News & Topics

横浜合同法律事務所ニュース12

新春のごあいさつ

弁護士 畑山 穰

 明けましておめでとうございます。

 昨年、アメリカでは「チェンジ」を旗印にした民主党オバマ大統領に政権が交替し、わが国でも自公連立政権が退場して、民主・社民・国民新党の三党連立による鳩山政権が誕生しました。

 これは、強きを助け弱きをくじく国民犠牲の新自由主義路線に基づく小泉構造改革の化けの皮がはがれ落ち、アメリカ言いなり、大企業・大資産家中心の自民党・公明党政治に対して、国民がノーを突きつけた結果であり、国民のための政治実現への前進であります。

 事実、生活保護世帯への母子加算の復活、派遣労働法改正への動き、無軌道な天下り官僚政治の実態暴露、核密約公開に向けての調査など、政府の施策には一定の改善方向がみられました。

 しかしながら、アメリカや財界の圧力を受けて、鳩山政権は、早くも、後期高齢者医療制度の廃止や普天間基地の移設問題では後退あるいは動揺を示しはじめてもおります。

 鳩山首相のうしろに控えて民主党を切り回している小沢一郎幹事長なる者は、ロッキード事件被告人の金権政治家田中角栄もと首相に私淑して政治家修行を重ね、強力を誇った自民党田中派七奉行のひとりとして四十歳そこそこの若さで自民党の幹事長に上りつめ、当時の大自民党と国政を牛耳ってきた人物でありますが、自民党による一党支配体制では保守党によるわが国の政治支配がいずれ行き詰まることを予見して自民党を飛び出し、政党を作ってはこわしこわしては作りして、わが国政界合従連衡政治の舞台をまわしてきましたが、小選挙区制法案の廃案が必至の政治状況下で、土井衆議院議長を抱き込み、細川首相、河野自民党総裁との三者会談をお膳立てして形勢をひっくり返し、国民の考えがどっちへころぼうと、わが国政治の財界による支配の大枠が貫徹するよう保守二大政党制を実現すべく、小選挙区制法案を強引に押しとおしてしまった権謀術数家で、その実像は民主主義にほど遠い人物であります。

 この策謀家が、仮に、小泉構造改革の不評をチャンスとばかり、当面国民の要求にこたえるような目くらましの政策を投げかけ政権を奪取したとすれば、片や友愛を標榜する鳩山首相もその唱えるところ、その名とはうらはらに強烈な改憲論者であることを忘れることはできません。

 今年の五月には、改憲手続法が施行されます。不況下、最悪の大衆課税である消費税増税もよろいの下にちらほらと見え隠れしております。

 とまれ今回の政権交替を実現したのは私たち国民の力であり、政権党に迫って国民のためになる政策を実行させつゝあるのも私たち国民の力、そして今後、反動的な巻き返しを許さずに民主主義を前へ進めていくのも私たち国民の力であります。

 年のはじめにあたり、貧困と暴力、不正義を根絶し、ひとびとみなが仲良くゆたかでたのしい生活をしてゆける平和な世の中を目指して、自覚を新たに日々努力を忘れない一年にしていきたいと思います。


コレハ別稿ノ一言

 この一年、健康に気をつけながら仕事を着実にこなし、多少経済の勉強をしたいと思います。

畑山 穰

 

