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横浜合同法律事務所ニュース6

教育3法案の強行採決の意味

弁護士 阪田 勝彦
  1.  2007年5月19日、与党は、「学校教育法等の一部を改正する法律案」(学校教育法等「改正」案)、「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案」(教員免許法等「改正」案)、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」(地教行法「改正」案)(いわゆる教育3法案)について、参議院文教科学委員会で、野党反対の中強行採決し、翌20日に同本会議で、野党の反対を押し切り、採決を強行して参議院を通過させました。ようやく法案の法的問題点等が明るみになりつつあるなかの拙速採決でした。
     このいわゆる「教育3法案」ですが、この法律は非常に多くの問題点を含んでいます。
  2.  学校教育法等「改正」案においては、「教育課程」を文部科学大臣が定める権限とし、教育内容に広く国が介入できるとし、その内容についても、国が考える「正しい歴史認識」や愛国心の押しつけなど、憲法違反の疑いが極めて強いままとなっています。副校長・主幹等の管理職の設置についても、国家による教育の統制を図ることはもとより、慢性的な教員不足の中、大阪府の例のように、既存の教員が主幹等に配置されることによりさらに教員が子どもたちと向かい合う時間を確保できないという事態も引き起こしかねません。
  3.  教員免許法等「改正」案も、研修制度と教員の身分問題という本来は別次元の問題を連動させるばかりか、その講習は試験(筆記試験と実技試験)であり、その内容・講師に至るまで文部科学省令に白紙委任されることとされています。これは、教員に対する国家的統制を強め、「国のいいなりになる教員づくり」を目指しているものと言わざるを得ません。また、適格性を欠くなどとして分限免職処分を受けた場合、教員免許状は失効することが新たに盛り込まれているのですが、これに対する不服申立手段の保障もなされていない状態です。教員免許法等「改正」案は、親や子に寄り添って創意工夫にあふれた教育をなそうとする教師の努力を阻害するものとなるでしょう。
  4.  地教行法「改正」案は、新たに「基本理念」の条項を置き、「改正」教育基本法の趣旨に則って地方教育行政が行われるべきとし、さらに、文部科学大臣の権限を強化しています。国会審議では、「具体的な措置の内容を示して是正の要求をする」具体例として、「教育委員会が国旗・国歌の指導をしない」場合を含むことを明言しています。この「是正要求」が、愛国心や国旗・国歌を強制するための統制手段に繋がることが懸念されます。
  5.  以上のように、教育3法案は、子ども、学校組織、個々の教師及び教育委員会という教育に携わる全ての者に、国家的統制を敷こうとする法案であるといえます。このような事態は、まさに、戦前の「国家による教育」への回帰を思わせる内容です。この法律が濫用されないよう、私たち保護者や現場の教員の方々が注意深く見守っていく必要があると思います。
 

連日の勝利命令・勝利判決−湘南ドライビングスクール事件

弁護士 高橋 宏
  1. 連日の勝利命令・勝利判決
     争議勃発から約3年、この春は、3月19日の労働委員会の勝利命令、翌20日の横浜地裁の勝利判決と、相次いで、神自教湘南ドライビングスクール支部の組合員全員に従業員たる地位確認が認められ、画期的な年となりました。
  2. 事件概要
     湘南ドライビングスクールは、湘南地区から秦野地区への移転を計画し、社長が従業員に対して全員を連れて行くことを公言・約束することで、秦野校の立ち上げとそこへの円滑な移転に、従業員の協力を得て、移転事業を進めました。神自教支部の組合員も進んでこれに協力をしてきました。
     ところが、湘南校を運営してきた和田グループは、移転先の秦野校については、和田グループ内の別法人を運営会社とし、秦野校が立ち上がるや、「全員を連れて行く」などと約束したことはないと開き直りました。そして、本人が希望する限り、湘南校の従業員については秦野校に移転させながら、支部組合員だけは秦野校への移転を認めないという態度をとりました。そしてそのような中で、支部の書記長等が支部組合を脱退すると、その途端に秦野校への移転を認めるという露骨な不当労働行為を行いました。さらに、残った支部組合員については、平成16年6月に閉校となった湘南校の校舎へ出勤を命じ、何もすることのない職場で、支部組合委員を監視するという極めて非人道的なことを約10ヶ月間にわたって繰り返しました。そして、平成17年2月、湘南校の運営法人を解散し、支部組合員全員を会社解散を理由に解雇したのでした。
  3. 本件の特徴
     ここ数年、実質的には同一の経営主体が、労働組合員等を排除する目的で、別法人を利用して営業譲渡等を行い、法人解散に伴う解雇を行うという悪質な事件が後を絶ちません。本件も本質的には、そのひとつですが、中でも、本件は、一定期間法人を併存させた上で解散解雇を行っている点で、脱法性に一層磨きがかかっているという特徴がありました。
  4. 裁判所等の判断
     しかしながら、本件では幸いなことに内部告発等があったこともあって、和田グループの実体やグループ内法人間の移転計画の存在、さらには、全員を連れて行く発言の存在について、事実関係については、ほぼ完全に立証をすることができました。
     これを受けて、労働委員会では、実質的同一性の理論によって、裁判所では、和田グループの移転計画の下、秦野校の取締役でもあった湘南校の社長が全員を連れて行くと約束したことにより、秦野校と支部組合員との間に、停止条件付き入社契約が成立したとの理論によって、いずれも、従業員たる地位が存在することが確認されたのでした。
     現在、東京高等裁判所と横浜地方裁判所(労働委員会命令に対する行政訴訟)に舞台を移し、会社の脱法行為を糾弾し、支部組合員全員の職場復帰を実現すべく、最終解決に向けた取り組みが行われています。
 

