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横浜合同法律事務所ニュース7

よもやまばなし 「昭和の日」をかんがえる

弁護士 川又 昭

 去年まで「みどりの日」と言われていた昭和天皇誕生日の4月29日が今年から「昭和の日」に変わった。

 「国民の祝日に関する法律」によると「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」のが昭和の日だという。

 昭和のはじめから生きてきたと自負している私にしてみれば「昭和の日」がどうして生まれて来たのか、大いに気になるところである。 「昭和の日」は2000年に議員提案で、この日をもうける祝日法改正案が提出されて以来、二度廃案のうえ継続審議という曲折を経て2005年5月、改正案が成立し、今年から施行されることになったものである。

  その改正法案の成立と時を同じくするように「昭和の日」ネットワーク(特定非営利活動法人)が結成される。

 このネットワークは、式典、講演会、パレードその他「昭和の日を奉祝する記念事業」を実施する計画だという。そうしてこのネットワークには「日本会議」の副会長とか「新しい歴史教科書をつくる会」と行動をともにしていたものなど、右翼の面々が役員に就いている。

 ここに出てきた「日本会議」はわが国最大の改憲右翼団体である。アジアを侵略した日本の過去の戦争を正義の戦争、「自存自衛」、「アジア解放」の戦争だった、と主張してはばからない。「つくる会」は扶桑社版中学歴史教科書にみるとおり、昭和天皇の戦争責任を覆い隠し、日本の行った侵略戦争を正当化する憲法違反の教科書を作った会である。

 こう見てくると「みどりの日」を「昭和の日」に変えたのには、祝日法に謳っていることの裏に別の狙いがあるとみるべきだろう。

 あの侵略戦争で、国内外に数千万の人々を犠牲にした責任者である天皇の戦争責任を、歴史の事実をねじ曲げて免罪し、「慰安婦」沖縄戦、南京虐殺など、「皇軍」の戦争犯罪を隠蔽することにその狙いの一つがあることは間違いないだろう。

 そうだとすれば、私達は「昭和の日」が国民の歴史認識をゆがめ、戦争国家づくりに利用されることのないよう、何をしなければならないかが問われていることになる。

  「昭和の日」ネットワーク等が取り組む「奉祝」記念事業に対するきちっとした批判を怠らないことは勿論、その批判を通して歴史認識を正しく深め、戦争国家づくりと対決することを実践的課題とした活動に意欲的に取り組んで行きたいものである。

 

がんばれッ!憲法劇

浅川 壽一
  1. 21回目の憲法劇
     2007年5月2日と憲法記念日の3日、横浜の憲法劇、「がんばれッ!日本国憲法」第21回公演が行われました。今年の入場者数は、昨年より百人ほど増え、延べ1214人。会場に足を運んでくださった方々、応援してくださった方々、本当にありがとうございました。
     憲法劇の魅力は、第一に、市民中心で行われていること。舞台・演奏・演出官営はプロに頼んでおりますが、脚本の原案の作成や企画・立案・運営等は、すべて市民の手で行われています。第二に、憲法の価値をわかりやすく伝えようとしていること。初めて見る方々にも、演劇を通じて、人権と平和という日本国憲法の価値を、わかりやすく、かみ砕いて、伝えようとしています。第三に、出演者もスタッフも、一所懸命に憲法の大切さを伝えようとしていること。憲法の価値を護り、伝えようという熱い気持ちが、見ている人に感動を与えるのではないでしょうか。
  2. 立て直し
     実のところ、憲法劇の財政は、火の車でした。憲法劇では、舞台・演奏・演出関係などプロの方々に、(安くやって頂いているとはいえ)お金を払って仕事を頼んでいるのです。質の高い公演内容とするためには、この部分を削ることはできません。となれば、財政的な基盤なくして、現行の形態による憲法劇の上演は不可能です。
     そこで、財政的な基盤を整えるため、今年から、サポーター制度を導入しました。憲法劇を財政的に応援してもらうためのカンパを、制度化したものと考えていただけると、わかりやすいのではないでしょうか。一口3000円以上、3000円を超える部分はカンパとして計上。サポーターに加入してくださった方々には、かわいい会員証と、憲法劇本公演へのご招待ほか、様々な特典がついてきます。このサポーター制度が、大当たりでした。2007年公演サポーターには、最終的に128口の加入があり、財政的に大きな基盤となったのです。
  3. 皆様へのお願い
     憲法劇の財政健全化には、なんとか成功しました。しかし、問題はまだまだ山積しています。特に、人手不足。今回の公演では、出演者の一人二役・三役は当たり前でした。スタッフも、足りていません。たとえば、会計を処理してくれる人、公演本番の写真を撮影してくれる人、公演当日に弁当の手配をしてくれる人、稽古場の手配や呼びかけを行ってくれる人、私と一緒にマスコミや団体まわりを行ってくれる人、活動の記録を作ってくれる人・・・仕事はいくらでもあります。
     憲法劇を見て、感動してくださった皆さん。私の拙い文を見て、関心を持ってくださった皆さん。ぜひ、憲法劇に参加してください。サポーター、出演者、実行委員会のスタッフ、どのような形でも嬉しいです。そして、力を合わせて、憲法劇をより大きなものにし、拡がりのある護憲の運動に育てて行きましょう。憲法があぶない今だからこそ、「がんばれッ!日本国憲法」。そして、「がんばれッ!憲法劇」なのです。
 

