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横浜合同法律事務所ニュース8

新春のごあいさつ

弁護士 畑山 穰

明けましておめでとうございます。

 昨年もいろいろな出来ごとがありましたが、なかでも注目すべきは、国内的には参院選での自民党の惨敗、国際的には圧倒的な軍事力中心のアメリカ覇権主義に対してますます高まる諸国の批判でありましょう。

 いずれも選挙を通じて示された日本と各国の国民の意思の反映であります。

 参議院での与野党逆転で、追い詰められた安部首相は政権放り出しの醜態を演じ、財界の金力を基盤に衆参両議院で議席の多数を占め、アメリカ追従、大企業、大金持ち優遇、国民生活犠牲の小泉流構造改革路線、右傾化路線を踏襲強行してきた自民党・公明党連立政権のやり方は、民主党がどう出るかによって、やすやすとは通らない状況となりました。

 安部さんの後を受けた福田自公内閣は、使い捨ての派遣労働者「ネット難民」の実態、生活保護も切られて餓死するひと、農業も町工場も商店も立ち行かず、貧富の格差拡大に吹き上がる国民の批判を無視し去ることができず、多少の手直しで国民の目をごまかそうとしておりますが、本質的には、強いもの優遇、社会福祉・社会保障切り捨て、弱肉強食の新自由主義政策は相変わらずであります。

 当面その最たるものとして浮上するのが、最悪の大衆課税である消費税の税率アップでありましょう。

 憲法違反のイラク特措法はとうとう期限切れで、莫大な日本国民の血税を投入してきた海上自衛隊の燃料補給活動は中止に追い込まれましたが、ブッシュ大統領からねじを巻き直された福田自公内閣は、新しい法律を作り、衆議院の三分の二の多数による再議決という無理をしてまで、新規に燃料の補給活動を再開しようとし、また、一旦は挫折しましたが、民主党に大連立政権を働きかけ、これに呼応した小沢党首は、国民の見えないところで、憲法違反の点ではテロ特措法以上にとんでもないしろものである恒久派兵法の立法というウルトラCまで持ち出して、アメリカとの摩擦を切り抜けようと、参院選に現れた国民の意思に対する裏切り行為にまで及びました。

 私たち国民としては、目をそらすと民主党もどこへとんでいってしまうか、参院選で自民党、公明党にお灸をすえたと、手放しで楽観してはいられない情勢でもあります。

 昨年十一月にはポーランド、ついでオーストラリヤの国会選挙でもアメリカのイラク侵略戦争に対する従来の協力を見直し撤兵を目指す政権の交代が行われ、アメリカの圧倒的な支配下に屈従していた南米諸国でも、アメリカの勝手気ままな世界支配の政策に反対あるいは批判的な政権が次々と生まれ、これまでのアメリカの勝手気ままを許さない情勢が強まりつつあります。

 国内外の動きをみるとき、情勢は、見通しがきかず一見混沌としているようでありますが、複雑な紆余曲折をたどりながらも、基本的な底流は、私たちが困難に打ち勝つ努力を払うことによって、日本も世界も平和、民主、基本的人権尊重の日本国憲法の理念の実現に向かいつつあると言えます。

 事務所の所員一同、このことに確信をもって、心を新たにさまざまな分野で頑張っていきたいと思います。

 この一年どうぞよろしくお願いいたします。

 

多重債務改善は生存権の保障から

弁護士 根岸 義道
  1. これまで多重債務問題における諸悪の根源は、過剰貸付、高金利、暴力的取立といういわゆるサラ金3悪にあるといわれてきましたが、金利引き下げ、いわゆるグレーゾーンの廃止、貸付金額の総量規制等を内容とする一昨年の貸金業法改正によって、このサラ金3悪は、未だ十分とは言えないものの、大きく克服されてきました。
     そして、これを受けて、金融庁は昨年3月「多重債務改善プログラム」を策定し、現在200万人にも及ぶという多重債務者の根絶をめざし、ようやく重い腰をあげました。
     この「多重債務改善プログラム」の内容は4つあり、@丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化、A「借りられなくなった人に対する顔の見えるセーフティネットの貸付の提供、B多重債務者発生予防のための金融経済教育の強化、Cヤミ金の撲滅に向けた取締りの強化があげられています。
  2. ところで、私は、多重債務者の発生は、人為的あるいは構造的に社会状況が変化し、その変化を利用して利益を得ようとしたサラ金の跳梁跋扈を許した点に原因があると思います。
     その社会状況の変化とは、第1に、消費生活が現金払いから与信に変えられていったことです。
    それまでは、実際の収入や預貯金など現実に自分が保有している限度で堅実な消費が行われていたものが、分割払いやクレジット契約の発展によって、将来の収入で現在の購買欲を満足させることが勧められ、「借金こそ美徳」という雰囲気が広められてきました。
     しかし、将来の収入によって現在の消費を行うということは、当然のことながら預貯金を行う意欲を減退させただけでなく、自分の収入能力を超えた支出を行わせることになりますので、このような状況において、ある日何らかの理由でそれまでの収入を確保できなくなれば、その日から生活に困るようになることは、よく考えれば明らかなことでした。
     社会状況の変化の第2は、核家族化によるコミュニティの解体です。
    それまでの大家族と異なり、夫婦とこども達だけの家族では、家計に支障が生じても救済の手をさしのべてくれる親族はおらず、また夫婦共働きの生活は、こどもが学齢期の時期を除けば地域での交際も狭め、地域コミュニティによる助け合いも期待できなくなりました。
     このような状況において、何らかの理由によりお金が必要になった場合、親族や隣人に助けを求めることができず、高金利であることを知りながらも借金をせざるを得なくなったのが多重債務問題であると思います。
  3. 従って、現在多重債務に陥っている人にきちんとした債務整理の道を指し示してあげることももちろん重要なのですが、上記のような社会構造の変化を踏まえて、家庭で何らかの理由でお金が必要になったときにも高利の借金をしなくてもよい社会的仕組みを構築することが必要です。
     前記「多重債務改善プログラム」は、低利の貸付を提供するセーフティネットを作り上げることを期待していますが、まずはどこからも借金しなくても通常の生活ができる社会、すなわち普通に働いてさえいれば通常の生活を送ることができ、不時のための預貯金も可能になる社会、仮に正当な理由でそのような収入が得られない人がいれば、生活保護などの手段でそのような収入を確保できる社会の実現が大切なのではないでしょうか。
     これは夢の中の話ではなく、これこそ憲法25条が定めている「健康で文化的な最低限度の生活」であり、政府はその実現に向かって努力する義務を負っているのです。
     「格差と貧困」が当然のように存在させられている現在、私たちは再度生存権とは何かを考え、その保障を声高に要求していく必要があるのではないでしょうか。
 

