News & Topics

横浜合同法律事務所ニュース5

憲法施行六〇周年を迎えて

弁護士 畑山 穰

 「美しい国日本」をスローガンに颯爽と登場した安部晋三首相。

 彼の祖父故岸信介もと首相は、戦前、原子爆弾の地獄の業火を浴びせられて挫折するに至るまで、国民を欺き、日本の軍国化と対外侵略政策を策定し実行して、破滅の淵へ導いた指導的政治家のひとりでありました。彼は、一九四一年一二月八日、第二次世界大戦の戦火を一気に太平洋全域に拡大した昭和天皇の対米英宣戦布告詔書に、東条英機内閣の商工大臣として東条首相らとともに副署しております。

 東条英機首相は極東国際軍事裁判所によりA級戦犯として処刑されましたが、岸信介さんも、一旦はA級戦犯容疑者として巣鴨プリズンに捕らえられたものの、その後のアメリカの対日占領政策の変更により危ないところで釈放され命びろいすると、それまで不倶戴天の敵鬼畜米英撃滅と国民を対米戦争に煽りたてた路線から手のひらを返し、アメリカに忠誠を誓って日米安保同盟体制を強力に推進するようになりました。

 安部首相は、この岸信介さんを政治家の手本として敬愛してやまないと広言しておりますが、結局、彼が思い描く「美しい国日本」の実像とは、戦争放棄、戦力不保持の大原則を定めた憲法九条を打っちゃってしまって、日本を戦争しない国、戦争のできない国から、戦争をする国、もっとはっきり言えば、アメリカの始める戦争にアメリカの言うなりに参加しなければならない国へと作りかえてしまおうということです。

 核兵器など大量破壊兵器の保有というウソの口実をかまえてブッシュ大統領が始めたイラク戦争は、イラクの民衆に残虐な犠牲を強いる出口の見えない泥沼状況で、今や、アメリカ国民からすらも見放されてしまっているというのに、安部首相は、航空自衛隊の派遣など、未だその支持をやめません。

 日本国憲法施行六〇周年を迎えた今日、私たち国民は、今度は、岸信介さんの孫の安部首相の舌先三寸に騙されることなく、憲法前文が「・・・政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と高らかに宣言して、憲法九条の平和原則を確立した初心に立ち帰り、主権者として現行憲法の改変を許さず、憲法九条の平和の理想の実現に向かって、世界にその真価を輝かせようではありませんか。

 

「ストップ原子力空母母港裁判」始まる!