第3回 横浜合同法律事務所9条の会企画 政治とマスメディア

弁護士 近藤 ちとせ

 平成19年6月23日,馬車道駅近くの万国橋会議センターにおいて,横浜合同法律事務所9条の会第3回企画がありました。
 今回は,元新聞労連委員長の美浦克教さんが「『わたしたちの新聞』であるために,新聞メディアの『今』と課題」というテーマでご講演下さいました。
 美浦さんは,長年に亘る社会部記者としての経験と,新聞記者の労働組合である新聞労連の委員長としての経験を元に、非常に興味深いお話をして下さいましたので、そのご講演の一部について私なりに理解した内容を報告致します。

  1.  現在の新聞の問題点
    (1)表現の自由のために結束できない新聞メディア
     美浦さんによれば,現在の新聞の抱える大きな問題点の一つは,表現の自由という新聞にとって生命線といえる価値を守るためにすら,新聞各社が結束出来ないことです。
      すなわち,本来新聞は、国民の知る権利に奉仕することにこそその存在意義があるのです。そして、国民の知る権利に奉仕する(つまり、国民に正確な情報を与え、国民が物事を判断できるようにする)ためには,新聞は、国家や他の権力に臆することなく自由に事実を伝え,意見が言える立場でなければなりません。そのために,新聞を始めとするメディアは,表現の自由が侵害されることに対して誰よりも敏感あるはずの存在です。ところが,表現の自由が侵害される危機にあっても,新聞メディアは,これに警鐘を鳴らすべく結束することができなくなっているというのです。
      美浦さんは、多くの具体例を挙げて説明されましたが、その一つを紹介すると、陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動事件がありました。
     この陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動事件とは,2004年1月7日から同年2月25日迄の間,陸上自衛隊情報保全隊によってなされた国民に対する調査・監視活動の状況が今年の6月になって判明したという事件です。自衛隊による調査・監視の対象となった団体や個人は,自衛隊のイラク派兵のみならず年金改悪反対の運動や消費税引き上げ反対運動などに携わっていたことを理由に監視の対象とされ,その範囲は,政党や民主団体だけではなく,地方公共団体,新聞記者などのジャーナリストにまで及んでいました。
     美浦さんは,新聞の取材・報道活動までもが自衛隊の監視対象となっているのに,この事件に対する新聞社の姿勢はまちまちであり,表現の自由のためにすら結束出来ないことは問題だと指摘されていました。新聞社の中には憲法9条改憲を社是とするものもあるが,メディアとして存在するために不可欠な表現の自由が制限されていくことを黙認したのでは新聞は新聞らしい活動ができなくなってしまう,それにもかかわらず問題として取り上げない新聞があるのは明らかにおかしいというのです。また,中には大きく取り上げた新聞社もあったが、それらについても、一回の記事で終わらせるのではなく,自衛隊がこの様な活動をしないと明言するまでは,継続的に批判記事を書くべきだ、そうしていかなければ,日本の新聞は,戦前の表現の自由が圧殺された時代に逆戻りしてしまうと指摘されました。