登録派遣日雇労働者と生存権

弁護士 高橋 宏

 事務所には、日々、様々な法律相談が寄せられます。最近は、貧困問題の深刻さを考えさせられる事案が少なくなく、そんな一例を紹介します。

 Aさんは、平成15年7月に脳内出血で倒れるまでは、住宅ローンは残っていたものの一軒家に家族4人で暮らしていた会社員でした。ところが、突然、軽い脳内出血となってしまい1ヶ月程度入院してしまったことから、人生が大きく狂ってしまったのでした。

 入院によって家族に内緒にしていたサラ金への借金が発覚し、しかも会社にまで取立の連絡が行ったことから、Aさんは、会社を退職し、離婚をすることになり、家族と、自宅を失ってしまいました。

 それでもAさんは、自己破産をして、再起を図りましたが、就職難で、思うような仕事に就くことが出来ませんでした。やむをえず、登録人数が数千人規模の派遣会社で登録派遣社員となりました。

 しかし、仕事が毎日あるわけではなく、十分な収入にはなりませんでした。1年後くらいからは、大手企業の配送の仕事を専属で出来るようになりましたが、それでも、生活は好転せず、日払いで支払われる給与も、その日のうちにほとんど無くなってしまうような状態でした。2つのアパートとウィークリーマンションを転々とし、その度に親戚や知人の世話になる状態で、次第に、力になってくれる人もいなくなり、その後は、蒲田駅や大森駅のカプセルホテルで寝泊まりするようになりました。

 けれども、カプセルホテルで眠るだけでは満足に疲れも取ることが出来ず、その状態で、朝6時半からの仕事をする毎日の繰り返しであったため、次第に、疲労が蓄積していくこととなりました。その結果、平成19年9月、派遣先企業の運転業務中、交通事故を起こし、今度は、大量の脳内出血で、3日間意識不明になった後、意識回復後は左半身麻痺で、全く動かすことが出来ない状態になってしまったのでした。

 ところが、さらに問題だったのは健康保険問題でした。Aさんは、ここ3年間は同じ派遣先で働いており、派遣会社は、Aさんを社会保険に加入させる義務があったのですが、これをせずに、国民健康保険に加入するよう言い渡していたのでした。一方、Aさんは、上記のような生活の中、国民健康保険の保険料を長期滞納し、無保険状態でした。

 さらに、生活保護申請をするにも、カプセルホテルを転々としていたため住所が無く、管轄の調整をつけるだけで1ヶ月半を要するという状態でした。

 幸い、意識不明で搬送された病院のスタッフが様々に支援をしてくれた結果、これらの問題も解決していき、ようやく先が見えてきて、労災申請をしようという段階にまで至ったというものでした。

 たまたま、搬送先の病院に恵まれたために救われたという状況は、生存権が保障された状態なのでしょうか。さらに保険料を支払えないという理由で健康保険を取り上げ、無保険者と言うことで病院にもかかれない状況に突き進もうとしているわが国のありようは、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障した憲法に反することにはならないのでしょうか。今こそ異常な流れに歯止めをかけるときだと思います。

 