弁護士 根岸 義道
  1.  横須賀米軍基地は1978年以降米海軍空母の事実上の母港とされてきていますが、米国は、1975年以降配備する空母を徐々に原子力空母に変えており、1998年10月には今後建造される空母はすべて原子力空母とすると決定しました。
     2003年11月初頭から横須賀米軍基地内の12号バースの改修工事が開始されましたが、この工事は古くなって傷んだバースを改修するとの名目で行ったものの、その工事内容は従来277mであったバースを414mに延長するというもので、通常艦より一回り大きい原子力空母であっても停泊を可能にするものでした。
  2.  政府や東京電力が「原子力発電は安全でクリーン」との宣伝を繰り返しながらも、首都圏には原子力発電所が1つも作られていないことからもわかるように、もし原子力発電所の事故が首都圏で起こったらその被害は甚大なものになります。
     しかし、原子力空母は自ら原子力発電をしながら航行するもので、まさに動く原子力発電所そのものであり、航海中の座礁事故の発生や、大量の弾薬類の搭載などを考えると、通常の原子力発電所とは比較にならないほどの危険性を持っています。
     そのため、2005年7月行われた横須賀市長選挙において蒲谷市長は「原子力空母ノー」を公約に掲げ、当選後の記者会見において、「12号バースの協議は通常艦を前提にこれまでやってきたのだから、その前提でなければ協議には応じられない」と明言し、横須賀市議会も全会一致で原子力空母の横須賀配備に反対してきました。
  3.  ところが、同年12月、日米両政府は、地元の意思を無視して、キティ・ホークの後継艦として、2008年に原子力空母ジョージ・ワシントンを配備することを発表し、2006年4月17日に、何らの具体的なデータや根拠を示すことなく、単に抽象的に「原子力空母は安全」とするだけの「合衆国原子力軍艦の安全性に関するファクトシート」が米軍から提出されると、蒲谷市長は、これを待っていたかのようにわずか2回の「意見を聞く会」を開いた後、市民の意見が集約できたとして同年6月14日の横須賀市議会全員協議会で原子力配備容認に転じました。
  4.  このような横須賀市長の原子力空母の容認転向後、市民運動の中から「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」が結成され、原子力空母の配備をめぐる住民投票のための条例制定請求署名運動が、2006年11月6日から法定期限である12月5日まで行われました。41,591筆の署名(横須賀市選挙管理委員会の審査による有効署名数は37,858筆)が集められ、成功裡に住民投票条例案が横須賀市議会に提出されたことは、この間の報道でご存じの方も多いと思います。
      住民投票条例案は本年2月8日共産党・ネット・無所属の議員10名の賛成、自民党・公明党・民主党ら31名の反対によって否決されましたが、翌日の神奈川新聞によると、インタビューに応じた市民は全員、住民投票条例案を否決した横須賀市議会の態度に批判的であったといいます。
  5.  実は、現在の12号バースは、原子力空母が停泊するには水深を確保できないため、海底15mを掘り下げるしゅんせつ工事が必要です。
     そこで、国は7月はじめしゅんせつ工事を来年5月完了の予定で開始しました。
     しかし、このしゅんせつ工事は、それ自体重金属を含む汚染物質の固まりであるヘドロを撹拌することによって海洋汚染を進めるものであり、また前記のとおり原子力空母の母港化を前提にしたもので、もし原子炉事故が横須賀港で発生すれば、横須賀市から半径165kmの範囲内(関東7都県、長野・山梨・静岡各県)の住民に回復しがたい放射能被曝被害を与えるものです。
     そのため、工事着工の直前である7月3日、横須賀市から165kmの範囲内に居住する600人を超える市民によって、しゅんせつ工事を差し止めようとする訴訟「ストップ原子力空母母港裁判」が横浜地方裁判所横須賀支部に申し立てられました。 横須賀港が原子力空母の母港となることによって多大な生命身体に対する被害が発生することについて多くの市民が真剣に危惧していることを、裁判所に理解してもらうために、今後も原告を追加して行こうと考えています。
     横須賀市から165kmの範囲内に居住する方はどなたでも、この訴訟の原告になる資格があります。「ストップ原子力空母母港裁判」の原告になっても良いという方、原告にはなれないが趣旨は賛同するという方のご参加を募っています。是非多くの方のご参加をお待ちしております。

−連絡先−
横須賀市大滝町1−26
清水ビル3階 横須賀市民法律事務所方
「ストップ原子力空母母港裁判」を進める会
Tel 046-827-2713 Fax 046-827-2731

 