    (2)公正中立,客観報道という名の下に,事実の経緯だけを述べ意見を述べない新聞社
      また,美浦さんは,現在の新聞各社の抱えるもう一つの大きな問題点として,公正中立,客観報道という名の下に,事実の経過と収束のみを報道するという点を指摘します。
      すなわち,本来,ジャーナリズムは,事実が真実であることを証拠を元に分析し伝えると共に、その様な事実が生じた原因や,そのことによる影響等を分析し,そのような状況に賛同しうるのか,又は批判すべきなのかなどの意見を表明する仕事であるはずです。ところが,現在の新聞社は,単に問題がどこに向かって収束していくかという事実の経緯や予測を書くことだけしかしなくなったというのです。
      この問題についても美浦さんは,いくつもの例を挙げて説明して下さいましたが,その一つが,共謀罪に関する報道でした。
      すなわち,現在の刑法は,人が何らかの違法行為を行った場合に処罰する法律です。ところが,共謀罪という犯罪は,実際に犯罪行為をしていなくとも共謀する(=人と一緒に考える)だけで犯罪として処罰することになりうるのです。この共謀罪については、これまで何度も与党が成立を目指しては、国民の批判を受け、成立が阻まれてきたものでした。ところが,このような恐ろしい法律について新聞各社は真剣に取り上げようとはせず,今年になって民主党がその内容に対し反対をし始め,政局にかかわる(つまり,選挙の争点として命運を分けうる)状況になって,しかも強行採決される予定日になって,朝日新聞が初めて「今日採決」という記事を書いただけであったというのです。
      また,美浦さんは,新聞社が、事件や事故の報道に関して警察発表の内容をそのまま早く伝えることにばかり力を入れていることも同様の問題であると指摘します。
      すなわち、本来客観報道というのは,事実について検証し,証拠による裏付けなどをして,事実が客観的真実であるかを見極めて報道することを意味するはずです。ところが,現在の新聞社では,いつ犯人が逮捕されるかという記事が社内で最も評価されるため,警察が誰を犯人と考え,いつ逮捕に動くかということにばかり関心を持ち,まるで警察の見方が客観報道を意味するかのような記事を書き続けているというのです。美浦さんは,この様な警察発表を鵜呑みにする記事が,実際にはえん罪を増加させているというのに,新聞社は,警察の捜査に間違いはないのかというチェック機能を放棄してしまっているのは大きな問題であると指摘されました。
     美浦さんによれば,この様な事態は,裏返せば,何が優れた記事かというメディアの評価に,読者に対する配慮,すなわち読者の知る権利に資する記事であるかという配慮がないことを意味しているというのです。
  2. なぜこの様な状況になっているのか
      それでは,新聞社はなぜこの様な記事を書くようになったのでしょうか。 この点に関して美浦さんは,新聞記者が,前例踏襲ばかりに気を使い,本当に思考して判断することを停止してしまったことにあると分析されています。そして,この様な前例踏襲・思考停止の原因は,経営合理化の名の下、新聞社の経営陣が編集側に影響を与えるようになったことと,個々の記者の労働条件悪化により記者の両親が圧殺されていることにあるというのです。
      すなわち,インターネットやテレビなど新聞以外の報道媒体が国民に浸透する中,国民の新聞離れが深刻となり,新聞社の経営状況は、悪化の一途をたどっています。その様な中,新聞社の経営側は,経営合理化の名の下,成果主義的賃金体系を導入し,これを受けた記者達は,社内でもっとも評価されやすく楽に書ける記事(その典型例が,警察から情報を流してもらい,他社を出し抜いて警察の考えを警察発表より少しだけ早く報道するスクープ記事)の量産を目指すようになったというのです。他方で,人件費削減の結果,記者一人一人の労働条件は過酷なものとなり,記者は、新聞の存在意義を考えたり、その意義のために働こうなどという良心は圧殺された状態にある。そのため、名ばかりの客観報道,公正な報道のために奔走する自分たちの仕事について疑問を抱くことができなくなっていることも原因であるというのです。
     美浦さんは,新聞社が国民の信頼を受けていたのは,それが単なる新聞メーカーではなく,公正で客観的な記事を書いてきたことにあったはずなのに,現在では,大手紙であると地方紙であるとを問わず,会社の生き残りだけを考えている,このままでは,新聞が国民の信頼を失ってしまうと危惧されていました。
  3. 新聞はどうすればよいのか
      美浦さんによれば,この様な新聞の抱える問題を解決するには,新自由主義への傾斜を緩め新聞記者の労働条件向上を図ること,経営と編集を分離すること,そして,市民と記者の連帯を図ることが必要であるということです。
      そのためにまず記者がすべきことは、狭い社内関係だけに拘泥されず現場に足を運び社会の人々とつながっているということを意識すること、そして,自分の書く記事に誇りを持ち,表現の自由の担い手として国民の知る権利に奉仕する職業であることを認識し直す必要があるということでした。
     他方で,現状を変えるためには読者である国民にも協力をお願いしたいということでした。美浦さんによれば、新聞社は、その力だけでは表現の自由の担い手として責任のある役割を果たせない状況に至っているので,現状を変えるために,新聞を読んで,電話一本でもはがき一枚でもよいので酷い報道には抗議を,がんばっている報道には激励の言葉を与えてほしいということでした。新聞社は,読者に好評な記事や特集を打ち切ることはできないから,新聞社内での評価基準を変えるためにも是非協力をして欲しいというのです。
  4. 最後に
     美浦さんのお話の内容からは、新聞記者として、真面目に新聞の存在意義を考え抜いてきた美浦さんの真摯な姿勢が伝わってきて、私は、その点でとても大きな刺激を受けました。特に、美浦さんは、最後に、「メディアの究極の役割は、戦争を起こさせないこと」と話されましたが、この言葉を聞いて、私たち法律家の究極の役割とは何だろうと考え込んでしまいました(まだ、答えは出ていません)。
     また、美浦さんのお話は、実際はとてもウィットに富んでいたばかりか、具体例も多くとてもわかりやすいものでした。私の稚拙な文章と、限られた紙幅では、到底ご報告しきれないのがとても残念です。
     次回も、今回と同じくらい、おもしろい企画を立てていきたいと思っておりますので、どうか、皆様も足を運んで参加していただければと思います。
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