レジデンシャルONE被害対策弁護団に加わって

弁護士 浅川 壽一
  1. レジデンシャルONEとは
     レジデンシャルONEとは、大阪に本社を置く高木証券が販売した不動産ファンドの名称です。不動産ファンドとは、一般には、投資家から資金を集めて不動産に投資し、不動産賃料収入を原資として配当に充てる仕組みのことです。一昔前にテレビのCMで言われていた「不動産の証券化」の一手段であるとともに、近年上場されたJREITなどと同じ不動産投資商品の一つです。
  2. レジデンシャルONEの仕組み
     レジデンシャルONEは、投資家から集めた資金を元手に会社を設立し、その会社が銀行からの借入を行い、投資家資金と銀行借入を合計した資金で不動産を購入するという仕組みでした。ところが、この仕組みには、大きな問題が隠されていました。投資家の資金よりも銀行借入が優先的に返済される約束になっており、その結果、危険なレバレッジ構造を備えていたのです。つまり、お金を借りて博打を打つのと同じで、儲かれば元手の何倍かを得られるが、損を出せば元手の何倍もの損が出るのと同じ構造になっていたのです。
     また、他の不動産ファンドに備えられていた投資家を保護するための安全装置が、レジデンシャルONEには備えられていませんでした。他にも期限前の解約ができない等、商品設計の不備があったことから、レジデンシャルONEは非常にハイリスクな商品構造を有していました。
  3. 高木証券の説明と被害者の属性
    レジデンシャルONEを販売した高木証券の営業員は、こうした商品構造の危険性を十分に説明することなく、「安全な商品だ」などとして販売を行っていました。不動産に投資するのだから、大震災でもない限り、ゼロにはならないだろう・・・営業員の説明を聞いて、多くの投資家はこのように誤信してしまいました。高木証券がレジデンシャルONEを販売した多くの顧客は、老後の資金を安全に運用したいという希望を持つ高齢者ばかりで、退職金の大部分を購入に充てた方もいらっしゃいました。
  4. 深刻な被害の発生と弁護団の結成
     昨年ころから、このレジデンシャルONEが満期を迎え、大変なことが起こりました。一口百万円で預けた資金が、なんと数万円になっていたのです。投資した不動産の値下がりの何倍もの率で、投資家の資金が被害を受けてしまったのです。
     やがて、投資被害に取り組む弁護士たちに相談が寄せられるようになり、全国証券問題研究会に参加する弁護士たちが立ち上がりました。小職も、その一人です(この被害は、二〇〇九年九月、テレビ東京系「ガイアの夜明け」でも取り上げられました。)。
  5. 商品構造の複雑さ
     不動産ファンドは非常に複雑な構造を有していました。匿名組合契約や信託契約などの契約や多くの法人群が関与しており、それら構造のどこに問題があったのか、専門知識を駆使して解き明かす作業が必要です。商品の構造を十分に説明した上で、その商品に適合するリスクの説明がなされなかったことを認めてもらわないと、投資被害で裁判に勝つことはできません。今後も多々の困難が予想されますが、弁護団一同、力を合わせて訴訟に取り組んで参ります。皆様の応援を賜りたく、お願い申し上げます。
 

アスベスト訴訟〜IHIの二重の罪〜

弁護士 田渕 大輔

 事務所の多くの弁護士が弁護団に参加している建設アスベスト訴訟については、既に過去の事務所ニュースでも触れているところですが、今回、新たに、IHI(旧石川島播磨重工)を相手に、アスベスト粉じんにばく露して肺ガンを発症して亡くなった方のご遺族が損害賠償請求訴訟を提起することになりました。

 アスベストの危険性については、既に周知の事実となっていますが、国及び企業はアスベストの危険性を知りながら、経済的利益を優先して、アスベストの危険性を過小に宣伝し、危険なアスベストを多くの人々に使わせ続けてきました。その犯罪的行為の結果、多くの人々が重篤な疾患に苦しみ、命まで奪われていることは、アスベストの被害に共通しているところです。

 それだけでなく、今回の事件で、アスベストによって命を奪われたのは、IHIが長年にわたり、その労働組合活動を嫌忌して差別を行ってきた労働者、それも、差別是正争議の横浜の申告者の代表として奮闘してきた労働者でした。IHIは、労働者に対する攻撃として、昇給・昇級で差別するだけでなく、職場から隔離するため、彼に、日本全国の現場を転々とさせ続け、その結果、彼は他の労働者以上に、大量の粉じんにばく露させ続けられたのでした。

 その意味で、IHIの行為は、アスベストの危険性を知りながらアスベストを使い続けたという点だけでなく、差別の一環として労働者をアスベスト粉じんが舞う過酷な現場に行かせ続けたという点で、二重に犯罪的であり、許し難いものであります。

 また、私個人、彼がアスベストばく露によりアスベスト肺、さらには肺ガンを発症していた時点から、労災の件や、IHIに対する補償請求の件で相談を受けており、亡くなる数日前まで、メールや電話でやり取りをしていました。そのため、彼が亡くなったという連絡を受けた時、俄には信じられず、アスベスト関連疾患は、発病後、病状が悪化する速度が速いという事実を、最も痛ましい形で思い知らされた次第です。