「改正」少年法の問題

弁護士 関守麻紀子
  1. 平成19年5月25日、少年法「改正」法が成立しました。少年法は、すでに2000年に改正されており、「再度の改正」は少年非行への厳罰化をさらに強め、警察の関与を増大させるものとなってしまいました。
  2. 今回の「改正」は、(1) 触法少年との疑いのある少年に対し、警察が「調査」をすることができる、(2) 「おおむね12歳以上」の年齢であれば、少年院に収容することができる、(3) 保護観察中の少年が遵守事項(約束事)に違反すると、少年院、児童自立支援施設などの施設収容とすることができる、等とするものです。
     いずれも、犯罪を犯した少年が持つ問題を正しく把握した上での対応とは到底思えません。
     犯罪を犯す少年、とりわけ低年齢の少年は、そもそも育って来た環境に問題がある場合がほとんどです。子どもは、周囲の大人(特に親)から愛されることによって人を愛する感情を持てるようになるし、周囲の大人を見て、振るまい方やものの考え方、ものごとへの対処の仕方を学んで行きます。犯罪を犯す少年は、親や周囲の大人たちから愛情を与えられた経験がなかったり、よい社会人としての適切な振る舞い方の見本を示してもらうことができなかった子どもです。虐待を受けたなど、過酷な成育歴の少年もいます。
     このような経歴をもつ少年にとって必要なことは、まず、本来子どもが与えられるべきものを与えること、愛情を与え、模範となる振るまい方やものの考え方を示してやることです。「育て直し」が必要と言われるのはそういうことです。
     神戸児童殺傷事件の加害少年について、少年院は、児童自立支援施設の手法を取り入れた「育て直し」の処遇を行ったと言われています。
    • (1) 触法少年に対する警察の調査権限
       触法少年とは、刑法等の刑罰法令に触れる行為をしたが、14歳未満のため刑事責任を問われない少年です。刑法は、14歳未満の子どもがした行為には、刑事責任を問うことはできないとしており、そのため、このような少年に対して警察が調査できるとする法律の規定はありませんでした。それが、今回の「改正」により、このような少年に対しても、警察の「調査」が及ぶことになりました。 子どもに対して、児童相談所という福祉機関による対応によらずに、警察が調査するとすることは、「育て直し」の考え方からはかけ離れています。 また、警察の誘導にのりやすく虚偽の自白をしやすい、冤罪を生じやすいという問題も、子どもの年齢が低ければ低いほど、顕著になります。
    • (2) 少年院収容の対象を「おおむね12歳以上」としたこと
       今回の「改正」では、これまで少年院に収容できるのは14歳以上の年齢の少年とされていたのを、「おおむね12歳以上」であれば少年院に収容できることになりました。小学生であっても少年院に収容することができることになったのです。   小学生の子どもこそ、温かい優しい家庭的な雰囲気の中で接する必要がありましょう。少年院という矯正施設に収容して、規律を課し集団生活をさせることによって、欠点を直すことができるとは思えません。
    • (3) 保護観察中の遵守事項を理由とする少年院送致
       少年が少年審判を受けて保護観察処分にされると、遵守事項が決められます。保護司との面接等を通じての指導監督を受けながら、自力で更生することが期待されているのです。これまで、少年と保護司のコミュニケーションがうまくとれないという問題が指摘されていましたが、今回の「改正」は、この問題に対して、少年に対し「施設収容」をちらつかせて指導に従わせることになりかねません。
  3. 他方で、市民や、少年に関わるさまざまな団体、私たち弁護士が法案の問題性を指摘してきたことを受けて、国会の審議の過程で、当初の法案が修正された点もあります。
     まず、当初の法案は、警察の調査は、上記の触法少年に対してだけでなく、ぐ犯少年である疑いのある者(ぐ犯少年とは犯罪を犯すおそれがあると考えられる少年を言いますので、『犯罪を犯すおそれがあると疑われる少年』ということになります)にまで及ぶ、とするものでしたが、ぐ犯の疑いがある少年に対する警察の調査の規定は削除されました。
     また、上記の触法少年に対する警察の調査については、弁護士付添人を選任することができることが明記されました。
     さらに、一定の重大事件について国選の付添人を選任するとしたことも一歩前進と評価できます。
  4. 法務省は、今回の「改正」の目的を、「個別の事案やその少年の特性に応じて、その少年に最も適切な処分を行えるようにする」ことにある、と説明していますが、「改正」の内容は、少年の立ち直り、すなわち、少年が社会で生き抜いていく力をつけてやれるようにすることとはかけ離れていると思います。
      また、安倍首相は、「改正」について「少年犯罪が凶悪化する中、被害者の気持ちを考えれば、やむを得ない」と述べていますが、成人による凶悪な事件もあとを絶たず、少年犯罪に限ったことではありません。
     そもそも子どもが健やかに育つことのできない社会は、社会自体が問題を抱えているのです。
     そのことを放置し、問題の本質をみないまま、いたずらに少年にのみ責任を押し付けるようなことがあってはなりません。私たちは、引き続き、少年法がどのように運用されるのか、注視していかなければなりません。
 

「離婚後300日以内に出生した子の戸籍問題」

弁護士 太田 啓子

1 なぜ無戸籍子が生じるのか
  民法772条は、夫婦が離婚した後300日以内に出生した子については、離婚する前の夫(前夫)を父親と推定する、という規定を設けています。このため、その期間に出生したとの出生届を出すと、前夫を父親として子の戸籍が作成されることになります。子が、「本当は自分の父親は違う男性だ」と戸籍上の父親の変更を求めたい場合には、母親の前夫に対し調停や訴訟を提起しなくてはなりません。
 このことから、前夫の子として戸籍が作成されることを避けたい等の理由で母親が出生届を出さず、結果として戸籍が無い子が多数存在することが社会問題としてクローズアップされています。法務省の推計によれば離婚後300日以内に出生する子どもは年間約2800人にのぼるということですが、この問題に取り組んできたNPO関係者はこれよりもっと多いだろうと指摘しています。実際に出生届を控えるケースの多くを占めるのは、夫の暴力から逃れて別居中の女性が、離婚手続が未了のうちに新しいパートナーの子を妊娠したというパターンだという報道もあります。いずれにせよ、戸籍が無い状態について子自身には何も非難されるような事情は無いのに、無戸籍という重大な不利益を被っているというのは大変な問題です。