弁護士フェスタ企画「『融解』する生存権」に参加して

弁護士 関守 麻紀子
  1. 2007年11月11日、横浜弁護士会が主催する弁護士フェスタの人権擁護委員会主催のシンポジウム「『融解』する生存権」に参加しました。
  2. 「雇用融解」などの著書があるジャーナリストの風間直樹さんからは、労働現場の実態が報告されました。 作業中の事故により大けがをしたが救急車すら呼ばれず、加入していたはずの共済保険も知らぬ間に廃止されていたという日雇い労働者、生産調整のための人員調整要員として、予め「退職願」を提出させられる外国人労働者、業務上のけがの治療のために休んだことを理由に解雇された労働者・・・。日々の収入を得ることで精一杯で将来の見通しを立てることができず、しかも、けがや病気をしようものなら、その日々の糧すら得られなくなる。単に、過酷、というだけでは済まされません。 人が働くということは、生きることの土台であるはずなのに、その労働がまるでモノのように扱われている。「ヒトの働き」という商品をいかに安く、いかに効率よく流通させるかという観点からしか扱われていない。生命があまりにも軽視されていると感じました。
     日本の製造業復活のシンボルとして注目される企業、過去最高の営業利益をあげた企業などが報道され、あたかも景気が回復しつつあるかのような気分にさせられていますが、これら大企業の利益は、労働者の犠牲の上にあるのです。
  3.  司法書士でホームレス支援団体「厚木パトロール」事務局長・生活保護問題対策全国会議事務局次長を努める古根村博和さんからは、生活保護受給の実態が報告されました。病気や事故で仕事ができなくなったり、定年退職後の大幅な減収で、生活費に事欠くようになったにもかかわらず、生活保護を受給できない。古根村さんは、「薬をもらいたい」という悲痛な訴えを聞いたそうです。まさに命にかかわる問題に直面している人がいるのです。
     報告の事例はいずれも、病気、交通事故、定年退職などのために収入を得られなくなったケースでした。「貧困」は、決して特殊なことではなく、ちょっとしたタイミングのずれで、誰もが陥る可能性のあることなのです。
     そうであるにもかかわらず、「働けるはず」「親族から援助を受けられるはず」などと指導されて、容易に生活保護を受給することができず、薬をのみたい、という生命に直結する切実な訴えすら、かき消されようとしています。
     憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、生活保護法1条は、憲法25条の理念に基づき「国が生活の困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と規定していますが、絵に画いた餅になっていると言っても過言ではないような状況にあると言えます。
     現状がこのような実態であるにもかかわらず、さらに今、生活保護基準が切り下げられようとしています。低所得世帯の消費支出に比べ、生活保護世帯が受け取っている生活費の額の方が高くなっていることが理由としてあげられています。国は、生活水準が低い方に足並みを揃えるべきだ、というのです。
  4.  アメリカで生活している友人が久しぶりに帰国しました。アメリカで暮らし始めた頃、富裕層と貧困層の格差、黒人に対する差別に驚いたそうですが、久しぶりに帰国して、日本がアメリカに似てきていると感じる、と憤っていました。ネットカフェ難民やニートのニュースはアメリカにも届いており、日本の雑誌を見れば「お給料が手取りで12万円くらいになってしまうので結婚の予定がたちません」というような投稿が掲載されていたりする一方で、日本の物の値段がとても高いことに驚いたそうです。日本で新しい服を買おうと考えていたけれど、高すぎてとても買えない、アメリカだったら同じ品質の物がずっと安く手に入る、一体、日本の若者や普通のサラリーマンはどうやって暮らしているの!?と驚いてもいました。
  5.  この国は、少しづつ、しかし、確実に、変化してきています。私たちの国をどのような国にしていくのか。現実をよく知り、行動を起こさなければならないと痛感した1日でした。 
 

シングルマザーの経済苦〜児童扶養手当の削減問題

弁護士 太田 啓子
  1. シングルマザーの経済苦の現状
     厚労省が行った平成18年度全国母子世帯等調査によれば母子世帯の平成17年の平均年間収入(生活保護給付、児童扶養手当、別れた配偶者からの養育費なども含む)は わずか213万円でした。一般世帯を100とした場合の母子世帯の平均年間収入はわずか37.8です。シングルマザーの 84.5%が就業しており、「働いているのに、収入が低い」のです。
     離婚した女性が貧困に陥りやすいことの大きな要因は、子育て期以降の年齢の女性の雇用状況に問題があり、一家の生計を支えるのに十分な収入を得られるような職に就くことが容易ではないからです。多くのシングルマザーは子の父親の養育費の支払に頼ることもできません。離婚母子世帯のうち59.1%が、父親から一度も養育費の支払いを受けたことがないと回答しており、しかも、養育費の支払いを受けたことがある世帯においても平均支払額はわずか42,008円に留まっています。
     以上のように、シングルマザーは、一生懸命働いていても、日々経済的困難に直面しているのです。
  2. 児童扶養手当の削減の凍結
     シングルマザーの経済苦を支える重要な公的給付の一つに児童扶養手当があり、受給者は平成19年2月時点で98万人を超え、過去最高を更新しました。
     財政難を背景とした平成14年の児童扶養手当法改悪に基づき、平成20年4月から手当額を最大で半減させることになっており、大きな議論がありました。この削減対象者について検討されていましたが、平成19年11月16日、与党プロジェクトチームは「就業意欲がみられない者」に限定するとしました。母親がハローワークで求職中であるなど「就職意欲がある」と認められれば手当は支給されるので、手当削減は事実上、凍結されることになりました。母子家庭の現状に照らせば、当然のことだと思います。
  3. 「自立支援」のまやかし
     政府が児童扶養手当の削減を打ち出したのは、「自立支援をするから手当を削減する」ということだったのですが、シングルマザーの自立支援、就労支援の効果は現状では全く出ていません。 平成19年10月22日の朝日新聞記事は、「母子家庭への児童扶養手当を減らす代わりに厚生労働省が力を入れるとしていた就業支援事業の利用が進んでいない」という調査結果を明らかにした、意義深いものでした。記事によると、朝日新聞社が都道府県などに2006年度の就労支援施策の実施状況を聞いたところ、正社員化を促す企業への助成金は予算見込みの約1割、資格取得のための給付金も半分以下しか使われていない実態が明らかになったとのことでした。このような実態の中では、児童扶養手当削減の凍結という方針は当然のことです。
    シングルマザーの経済苦は、当事者個人の就労意欲の有無の問題ではなく、雇用状況など社会の構造的問題です。自立が困難な環境の改善も不十分なまま「自立して自分で稼げ、その代わり給付は削減する」というのは当事者に対する過度な負担の強要で、それこそ「貧困」な施策としかいいようがありません。
     今後も母子世帯をめぐって不当な施策がとられないよう、注視していく必要があります。
 