 彼は、現役の労働者として働いていた頃から、先頭に立って組合運動を引っ張ってきた闘士でしたが、他方で、良き家庭人でもありました。亡くなる少し前、近況についてお話を伺った際、最近の楽しみは幼稚園に通うようになった孫の送り迎えだと、頬を緩ませながら話しておられたことを覚えています。

 そのため、私の個人的な感情になりますが、対IHIの訴訟は、彼の敵討ちだと思っています。IHIの責任を認めさせ、彼の墓前に良い報告ができるよう、全力を尽くしたいと考えております。

 

刑事裁判の被害者参加制度

弁護士 小口 千恵子

 これまで犯罪の被害者は、捜査の結果明らかになった事実や刑事手続に関して真実を知る機会が充分に保障されてこなかったことから、2008年12月以降、被害者が刑事裁判に参加できる制度が採用されるに至りました。

 この制度では、被害者本人または被害者の遺族は「被害者参加人」として法廷で検察官と並んで座り、情状にからむ証人尋問のほか、事実関係についても被告人に対して直接質問が認められ、検察官の論告・求刑が終わった後で自ら求刑の意見を述べることも可能となりました。

 しかしながらこの制度は、刑事裁判の本質を揺るがす大きな問題があることを忘れてはなりません。

 刑事裁判の中心は、「その被告人が本当に犯人なのか否か」「適切な刑罰は何か」を、感情に基づいて判断するのではなく、冷静にルールに基づき判断することです。敵討ちやリンチの時代とは異なり、近代国家においては、国家が訴追を行う制度が採られ、理性的かつ公正な刑罰を課すことができるようになったのです。

 被害者参加の法廷を傍聴した人の中には、「被害者遺族の怒りが公判に充満し、まさに『報復』だと感じられた。」という感想を持つ人も少なくありません。

 これでは刑事裁判における真実発見の機能が働かなくなってしまうのではないでしょうか。

 わずか平均3日間程度で判決言渡まで行われる裁判員裁判において、例えば、現在再審の裁判が行われている菅谷さんの足利事件のDNA鑑定のように、有罪の根拠として「科学的鑑定」が証拠として提出された場合、どうでしょうか。被害者遺族が怒りや苦しみを訴え続け、被害者に対する同情や被告人に対する怒りが支配的になっている法廷において、裁判官は冷静に判断することはますます難しくなり、また、弁護人としても、被害者や遺族の感情を否定するがごとき訴訟活動は非常にやりづらいものになって、まともな弁護活動をすることもできません。

 あるいは、交通事故で人を死亡させてしまった場合、被告人の過失の程度を決めるために、被害者の落ち度を指摘すること、道路の構造上の問題を指摘すること、被告人の置かれた立場(例えば雇用主に過重労働を強いられた結果の過失など)を述べることさえも躊躇せざるを得なくなるかもしれません。

 被害者の救済等は他の制度によることが可能であり、この制度を維持し続けることは余りにデメリットが多すぎるのです。

 今、厳罰化を求める声も大きくなっていますが、犯罪の脅威を減らして国民を守るために、報復による満足や厳罰化ではなく、格差社会の是正など、人間が人間らしく生きることができる社会を作ることこそ求められているのだと思います。

 
 

日本年金機構問題について

弁護士 田井 勝

第1 これまでの経緯

  1. 2007年2月、納付者を確定できない国民年金や厚生年金の納付記録が約5000万件あることが判明し、国民に大きな衝撃を与えました。そして、同年3月、社会保険庁改革関連法案(2010年に非公務員型の公法人日本年金機構を設立し、公的年金に係る財政責任・管理責任は引き続き国が担う)が、国会で可決されました。
     また、2008年7月、政府は懲戒処分を受けた者を年金機構に採用しない方針を閣議決定し、2009年4月、社会保険庁は設立委員会に対し懲戒処分を受けた者を排除した名簿を提出しました。
  2. 2009年8月31日、年金記録の統合作業が遅々として進まないこと、年金記録問題に対する国の責任があいまいになることを防ぐため、マニュフェストとして「『消えた年金』『消された年金』問題への対応を『国家プロジェクト』と位置づけ、2年間、集中的に取り組む。」「社会保険庁は国税庁と統合して『歳入庁』とし、税と保険料を一体的に徴収する。」等の公約を掲げた民主党が、政権を握りました。これにより、日本年金機構の発足凍結が期待されました。
     ところが、10月8日、民主党の長妻昭厚生労働大臣は2010年1月に予定どおり「日本年金機構」を発足させる旨発言しました。長妻大臣は「既に内定者がいる」等をその理由としたが、現実には「(「ヤミ専従などで問題となった)問題職員を残すのか」というマスメディアの攻撃と「決めたことは変えられない」という官僚の抵抗に遭い、挫折したものと見ざるを得ません。