2 民法772条の問題点
 そもそも民法772条のような規定が置かれている目的は親子関係を早期に安定させ、子の福祉を実現することにあります。親と子には、相続や扶養など様々な法律関係が生じますので、親子関係が明確でなければ混乱をきたしてしまいます。例えばある男性が亡くなったとき、その相続人である子が誰か不明確では困るわけです。このような混乱を避けるためには法律で何らかの父性推定規定を置く必要があるのですが、問題は、現実に置かれている推定規定である民法772条が、その目的に照らして合理的かどうかです。
 弁護士の実務経験上、離婚する前には一定期間の別居が先行していることが多く、その別居期間はケースによって、数ヶ月から数年にも及ぶことも珍しくありません。そのような別居期間中は、形式的には婚姻中ではありますが、実際には婚姻関係は破綻しているといえ、その期間に法律上の夫の子を妊娠するということはあまりに考えにくいことです。特に、夫の暴力を恐れ、逃げ回っているようなケースでは尚更です。それなのに、妊娠後に離婚しても、その子を前夫の子と推定するという法律は全く実態に合わないものであり、前夫にとっても子にとっても母親にとっても何の利益もありません。前夫との間に鋭い感情的な対立があったり暴力などを理由に前夫に対し強い恐怖感を抱いている場合などは、母親は前夫の関与をおそれ、やむを得ず出生届の提出をしないという選択を迫られてしまうのであって、このような選択を迫る民法772条は早期に合理的な内容へと改正されるべきです。

3 立法による救済案の見送り−問題は「性道徳、貞操が害される」ことではない
 この問題について「子自身に関係無い事情によって無戸籍という重大な不利益を被らせることがあってはならない」という問題意識から、一部の議員が超党派でプロジェクトチームをつくり、議員立法により解決しようという動きが今年の2月頃以降にがありました。ところがこれに対し4月頃から自民党保守派議員などから「離婚成立前に妊娠した、不倫の子まで立法で救済するのはおかしい」という声があがり、長瀬法務大臣が4月6日の記者会見で「貞操義務なり、性道徳なりという問題はみんな考えなければならない」と発言するなどして立法への反対意見を表明し、結局立法は見送られてしまいました。結局、「妊娠が離婚後であることが医師の証明で明らかな場合には前夫の子でないとして出生届を受理する」という運用をする通達が出されたに留まりました。しかし、法務省の調査でも、離婚前に妊娠したケースが9割を占めたとの結果がでており、この運用では9割の子どもが救済されません。
  長瀬法務大臣を初めとする、「離婚前の妊娠を立法で救済することへの反対」意見には「何をズレたことを言っているのだ」という思いを禁じ得ませんでした。そもそも自分の懐胎時期が両親の離婚の前か後かについて、子どもは全く関知し得ないのに、それによって大きな取り扱いの差が出ることを法律上放置しても構わないのだという、平等感覚の鈍さにはあきれて物も言えません。
  また、離婚前の妊娠を「貞操義務、性道徳に反する」とか「不倫の子」と称する感覚にも強い不快感と違和感を感じました。離婚前に妊娠する事情には千差万別のものがあり、非難されるような事情が無いものも多くあります。様々な理由で、別居から離婚まで時間がかかることは珍しくありません。このことはつまり、相互の信頼関係も愛情も無いけれど法律上は夫婦であるという時期が長期間できてしまうことを意味するわけですが、このような期間に、形式的な配偶者がいるというだけで、他の男性の子を妊娠することは本当に「性道徳に反する」などと非難されるようなことでしょうか。私にはとてもそうは思えません。立法反対意見論者は現実の当事者を全く見ておらず、観念的で誰のためにもならない道徳論をふりかざしているだけだと感じました。長瀬甚遠という現役の法務大臣から「貞操義務、性道徳」という言葉が出たことを、私は絶対忘れません。「この大臣は、当事者の苦悩を全く知らないし知ろうともしていないんだ」とよくわからせてくれる発言でした。「女性の離婚前の妊娠は貞操義務、性道徳の問題」などと発言するのであれば、例えば性風俗店の隆盛を支えている「男性の性道徳の乱れ、貞操義務違反」についてのご見解も是非うかがいたいところです。女性の「性道徳の乱れ」のみを非難し、男性の「性道徳の乱れ」については沈黙するというのであれば、ダブルスタンダードの誹りを免れないと思います。

4 家族観が多様になり、離婚が必ずしも不幸とはいえないという意識が広がってきたという時代状況のなかで、離婚は増加する可能性もあります。その中で不幸な思いをする子どもが少しでも生じないように、民法772条の早期改正を期待したいと思います。

トップページ 事務所紹介 取り扱い事件一覧 法律相談のご案内 費用について 所属弁護士 事務所への道順 リンク集 News & Topics 横浜合同法律事務所9条の会からのお知らせ