一つの事件の終わりと新たな始まり

弁護士 田渕 大輔

 去る1月19日、思想・信条を理由とした差別の是正を求めていた168名の申告者と石川島播磨重工業株式会社との間において、和解協定が調印されました。

 今回の和解は、平成12年、東京武蔵地区の労働者9名が、差別の是正と損害賠償等を求めて提起した訴訟において、平成16年3月に成立した和解条項の中で、会社は差別是正の申し入れがあった場合には、和解の精神を踏まえて誠実に対応する旨を約束していたことから、この条項に基づき、3年余りの粘り強い交渉と、労働基準監督署、労働局、厚生労働省等への申し入れや、申告者たちの積極的な運動の末、最終合意にたどり着いたものです。

 その内容も、会社が過去の労務政策について「反省」の意を表明し、現役44名の職能等級や賃金等の是正、過去の差別により生じた損害に対する解決金の支払いといった、過去の差別の精算だけでなく、今後、会社に同じような差別を行わせないための再発防止協定の締結をも勝ち取ることが出来たという点で、画期的なものとなっています。

 会社が行っていた差別は、申告者たちの個人情報を、会社の人事勤労が組織的・継続的に収集した「ZC(=ZERO COMMUNIST)計画管理名簿」や、申告者たちの職能等級の昇級や賃金の昇給を退職時点まで予め定めておく「個別管理計画」を作成し、実際に人事評価を不当に低く据え置いたということや、一部の労働者による自発的な親睦団体の体裁を整えた組織に、会社の忘・新年会や歓送迎会を行わせることで、親睦団体に加入していないことを理由に、申告者たちを職場行事から排除することや、申告者たちにまともな仕事を与えず、飼い殺しにするということなど、執拗かつ人間性の欠片も感じられないようなものでした。

 そのような差別に対して、今回、会社に非を認めさせ、裁判を経ないで差別是正を勝ち取ることができたということは、大変喜ばしいことです。また、受けた苦痛や強いられた苦労に比べれば、微々たるものではありますが、申告者の方々の被害を回復できたということは、何よりの成果です。

 ただ、石川島播磨が行っていた差別は、同社に特有のものではなく、多くの大企業が労働組合の力を弱めるために行ってきたものでした。そして、現に、そのような差別的労務政策は、過去の多くの判決で断罪されながらも、現在の大企業の労働組合の実状を見れば、成功してしまったと言わざるを得ません。

 それでも、日本経済が右肩上がりの成長を続け、終身雇用、年功序列といった日本的雇用慣行が生きている限りは、労働組合が力を喪ったとしても、多くの労働者にとって問題は無かったのでしょう。

 しかし、そのような日本的雇用慣行が崩れてしまった今日、大企業が空前の利益を計上する一方で、多くの労働者がその恩恵に与れないばかりか、心身の健康を損なうまでに懸命に働いても、自らの最低限の生活を維持することさえ困難な状況が生まれています。そして、労働者の生活を守ろうとする力は、会社の利益を重視する力の前に、押されっぱなしの感があります。  どこで歯車が狂ってしまったのか、どうすればこの状況を変えていけるのか、考えても答えは容易に出てきません。しかし、そのような現状に希望を見出すとすれば、労働者には、法により保護され、与えられた多くの権利があるということです。

 今回の事件では、労働者に与えられた権利の大切さ、それを最大限活かすことの大切さを、改めて教えられた気がします。同時に、今後、労働者の権利を守るために、自分に弁護士として何ができるか、改めて考えさせられた、そんな事件でした。

 

会社による労働法遵守の意識の欠如を実感させられた最近の個別事件

弁護士 西村 紀子

  昨今、大企業による偽装請負や賃金の不明朗なピンハネなどの不正が次々に明らかになっています。

 しかし、これらの不正が明らかになった会社から反省の弁を聞くことはほとんどありません。規制する法律が悪いかのごとき開き直りの弁ばかり、その後一旦改善されたと思いきや失職などの不利益が労働者にふりかかるという理不尽が横行しているようです。