第2 年金記録統合作業の現状

  1. 宙に浮いた年金記録の確認作業は、これまでにある程度進んできていますが、残っている記録を処理するには多くの困難がつきまといます。当初の5000万件のうち、残りの約2400万件については、まだ確認できていません。さらに、約5000万件以外の記録で、コンピューターに入力されておらず、マイクロフィルムの形で管理されている記録1430万件についても、未だ処理はできていません。
  2. 年金記録の多くは、名前と生年月日、就職先会社名程度の情報が入力されているだけであり、また、名前すら入力できてないものもあったため、職員らは、電子記録と台帳に付き合わせて、分かるものについては名前や生年月日などを入力する作業から始めます。そうして、名前や生年月日について照合できた記録については、住民票などをもとに年金特別便を発送して、回答してきた人については、回答書の情報や、窓口での聞き取りなどを経て受給者に関する情報を確認します。
     作業は熟練と根気を要するものです。名前や生年月日などの情報が台帳上も誤って記載された記録もあり、その様な場合には、記録上記載されている職場の近くで、類似した名前の人物を探して電話をかけたりして住所を確認する方法をとることもあるものの、その様な確認方法には当然限界があります。
     また、例えば、既に死亡しており連絡をとりようがない人については、年金特別便の発送をすることすらできていません。

第3 民主党案の誤り

  1. このように、5000万件の「浮いた年金」の確認・統合作業が進まないなか、民主党は、先の公約を掲げ、政権を握りました。民主党は、当初の5000万件の記録の確認作業とは別に、8億5000万件の原簿の紙台帳記録を現在コンピューターに入力されたデータを付き合わせる作業が必要です。民主党は、これらの作業に6〜7万人を投入し、2000億円をかけ2年間で終わらせるとしています。
     しかし、その様なことは到底無理であるだけでなく、無駄な作業というべきです。
     5000万件のデータ照合ですら、多くの熟練した職員が、深夜までの残業を重ねても現時点で約2000万件までしか判明していません。その様な確認作業は、当然、多くの時間を要するだけでなく、熟練を要するものであり、経験のない職員では8億5000万件ものデータを2年間で照合できません。
  2. 現在直ちに行うべきは、残っている宙に浮いた2400万件の記録の照合・統合作業であり、その上で、8億5000万件全部のデータ照合を正確に行うべきです。
     今後の方針を十分に検討し、このような方針を議論するためには、来年3月に迫った年金機構への移行をいったん凍結し、社会保険庁は年金問題解決の道筋がみえるまで、解体されてはならないのです。このような過程を経ずして、民間に丸投げすることは国の責任を曖昧にするものであるばかりでなく、現場の混乱を招くものであり、憲法が定める国の社会保障に関する責務をないがしろにするものです。

以上

 

民法(債権法)改正について

弁護士 中村 宏

 いよいよ民法の中心部分である債権法の改正作業が始まった。債権法とは個人や企業間の契約に関するルールのことである。昨年10月28日千葉法相は法制審議会に改正を諮問した。順調にいくと2012年の通常国会で議論されることとなる。既に昨年3月には学者グループに法務省が加わった研究会によって基本方針がとりまとめられた。その内容は別表の通りで現在の債権法を大幅に変える内容が含まれている。

 もちろん明治時代に作られた現行民法はすでに制定から113年経っており,家族法は戦後改正されたものの,財産法はほとんどそのままである。改正の必要性がないなどと言うつもりはない。しかし解釈や判例によってその内容は補われこれまで一応問題なく使われてきた基本法であって,これを大改正する必要性があるのかという議論も一方で聞こえる。今の民法のままではグローバル化した現在の国際社会から取り残されるというのがどうも政府の考える一つの改正動機らしい。