〜格差社会を考える〜自由法曹団の神奈川支部例会に参加して

弁護士 近藤 ちとせ

今年の9月29日,自由法曹団の神奈川支部の例会に参加して参りましたので,今回は,この例会での状況を報告します。

<自由法曹団って何?>
 まず,自由法曹団について簡単に説明しますと,自由法曹団とは,基本的人権を守り民主主義を強め,平和と独立した民主日本の実現に寄与すること等を目的として活動する法律家の団体です。当事務所の弁護士は全員,この自由法曹団に所属する「団員」です。

 自由法曹団は,全国の弁護士で構成されていますが,その中でも神奈川にいる弁護士からなっているのが神奈川支部です。そして,私が今回参加してきたのは,この神奈川支部が行った例会(勉強会のようなもの)でした。

<例会のテーマは「格差社会を考える」>
 今回の例会のテーマは「格差社会を考える」で,そのために4人の講師をお呼びしていました。4人の講師は,生活保護の現場で活動する弁護士2人と民主団体の関係者及び労働基準監督署職員の労働組合関係者でした。それぞれのお話はとても興味深いものがありましたが,紙幅の関係で全てを紹介することはできません。

 今回は,このうち首都圏生活保護支援法律家ネットワークという団体で生活保護申請の手伝いを行っているという弁護士のお話しを中心に書きたいと思います。

 報告によれば,首都圏生活保護支援法律家ネットワークは,今年の4月に立ち上げられたばかりの法律家(弁護士,司法書士など)の団体で,生活保護を受けようと考えている人々を手助けすることを目的としています。

 そして,生活保護は,本来,@日本国籍を有すること,A申請者から生活保護申請がなされたこと,B保護を要する状態であること,C能力・資産の活用がなされていることという4つの条件を満たす場合に認められることになっています。

ところが,形式的に見ればこれらの条件を満たしているにもかかわらず,役所が生活保護の受給を拒否する事態が生じているというのです。

<役所による申請受付の拒否>
 最近,生活保護のあり方が問題となった事件として北九州市における餓死事件がありました。この事件では,一旦は@からCの全ての条件を満たすとされ,受給が認められた男性について,何一つ条件に変更が無いにもかかわらず,役所の福祉課窓口が,申請を撤回させるように働きかけたというのです。役所から生活保護申請を撤回するように言われた男性は,病により働くことも出来ず,収入もなかったというのに申請を取り下げたため,先ほどのAの条件を満たさなくなり,最終的には食べるものもなく餓死したというのです。

 この様な事態は北九州市だけではなく,全国の他の地域でも起きているとのことでした。

<要保護性についての過酷な基準>
Bの保護を要する状態であることという条件(要保護性)に関しては,三郷市で起きた役所による給付拒否とそれに関連して裁判となった三郷市訴訟について報告がありました。この三郷市でのケースは,子ども3人と両親の5人家族で,夫は白血病で入院しなければならず,妻は夫の看病と子育てに疲れ鬱病になり,成人した子の一人は引きこもりで,もう一人は働いているものの収入が10万円程度という状態で,生活保護の申請をしたというものでした。三郷市の福祉事務所は,この家族に対して平成17年1月から平成18年6月までの間,生活保護の給付を拒否し続けました。その理由は,その度に変わり,当初は母が働くべきだというものでしたが,その後は,借金があるから生活保護は受給できない,オーバーローンの自動車(自動車の価値よりも残ローンの額の方が大きいもの)を持っているからダメ,子どもに10万円の収入があるからダメ等だったそうです。拒否し続けられた1年半の間,家族は,自殺を考えるまで追いつめられましたが,父の病院関係者からの協力もあって自殺は思いとどまり,埼玉の弁護士に相談したというのです。すると,役所の態度は急変し,一旦は生活保護が下りたそうです。

 ところが,その後も福祉事務所は,生活保護では住居費用は出せないので三郷市から出て行くようにと指導したばかりか,三郷市を出て行く前に,生活保護の受給を辞退するという一筆を書かせたというのです。そのため,家族は,三郷市から出た後にも生活保護を受けることが出来ない状態となりました。

