我が国に基地がある限り平和のうちに暮らす権利は保障されないということを改めて実感させました。しかし、遺族の方々は、10月20日に犯人の米兵と国に対して損害賠償を請求する裁判を提起して闘いに立ち上がっており、私たち横浜合同法律事務所の弁護士も全員訴訟代理人に加わりました。

 このように、一方で私たち国民が平和のうちに暮らす権利を脅かす動きはますます激しさを増してくると思いますが、他方で多くの人が平和を守るための具体的な行動に立ち上がってきています。 私たち横浜合同法律事務所は、平和を望むすべての人々とともに、行動し闘っていくつもりですので、今後も皆さんの叱咤激励をお願い申し上げます。

 

教育基本法「改正」案について

弁護士 阪田 勝彦

 2006年11月16日、教育基本法の「改正」案が衆議院を通過し、本稿を執筆している12月12日現在では、まだ参議院での審議中という状況である。

 この法案については、現在、日弁連を始めとして弁護士の約90%が反対し、大学教授など研究者も1000人以上が反対し、世論調査の結果、約80%もの人が反対もしくは慎重審理を求めている。どうしてこんなに反対の声が強いのか?

 この教育基本法「改正」案には、二つの側面がある。
 一つは、報道でもさんざんっぱらやられているように、かつての教育勅語に繋がる「愛国心教育」だ。要は、お国のために命を張れる国民を量産させること、それが目的である。通常国会では、テレビ報道がないときも多くあったが、その際には、与党議員は何をいっているか、驚くべき事に、彼らは天皇のために命を投げ出すことを定めた教育勅語の復活を望んでいるのだ。

 いま一つは、教育における格差をつくることだ。 「魚屋の息子が政治家になったら不幸になる」の言葉で表されているように、親の経済力・地位がそのまま子どもの教育に繋がる、教育の格差、これを生み出すことを「改正」案は求めている。

 実際に、戦前の教訓を踏まえ設けられた政府の教育への介入を禁じた教育基本法10条を変容し、「教育振興基本計画」という名前で、行政が教育内容を決定していくことができるようになる。そこで何をやろうとしているかといえば、学校を競争させ、教師を競争させ、子どもを競争させること、できない子に与える教育はやめ、できる子にだけ教育を与える。これが政府のやろうとしていることだ。それは否定すらしていない。

 ランク付けされた学校に入るためには、多額のお金が必要となり、子どもも自由にしていられる時間などなく、まして受験に無意味な科目なんて教わりたくもない(そんな子は負け組行き決定だ)、教師は、評価をおそれ子どもと向き合わず、いじめなんて起こったら給料下げられ、下のランクに落とされるからいじめを見てもないことにする。これは今でもある状態だ。これをさらに、助長しようというのが「改正」案だ。

 これは地方ではもっと酷くなるだろう。成績のよい学校だけに金があつまる仕組みである教育バウチャー制度、この導入によって、学校は公立・私立ともにランク付けされる。 ランク上位の学校に入るために、親たちは全ての財力をつかって子どもを競争させる。入れれば良い。また都心でそのようなランク上位の学校があればまだよい。でも、入れなかったら?そもそもそんな学校が地元になかったら?貴方の子どもには、ランク上位の学校に金も教員も吸い上げられた「吹きだまり」の学校だけが残されている。

 誰がこんな世界を求めているのか?政治的問題にかかわる法案について右派・左派それぞれの考え方があるのは分かる。でも、「魚屋の子は魚屋」「貧乏人は子どもも貧乏人」誰がこんな選民思想のような教育を望んでいるというのであろうか。

 

かながわ女性9条の会

弁護士 関守 麻紀子

 いじめに苦しんだ子どもの自殺が相次いでいます。そのニュースに接する度、胸がきりきりと痛みます。ある晩などは、夕刊の1面に2件のいじめ自殺の記事を見つけ、胸がつぶれる思いでした。この国は一体どうなっているのだ、と苦しく思う方は多いのではないでしょうか。

 朝日新聞では、「いじめられている/いじめている あなたへ」という特集をして、毎晩、著名人が、自身のいじめられた体験、いじめた体験を語り、決して死んではいけないと訴え、いじめる側に対しては、いじめを止める勇気を持とう、と訴えています。これらのメッセージが、今苦しんでいる子ども達に届き、少しでも力になってくれることを祈るばかりです。

 けれど、気になることもあります。

 いじめられている子どもに向けた「勇気を出して、親や先生に打ち明けてみよう」とのメッセージがありますが、現実には、いじめられている子どもの告白を誠実に受け止め、子どもの立場に立ってくれる親や先生ばかりではありません。子どもが勇気を持って打ち明けても、期待していたような対応をしてもらえなくて、もっと苦しく感じてしまうことが、もしかしたらあるかもしれません。それでも、「死なないで。死んではいけない」と言いたいです。大人になれば、自分ひとりでできることも多くなる。今とは全然違った人間関係を築くことができて、楽しい、うれしい、と感じることができる日が絶対に来る。だから、死んではいけない、と伝えたいです。

 もうひとつ、気になることがあります。

 いじめる側の子どもに対して毅然とした態度をとるべきだ、と言われることです。 いじめる側の子どもに対して、その言動がいかに人を傷つけているか、わからせることは必要です。けれど、子どもは、まだ、人格を形成している途上なのです。その子どもが間違ったことをしたら、それは、その子どもだけの責任ではないはず。子どもをそのような言動に向かわしめた、親や教師も含めた、私たち社会の責任なのではないでしょうか。いじめる子どもに対しても、健やかに成長させてやるべき責任が、私たちにあるということを、忘れてはならないと思います。