 こういった会社は、公に明らかにならない限り労働法を守る必要がないとでもいわんばかりに、労働者の法律知識が十分でないことにつけこんで劣悪な労働条件を労働者に押し付け、それが明らかになっても反省をすることのないまま、労働法のさらなる「規制緩和」と求め続けてさらに違法状態を継続しようとするようです。

 私も、最近、そのようなことが実感される事件がありました。

 依頼者は、IT系の派遣会社に契約社員として勤めていたKさん。  入社時の面接で、個人事業主であるから社会保険(厚生年金保険・健康保険)・雇用保険・労災保険などは原則として不加入である、しかし、最近は保険に入りたい人が増えているので、手数料を払えば面倒を見るなどと、あたかも社会保険加入を当事者の意思で選択できるかのように労働者に説明をされて社会保険の加入がなされず、また、有給休暇も付与されなかったのでした。

 当然のことですが、社会保険は、一部の業種を除き、常時5人以上を使用する民間事業所や法人に使用される者は、臨時的雇用などの例外を除いて、原則として、すべての者に適用されます。派遣労働者も、要件を充たす限り、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に強制加入するのが原則です。社会保険は法律に基づく強制加入であり、事業所(派遣会社)や本人の希望で加入を選択したり、加入しなかったりできるものではありません。

 しかし、かなりの数の派遣会社が、社会保険加入を当事者の意思で選択できるかのように労働者に説明してきました。そのため、1997年以降、派遣労働者で未加入の人が 会計検査院から厳しく指摘されるなどの経過もあったのです。

 ところが、Kさんが入社した2004年になっても、なお、同じ問題が続いていたということになります。

 Kさんは、これらの点について疑問を持ち続け、ある出来事がきっかけで、これらの扱いが違法であると知り、TJ社の退職を決意し、法律相談に来られたのでした。

 当初の見通しでは、社会保険不加入についての損害賠償は、具体的な損害の金額の立証までできないと判例上難しいから通常裁判で有利な判決を取得することは難しいことに加えて、世の中にはもっと理不尽な会社があることを思えば、それほど大きな問題とするよりは、労働審判での話し合い機能を期待し、社会保険に遡って加入してもらって丸く収まればよい、という発想があり、Kさんには、社会保険事務所に連絡をするようにという話をしておりました。

 そして、これらの違法について、損害賠償請求の労働審判事件の申立を行ったのでした。  なお、TJ社に対しては、予め、法的措置を講ずる予定ではあるが、社会保険の加入については話し合いに応じる旨の内容証明郵便を送付しておりましたが、TJ社からは連絡はありませんでした。

 ですが、会社の遵法意識の欠如と開き直りは、当方の予想を遙かに超えるものでした。  実際に労働審判の場でのTJ社は、社会保険の不加入及び有給を付与しなかったことについて、「認めますよ」という言葉の他は一言の謝罪もなく、あとは、ひたすら、社会保険の不加入については、「業界の悪い慣例」であったがKさんは自分の手取りを増やすために社会保険不加入の方法を選択したのだからTJ社に損害賠償義務はない、有給休暇付与をしなかったことについては、毎月一定の労働時間の範囲で休みを取れるのだから不利益はなく法律違反があってもTJに損害賠償義務はない、開き直りの言い分を縷々述べるだけだったのです。そこには、自分達が刑事罰をもって強制される法律に違反したという意識は皆無であったと言わざるを得ません。

 こういった会社のかたくなな姿勢のため、当方は金銭請求でそれなりに譲歩する意識があったにもかかわらず、折り合うことができず、当初見込んだ調停成立とはならず、労働審判をもらうことになりました。

 労働審判の結果は、社会保険については、当初の予想どおり(悔しいことですが)、損害賠償までは認められませんでしたが、社会保険についてきちんと説明がなされておらずKさんに誤解を生じさせたことに加えてそもそも社会保険は会社が加入しなくてはならないものであるから、会社には責任を感じていただく必要がある、という判断が口頭で示されました。また、有給休暇については明らかなる法律違反であり損害を賠償してもらう必要があるということで会社に損害賠償が命じられました(なお、追加で申し立てていた残業代支払請求も認められました)。

 当方としては、概ねこちらの言い分が認められたので、これをもとに社会保険の加入等の話を具体的に行っていくことができればという思いもあったのですが、その日のうちにTJ社からは異議申立がなされ、通常訴訟に移行することになりました。

 この会社の対応は、もはや、労働法が守られるべき法律であるという意識がなくなってしまっていることに由来するとしか思われません。

 この事件の相談に来られたとき、Kさんは、相当憤慨し、これまで裁判など全く無縁(大方の人がそうですが)で生活したのを、戦う決意をされたのでした。

 こういった一人一人の意識を大切にしていかなくては、大変なことになるという意識を新たにして、頑張っていこうと思います。

以上
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