 三郷市福祉事務所によるこの様な嫌がらせとしか言いようのない行為に対し,国家賠償請求を求めて提訴したのが三郷市訴訟ということでした。

<私たちに出来ること>
 北九州市の餓死事件や,三郷市訴訟の報告を受けて,私は,日本という国が本当に変質してしまったのだと感じました。生活保護法という法律は,昭和25年に施行されて以来,基準の点では大きな改正はないのですが,この法律を運用する行政の対応によって事実上変質されてしまっているのです。

 弁護士の報告によれば,三郷市のケースのように弁護士が福祉事務所へ同行することで福祉事務所が動くこともあるので弁護士による支援には意味がある,ただ,支援をするのであれば同行だけでなく受給後本人の生活が安定するところまで見守るようにしなければ,三郷市のような事態は防げないということでした。

 また,今年の4月からは,母子家庭に対する加算が廃止され,老齢加算も既に廃止されました。この様な給付額の減額については,国民の生存権侵害となりうるので,弁護士は今後生存権侵害訴訟にも参加して欲しいという呼びかけがありました。

 格差の中で貧困にあえぐ人々の問題,それを見放す生活保護の現状,この様な状態を少しでもよくするために私たちに何が出来るか等,色々考えさせられた例会でした。

 

よもやまばなし “東京裁判”素描  

弁護士 川又 昭

 「戦後61年が過ぎた。東京裁判も、いまや直接知る人は少ない」これは2006年11月出版された朝日選書の一冊「戦争責任と追悼」の中の一節である。

 私は唯一だけであるが、東京裁判を傍聴した。若い人たちにとっては遠い過去のこと、東京裁判の存在をどこまで知っているか、甚だ心許ない気持に駆られるにつけ、法廷を傍聴したというだけであるが、その裁判を直接知る一人として、極々簡単に東京裁判を素描してみよう。

 1947年秋ころのことである。東京、市ヶ谷旧陸軍士官学校大講堂に設けれられた法廷の傍聴席で学友と共に待機している私たちの前に、東条英機をはじめとするA級戦犯が一人ずつ入廷してくるのを目撃したとき、私の受けた名状しがたい感慨と、それにないまざって、かつて兵役に在ったが故に、避け難く強いられた緊張感とは、未だに忘れ難いものとなっている。

 東京裁判、正式には極東国際軍事裁判の法的根拠とされているのは、日本が過ぐる大戦の降伏条件として受け容れたポツダム宣言第六項である。「日本国国民を欺瞞し、世界征服の挙に出ずるの過誤を犯さしめたる者の権力および勢力は、永久に除去せられざるべからず」とそこに謳っている。

 連合国軍最高司令官マッカーサーは、1946年1月これに基づき極東国際軍事裁判所条例を制定した。この条例は平和に対する罪(侵略戦争の計画、準備、遂行等の罪)をA、通例の戦争犯罪(捕虜の虐待など戦争法規や戦争慣例に違反する罪)をB、人道に対する罪(一般民衆に対する非人道的行為等の罪)をCとした。“A級戦犯”はAの罪のほか、B・Cの罪の内容をも含んだ主要戦争犯罪人を指す通称として用いられた。ほかにB・Cの罪によって裁かれた人々がいる。いわゆるB・C級戦犯である。

 東京裁判は米・英・仏・ソ・中華民国など11カ国が28名をA級戦犯として1946年5月3日開廷し、48年4月検察側の最終論告、弁護側の最終弁論で結審、48年11月12日、東条ら7名の絞首刑を含む25名全員に対する有罪の判決を言い渡した(28名中2名は裁判中病死、1名は精神障害にあり免訴)。

 昭和天皇は大元帥として最高の戦争責任者であったが、東京裁判でその責任を追及されることはなかった。

 東京裁判の結審した48年4月当時、国際法学者横田喜三郎は「最高の責任者がその責任をとろうとせず、国民もまた責任をとらせようとせず、たがいに曖昧のうちに葬り去るならば、どうして真の民主国家が建設されようか」と述べている。

 私たちの前には、今なお戦争の残した課題が横たわっていると言っても過言ではないであろう。

 

上郷、瀬上沢の緑を残そう!