 だとするとその内容をもっと広く議論していくことが必要である。消費者契約法の内容を民法に取り込んでしまうという研究会案がある。これは一見すると消費者の権利拡大に役立つかもしれないが,生まれたばかりの消費者契約法をこれから発展させるべきこの時に,これを一般法化してしまうことは消費者保護に反しないかという反対論も強い。他方,労働契約法は独立させたままでおくという。商法総則は合体する方向のようだ。

 下請の元請への直接請求権というのは役に立つかもしれない。交通事故の逸失利益の算定については,中間利息の控除を現在の5%固定から変動長期金利の割合に変えるというのは現在の交通事故被害者にとっては役立つ改正だろう。しかし今はいいかもしれないが今後の何十年後の我が国の金利情勢は一体どうなるのだろうか。被害者と加害者を逆に考えると結論は違ってくるし法律は長い目で作ることも必要なのである。時効は起算点を固定化しないというがかえってもめ事は増えないか。

 最大の法律の利用者である国民の意見がどうなるか,専門家任せにせず議論を行っていくことが必要である。


別表 議論されている新規定の主なもの

 

資生堂・アンフィニ だましの解雇事件

弁護士 関守 麻紀子
  1.  資生堂の工場で口紅の製造に携わっている女性たちが、解雇されました。
     口紅の製造というのは、とてもデリケートな作業です。あの微妙で多彩な口紅の色は、製造者のきめ細かな作業によって生み出されるのです。「資生堂」の口紅を作っていることに、彼女たちは、誇りを持っていました。その日の作業が少しの間違いもなく、完璧に仕上げるために、毎朝、無給で早出をしてまでも、念入りにその日の作業の段取りをしていた、と言えば、彼女たちが、どれほど自分の仕事に誇りを持って取り組んでいたかをわかていただけるでしょう。

  2. 彼女たちは、アンフィニという派遣会社から派遣されて資生堂工場で働く派遣社員で、1月1日から12月31日までの1年間という契約期間は、これまで、当然のように契約は更新されてきていました。

  3.  2009年4月10日頃、アンフィニは、工場でラインについて作業をしている従業員をひとりづつ呼び出し、「資生堂工場の始業就業時間が変更になったから契約書を作り直さなければならなくなったのでサインして」「2か月更新になった」などと言って、新たな契約書へのサインを求めました。その新しい契約書では、契約期間が「4月1日から5月31日まで」とされていました。本来であれば12月31日までの契約のはずが、短くされていたのです。契約期間が短くなっていることすら告げられずにサインを求められた人もいました。
     彼女らは、会社の「2か月後にまた更新する」という言葉を信じて、サインしました。
     もともとアンフィニでは契約書の作成がずさんでした。毎年、契約期間が過ぎてから、つまり、1月になってから、12月の日付の契約書を作成する、ということが繰り返されていました。そのため、これまで毎年更新されてきているし、契約書も後手後手で作成されてきているのが常なので、よもや更新されないなどということはあるまい、と考えたのです。作業中に呼び出され、ラインから外れたため、作業が滞っていないかも気になり、早くラインに戻らなければ、と気が焦って、入念に質問することもできませんでした。

  4.  ところが、新しい契約書にサインを求められて数日後に、彼女らは、会社から、5月17日付けで解雇する、と告げられました。
     アンフィニは、従業員を騙して、12月31日までの契約期間5月31日までと大幅に短縮する契約書を作成させた上、その期間前に解雇したのです。
     彼女らはみな家庭を持っており、子どもを養わなければならない人がほとんどです。いずれの家庭も、彼女らが働いて給料をもらうことを前提に生計を立ててきているので、今回の解雇により、生活が立ちゆかなくなりました。今のところ、食費や被服費を切り詰めたり、借り入れをしたりして食いつないでいますが、無収入の状態が続けば、子どもに学業を断念させざるを得なくなったり、ローンを返済することができずに自己破産の申立を余儀なくされるなど、生活が破綻してしまいます。