 この国は、一体どうなってしまっているんだろう、という思いが胸を過ぎる時、憲法のことを思います。憲法が考えている人間像は、最も尊重される存在であり、自立し、他者にも配慮した生き生きとした個人である、と思っています。もっとも、現実には、色々なことがあり、理想的な人間であることなど難しいですが、それでも、理想像を胸に思い描けるのとそうでないのとでは、希望の持ちようが違ってくるのではないかと思うのです。

 この国のあり方についても然りです。憲法9条は、理想論に過ぎる、という考えもありますが、理想を持っているからこそ、それに向かって努力できるのではないでしょうか。現に、私たちは、憲法9条が持っているからこそ、これまで戦争をせずに来ることができました。  この9条を守るため、様々なところで、さまざまな人たちが、「9条の会」を立ち上げ、がんばっています。わが事務所でも、横浜合同9条の会を作って活動しています。

 またひとつ、9条の会ができました。2006年8月、神奈川在住の女性23名が呼びかけ人となって、「かながわ女性9条の会」を発足させました。

 「日本国憲法は、尊い命を奪った第2次世界大戦の反省から、平和と民主主義の願いを込めてつくられました。とりわけ9条は、2度と戦争しないことを世界にアピールするとともに、戦争のない世界をめざす流れのさきがけとして人類的価値を持っています」として、基地県神奈川から、350万人を越える女性有権者が手をつないで9条を守ろう、今なら私たちの力で9条を守ることができます、と呼びかけています。

 多くの方に賛同していただいて、「神奈川県の350万人の女性が憲法9条を変えないと言っている」と言いたいです。ぜひご賛同下さい。
(神奈川女性9条の会アピールと申込み書がありますので、賛同していただける方は連絡を下さい)

 

横浜合同法律事務所9条の会
第2回独自企画を終えて

弁護士 近藤 ちとせ

 平成18年12月2日,横浜合同法律事務所9条の会では,第2回独自企画として「いまさら聞けない教育基本法改正〜入門の中の入門」という講演を行いました。私は,事務所の憲法委員会のメンバーとして,この独自企画に携わらせて頂きましたので,今回のニュースでは,この講演の内容等について簡単に報告するとともに私の勝手な感想を述べさせていただきます。

 今回の企画は,大きく第1部と第2部で構成され,45人の参加者がありました。

 第1部では,当事務所の阪田勝彦弁護士から,「入門国家主義的教育基本法(教育基本法「改正」)」という題目で,教育基本法とは何か,「改正」を目指す人々の思惑,どのように「改正」されようとしているのかについて話がありました。中でも特に説得的でわかりやすかったのは,教育基本法の「改正」を目指す人々の思惑についての説明でした。

 政府は,「改正」の目的について少年犯罪の増加に歯止めをかけることやニートやフリーター問題の改善,学力低下防止などと説明しています。しかし政府の本当の目的は,このようなものではないとのことでした。政府の目的は,「戦争のできる日本人育成」にあることが,今から50年以上も遡った1953年のロバートソン・池田合意(当時の米国大統領ロバーソンと日本の池田首相の間でなされた合意)の内容から明らかであるということでした。当時から,米国政府は,日本の青年に平和教育を施すことが日本の防衛にとって妨害要因に過ぎないことを指摘し,日本政府は日本国民に「愛国心」を助長することについて第一の責任を持つべきであると要請し,日本政府はこれに合意していたというのです。この説明を聞いて,私は,1人1人の人間を成長させるためにある教育を,国(だけでなく他国である米国)が国民を操るための手段として悪用しようとすることは絶対に許せないと感じました。

 第2部では,八王子南大沢中学校の社会科教員である糀屋陽子先生から,学校教育の現状と教育基本法の「改正」が,教育現場にもたらす影響などについてお話がありました。 糀屋先生のお話は,東京都の教育現場について,これまで理想的な教育現場として他県のみならず他国の教育機関から視察などの対象となってきたが,最近では石原都知事の国家主義的強行的な教育政策のせいで,もっとも自由の阻害されたモデルとして反対の意味で講演を要請される状況だという皮肉な現状の報告から始まりました。東京都では,これまで子供達が自ら作成した卒業制作祭壇に展示して卒業式を行う学校が多かったが,都知事や教育委員会の指揮の下,卒業制作の展示はできなくなり,代わりに日の丸を祭壇に掲揚して,生徒は直立して君が代を斉唱することになったということでした。

 それでも,糀屋先生によれば現行の教育基本法の存在は,子供のための教育を守る砦として機能しているということでした。「改正」がなされれば,教育を守る砦が崩され,教育現場から「平等」や「自由」等の大切な価値が更に大きく失われるおそれがあるとも説明されていました。

 糀屋先生のお話を聞いて,私は,卒業式は,子供たちのためではなく,国や都知事のものに成り下がってしまったと感じ,これからの教育,これからの子供達の行く末を考え,暗澹たる気持ちになりました。しかし,同時に,糀屋先生の「『子供達のために』と思うと元気が出てがんばっていける」という先生の言葉に元気づけられもしました。

 現在,このニュースを書いている時点で,教育基本法は衆議院での議決を終え,12月8日には参議院で強行採決される見込みといわれています。このニュースが皆様の下に届く頃には,教育基本法は変わってしまっているかもしれません。私たちは,教育基本法に守られて育てられてきたというのに,この法律が変えられようとするのを止めることはできないかもしれません。しかし,今回の9条の会独自企画を終えて,私は,教育基本法が変えられてしまっても,教育は,子供達のためのものでありつづけなければならないと感じました。そして,そのためには,先生達と一緒に「子供達のために!」と声を上げ続けていくことが何よりも大切であると確認しました。

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