弁護士 岩橋 宣隆
  1. 上郷、瀬上沢開発
     JR根岸線の港南台駅から、徒歩で焼く15分の所に上郷高校があります。上郷高校のまわりは市街化調整区域で、豊かな自然が残っています。この地域を、東急建設が中心になって、21,3ヘクタールも開発しようとしています。
     そこに、港南台高島屋と港南台バーズの床面積とほぼ同じ床面積になる二つのショッピングセンターと合計650戸のマンションや住宅、そして収容人数300人の老人ホームが建設される予定です。
     対象区域22,5ヘクタールのうち12,2ヘクタールは緑地として横浜市に寄付するそうです。
  2. 豊かな自然と史跡
     開発予定地は、横浜市の七大緑地の円海山地域の一つである「瀬上市民の森」に接しています、開発予定は、全部、市街化調整区域であるため、今まで開発されずに自然が残されてきました。瀬上沢には、横浜市内でも最大規模のゲンジボタルがいます。また、円海山地域は、少なくなってきたオオタカやカントウアオイなど動植物の宝庫です。最近、円海山地域で長年昆虫採集をしてきた久保浩一先生(金沢総合高校)が新種のハエを発見しています。私は、昨年九月に、「瀬上市民の森」でタイワンリスの群に出会い、初めてタイワンリスの「カケェッ」という鳴き声を聞きました。瀬上沢は、近くに「瀬上池」もあり、自然豊で、市民の憩いの場となっています。
     さらに開発予定地には、160万年前の貝の化石の露頭、縄文時代後期の竪穴住居跡や土器、奈良時代の大規模な製鉄の遺跡、江戸時代後期の用水の実態を物語る横堰など沢山の貴重な歴史的文化財があります。
  3. 都市計画提案制度
     東急建設は、今回の開発予定地を、平成四年に開発しようとしました。しかし市街化調整区域であるという理由で、神奈川県から開発許可が得られずに事業を断念しました。
     ところで、平成14年に都市計画が改正されて「都市計画提案制度」が創設されました。これは、住民等の自主的なまちづくりの推進を図るもので、土地所有者が都市計画の提案をすることができる制度です。
     東急建設はこの制度を使って、極めて安く買った市街化調整区域を開発しようとしているのです。都市計画提案制度の悪用ですし、市街化調整区域を決めた意味がなくなります。
    反対運動
     「上郷開発から緑を守る署名の会」(代表 高村鈴子)は、開発計画の中止と緑地の全面保全を求めて署名を集めています。昨年12月に合計八万八千余の署名を横浜市長と市議会に提出しました。まだまだ緑を守る運動は続きます。
     開発に対する対案は、開発予定地を自然と歴史的文化遺産をそのまま活用する「エコ・ミュージアム」にすることです。
 

新人弁護士ご挨拶

弁護士 田井 勝

 昨年9月に入所しました、田井勝です。四国香川の高松で生まれ、大学生活は京都で過ごし、司法修習生としてはじめてこの横浜で暮らしました。この街が好きになり、横浜の地で働きたいと思い、事務所に入所しました。

 司法試験を勉強しつつ、一度、大学院にも通いました。院での生活にも慣れ、一度は研究者を目指そうか、考えたこともありました。

 そんな時、試験勉強中の私を頼って、法律の相談をしてくる友人、親族が何人かいました。私が相談に乗って、拙いながら返答をすると、その人たちから「ありがとう」と言われました。私自身、その「ありがとう」という言葉で自分自身が非常にうれしくなり、自分でも人の役に立てることができるんだ、これからもそのような人たちに少しでも役に立てれば…その思いを抱くようになってから、再び弁護士を目指すようになり、今に至る次第です。

 入所から4か月が経ちました。なかなか思うようにうまく出来ず、毎日悩んでばかりの連続です。一日でも早く、一人前の弁護士になれるよう、一生懸命頑張りたいと思っています。よろしくお願いします。

 

変わらない国の体質

弁護士 田渕 大輔

 11月3日、神奈川県下で建設業に従事していてアスベストによる健康被害を受けた人々を当事者として、国及びアスベスト製造業者に対する損害賠償を求める患者会の結成総会が開かれました。神奈川における患者会の結成は、東京、千葉、埼玉で健康被害を受けた人々を当事者として、東京で結成された原告団に続くものであり、来春を目途に、東京地裁及び横浜地裁で、一斉提訴を行う予定です。
 このアスベスト問題がマスコミを賑わすようになったのは、平成17年7月、兵庫県尼崎市にあったクボタの工場周辺の住民に、アスベストの吸引を原因とする中皮腫等の病気を発症している住民が多数いることが判明したことがきっかけでした。その後、国は、石綿(アスベスト)健康被害救済法を制定する等して、一応の救済策を講じていますが、救済の範囲についても補償の内容についても不十分なものにとどまっています。
 しかし、アスベストが危険な物質であるということは、1972年にWHO・ILOが発ガン性を指摘していましたし、諸外国では、1983年にアイルランドがアスベストを全面禁止したのをはじめ、1990年には、ヨーロッパ各国が原則禁止としました。また、わが国においても、1987年の時点で、庁舎・官舎についてはアスベストを使用しないという方針が立てられていました。それにもかかわらず、わが国では、アスベストの規制を放置しただけでなく、使用を推進することさえ行われており、最終的にアスベストの製造・使用等が禁止されたのは2004年、国がアスベストの全面禁止に踏み切ったのは2006年になってからでした。

 アスベストについて危険性が指摘され、諸外国において規制が強化されるようになってからも、わが国の規制が遅れたのは、ひとえに、アスベストが高性能かつ安価な建材だったからでした。
 国が経済効率を優先し、国民の命や身体の安全よりも大企業の利益を保護し、その結果として、罪のない多くの人たちが苦しみを強いられる。これは、20世紀、各種の公害事件において繰り返されてきた構図でした。各種公害事件における国の責任は、各地の裁判所で断罪され、国は被害者に対する補償を行い、同種事件の再発防止と根絶を誓ってきました。しかし、今また、同じ構図による被害が生じているのです。
 アスベストは、吸引しても、中皮腫や肺ガンという形で発症するまでに何十年という時間がかかります。そのため、将来的に、どのくらいの人がアスベストによる健康被害を受けることになるのか、はっきりした数字は分かりません。ただ、ある試算によれば、今後40年間にアスベストを原因とする中皮腫を発症する人は、10万人以上にのぼるとも言われています。
 それなのに、国が制定した石綿(アスベスト)健康被害救済法は、救済の対象となる範囲が極めて限定的な上、補償の内容も不十分なものであって、救済法の名に実体が伴っていないのが実状です。これでは、今後、大きく増加が予想されるアスベストの健康被害者に対して、十分な救済の手が差し伸べられないことになってしまいます。
 アスベストによる健康被害は、アスベストの吸引から発症まで時間がかかるため、被害者には高齢の方も多く、肺の機能低下のために働くことのできない状況に追い込まれている人も少なくありません。また、アスベストに起因する肺の疾患を発症しても、アスベストについて詳しくない医者にかかれば、タバコや別の原因による肺の疾患と扱われ、アスベストによる健康被害であることを認識しないまま、受けられるはずの救済を受けられない人も少なくないのです。
 アスベストの健康被害に苦しむ人たちに、そのような苦しみを甘受しなくてはならない理由は何も無く、むしろ、体を張って、アスベストの粉塵が舞うような現場で一生懸命働いてきたからこそ、健康被害に苦しんでいるのです。  国が、過去の公害事件における、悲痛な被害者の叫びに真摯に耳を傾けていれば、このような悲惨な状況が起きる前に、アスベストに対する規制を強化する等の手段を講じることができたはずです。しかし、残念ながら、ここでもまた、同じ過ちが繰り返されてしまっています。国による同じ過ちが繰り返される度に、ともすれば無力感を覚えることもありますが、それでも国に対して被害の実状と責任を突きつけることは、国に同じ過ちを繰り返させないために、必要なことではないでしょうか。
 そして、何より、何の落ち度もないまま、不条理な苦痛を強いられている多くの被害者たちに、正当な救済の手が差し伸べられるようにすることは、一人一人を大切にする社会を実現していくために、必要なことでしょう。  国を相手にする集団訴訟というのは、時間もかかりますし、何より容易に勝てるものではありません。ただ、原告団と弁護団とそれを支える人たちの力が合わされば、困難な状況も打開できるということは、過去の多くの事件が教えてくれています。
 今回、神奈川でも弁護団が結成され、既に40名を超える弁護士が参加を表明しています。弁護団も力を尽くしてこの訴訟を闘っていく覚悟でいますので、是非、多くの皆さんの支援を宜しくお願いします。

 

オプション取引???

弁護士 浅川 壽一
  1. 最近の相談より
     最近、金融商品等を用いた消費者被害相談を多く受けます。「ファンドへの出資」「未公開株」「貴金属のスポット取引」など。昔からある国内商品先物取引の被害も、報告されています。こうした被害者の多くは、お年寄りでした。今回は、海外商品オプション取引の被害に遭われた事例を紹介させていただきます。
  2. 近づいてくる営業員
     消費者被害の加害者ともいうべき業者の営業員は、同窓会や勤務先の名簿を手に入れ、言葉巧みに近づいてきます。「○○さんは、秋田のご出身ですか。私も秋田の○○出身です。同郷のよしみで、一度、資産の運用について、お話をさせてください。」。「同郷のよしみ」とい言葉によって、つい警戒心を解いてしまうのでしょう。営業員からの電話に応え、面会の約束をしてしまったら、もう後に引くことは難しいです。面会したら最後、営業員のペースに乗せられ、いつのまにか営業員を信頼し、契約を交わしてしまうのです。
     ある業種の営業員が、被害者との契約に成功したとしましょう。その営業員は「『カモ』を見つけた」として、つきあいのある他の営業員に情報を流します。やがて、いろいろな業者の営業員が接触してきます。「○○さんは、投資経験豊富と伺いました。ぜひ、オプション取引を紹介させてください。リスクは限定されますが、仕組みが難しいので、一般の方々にはお勧めできないのです。でも、○○さんなら、きっとご理解いただけると思います。」「商品取引の世界では、グローバル化がすすんでいます。海外で投資しましょう。国内の取引とは桁違いの市場に参加できるんですよ。為替差益もねらえます。」被害者のお年寄りは、本当は難しくて理解できないのに、営業員に親近感を抱き、おだてられ、理解したつもりになって、危険な海外商品オプション取引の口座開設契約を交わし、証拠金を預け、取引を開始してしまいます。
  3. オプション取引の危険性
     オプション取引は、一見すると損失が限定されているように思えます(買い取引の場合)。しかし、行使期限を迎えて決済ができない場合、その取引は紙くずとなってしまいます。権利行使期限がある点では、一昔前にはやった「ワラント」に似ています。オプション取引が「ワラント」よりも始末がわるいのは、証拠金を使った取引であること。株式の信用取引や先物と同じように証拠金を担保に入れて、実際には証拠金の何倍もの取引を行える。つまり「レバレッジ」が効いているのです。従って、理屈では損失が限定されているとはいえ、ハイリスク商品であることに変わりはないのです。「ワラント」や株式や信用取引を行うより、相当の覚悟をもって行わなくてはならないと言えるでしょう。
     また、オプション取引の価格変動の仕組みは、非常に複雑です。指標(例えば、商品であれば原油などの価格、金融であれば日経平均や債券の価格)の変動だけではなく、行使価格、行使期限までの期間、金利、指標の変動率(ボラティリティ)、需給関係など様々な要素が絡み合って、オプション取引の値段が決まるのです。1指標(例えば、コーンの価格)が激しく上昇しているにもかかわらず、自分が投資したオプションは、全く値動きしていない。値動きしないばかりか、目減りしていく。ある日を迎えたら紙くずになって証拠金が返還されなかった。・・・よく知らずにオプションに投資してしまうと、こんな事態が発生してしまいます。 
     私は、弁護士になる前、証券会社で先物取引やオプション取引のディーリングをしておりました。私はディーラーになってすぐ、オプション取引の勉強をしましたが、安心してディーリングができる程度になるまで、数週間を要しました。では、お年寄りにオプション取引を勧める営業員は、いったいどのくらいの時間を説明に費やしているでしょうか。被害者から聴取したところ、多くて2時間程度でした。こんな短い時間では、オプション取引の危険性について理解できるほどの説明を尽くしたなどと、とうてい言うことはできません。
     さらに、海外商品オプション取引の値動きは、一般の新聞などで知ることはできません。インターネットを使えば日々の値動きを知ることができますが、私が相談を受けた被害者はご高齢で、インターネットを使うことができませんでした。この場合、値動きの投資判断に不可欠な情報は完全に業者側に偏在しており、被害者は営業員の説明を鵜呑みにせざるをえないのです。被害者が客観的な情報をもとに投資判断をすることは、不可能といえます。
  4. 被害の撲滅へ向けて
     最近、法律等が改正・制定されたことで、消費者被害事件に対する規制の網がかぶせられつつあります。しかし、いくら規制しても消費者被害の世界はイタチごっこです。業者は、規制の甘いところを見つけて甘い汁を吸っているのです。そして、泣くのは善良な市民なのです。
     この「横浜合同法律事務所ニュース」を熱心に読んでくださる方々は、こうした被害に遭われることはないと思います。しかし、ご家族やご友人が被害に遭わないよう、消費者被害の手口や商品の危険性についてよく知っていただきたいのです。ぜひ、身近な方々に広めてください。よろしくお願い致します。
 

違法な刑事捜査に対する人権救済申立 
〜“朝鮮学校”だから仕方ない?〜

弁護士 宋 惠燕
  1. 人権救済申立
     2007年8月16日、7都道府県の弁護士有志40名が大阪府警察本部等による在日コリアン児童らに対する人権侵害を是正するために、日本弁護士連合会人権救済申立をしました。
  2. 朝鮮学校に通う在日コリアンらに対する違法な捜査
     事の発端は、ある在日コリアンが電磁的公正証書原本不実記録罪の被疑事実(いわゆる「車庫とばし」)によって、2007年1月28日に大阪府警によって逮捕されたことでした。具体的には、NOx・PM法の排ガス基準を満たさない業務用のトラックの保管場所を大津市の滋賀朝鮮初級学校を運営する滋賀朝鮮学園の敷地内の駐車場等と偽って登録させたというものでした。
     大阪府警は、軽微な犯罪であるにもかかわらず、日本の小学校に相当する滋賀朝鮮初級学校に、百数十名の警察官と機動隊員を動員して、学校を取り囲み、校長室や教員室等に土足で押し入り、4時間にわたって捜索をし、「車庫とばし」とは何の関係もない、児童や保護者の住所・家族構成・個人の携帯電話の番号等の個人情報が記載された名簿を押収したのです。
    さらに、「車庫とばし」の事案では、通常、交通部が事件を担当しますが、本件については、公安警察活動を担当する外事課が担当するなど異常な事態でした。
  3. 在日コリアンに対する人権侵害
     実は、2005年以降、朝鮮総連との間で一定の関係を有する在日コリアンに対して、軽微な被疑事実を理由とする行き過ぎた捜査が繰り返されています。特に、朝鮮民主主義人民共和国による2006年10月の核実験以後、特に急激に増加しています。
     しかも、漆間巌警察庁長官は、2007年1月18日、記者会見において、「北朝鮮に日本と交渉する気にさせるのが警察庁の仕事。そのためには北朝鮮の資金源について事件化し、実態を明らかにするのが有効だ」「北朝鮮が困る事件の摘発が拉致問題を解決に近づける。そのような捜査に全力を挙げる」と政治的意図に基づく捜査を行う方針を公言しました。
     このような政治目的のための捜査が違法であることは明らかです。
     皆さんは、このような違法な捜査は、「北朝鮮」の拉致問題、核問題が解決していないから仕方ないと感じますか?大部分のマスコミや世論は、このような意見に傾いているようです。しかし、警察による違法な捜査によって、侵害されるのは「北朝鮮」の国益ではなく、現に日本で生活を営んでいる在日コリアンの人権なのです。特に、朝鮮学校に通う児童らは、主義主張に関係なく自国の文化・言語を学ぶために在籍しており、韓国籍・朝鮮籍に限らず日本国籍の子もいます。
     警察による違法な捜査によって、人権を侵害されているのは、私たちと同じように日本に生活基盤をもって暮らしている人であるということを理解してもらいたいと思います。
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