  5.  彼女らは、従業員の地位の確認と賃金の支払いを求めて、横浜地方裁判所に地位確認仮処分を申し立てました。
     裁判所では、会社が新しい契約書にサインさせる際に、5月31日の期間満了後はもう契約を更新しないことを説明したのか、ということが問題になりましたが、会社自身、「そのような説明をしなかった」ことを認めました。
     ところが、裁判所は、彼女らが署名・押印した契約書が存在するとの一事をもって、契約期間を5月31日までとする新契約は有効であると結論する不当な決定をしたのです。
     裁判所の理屈は、彼女らが契約書に署名・押印したのだから、契約期間を5月31日までに短縮することを了解していた、というものです。しかし実際には、印まで押した人は、半数以下です。作業中に呼び出されてサインを求められたのですから、印鑑を持っていない人も多く、印鑑を持っていない人はサインしただけでした。そもそも裁判所は、証拠をきちんと見ていないのでしょう、このような基本的な事実すら見誤った上で、「債権者らは、契約期間が変更となったことを認識した上、署名・押印した」のだから解雇は有効である、と誤った結論を出したのです。
     このことだけではありません。裁判所の決定は、当事者間に争いのない事実すら無視して、このような決定をしたのです。具体的に説明するにはとてもページが足りません。

  6.  12月31日までの契約を5月31日に短縮するというのであれば、会社はその旨きちんと説明する必要があるし、従業員の側にも、考える時間が必要でしょう。
     しかし、本件ではそのような経過は全くありません。そもそも、会社自身、「5月31日の契約期間終了後はこれまでとは異なり、契約を更新しない(あるいはその可能性がある)、という説明はしていない」ことを認めているのです。
     そうであるにもかかわらず、この点、裁判所の決定では、「(会社は)必ず契約を更新する旨の説明はし(なかった)」とすり替えられていました。
     裁判所は、労働者の生活がどういうものか、働いて賃金を得て、そのお金で生計を立てていく、ということがどういうことなのか、全く理解していない。
     本人や家族の生活がかかっているのに、なぜ、このようにずさんでおかしな決定ができるのでしょうか。

  7.  このような理不尽極まりない決定を受け入れることはとうていできず、即時抗告を申し立て、現在、東京高等裁判所で審理をしています。
 

日産自動車による非正規社員大量解雇事件

弁護士 近藤 ちとせ

日産自動車による大量解雇事件について前回ニュースからの続報をお届けします。

日産による大量解雇

 日産は,平成21年3月,経営状況悪化を理由に数百人もの派遣社員を一斉に解雇しました。

 日産は,これまで法律を脱法して派遣社員や有期雇用社員を都合よく使ってきました。派遣社員については,事前面接をしてはならないと法律で定められているにもかかわらず,平然と事前面接を行ってきました。また,派遣社員は,3年を超えて使用するときには雇用申入れをすべき義務があるにもかかわらず,これもまた無視し,派遣社員を6年以上もの間使用してきました。子会社の日産車体は,有期社員の期間制限を脱法するために,有期雇用→派遣→有期雇用→派遣と雇用形態を変えることで法の目を潜ってきました。

 日産は,この様に非正規社員を正社員と同様に都合よく利用しておきながら,景気が低迷するや,非正規社員は「正社員ではない」という理由で一斉に解雇したのです。

日産のいいわけ

 日産は,正社員の業務は「コア業務」で非正規の業務は、「非コア業務」なので,それぞれ業務が異なるから派遣社員を正社員として雇い入れる必要はない等と主張しています。しかし,誰にどのような業務を行わせるかを日産が決め,それらを自由に「コア業務」「非コア業務」と名付けて,それらが入れ替えできない等と言えるのであれば,派遣社員はいつになっても正社員になれないということになります。派遣社員もコア業務を行わせれば正社員になれるはずなのに,それはやらせないでおいて正社員にはなれないというのは勝手な論理です。

 また,日産は,派遣社員の能力が水準に達しているかどうかを判断する面接は「面接」ではない等とも述べています。しかし,能力の水準に達しているかどうかを判断して,もし水準に達していないと思ったら採用しないのですから,社員の選別にほかならないわけで,それこそが「面接」なのです。

そもそも解雇の必要性すらなかった

 さらに,日産は,10月には日産車体で期間工の募集を再開し,その後日産も新規の社員を募集し始めました。解雇からわずか6ヶ月で新規社員の募集を始めていることからも,もともと解雇を迫られるような状況になかったことが明らかになりました。ちょっとでも経営の圧迫になる可能性があれば非正規社員らを解雇し,足りなくなったら雇えばよいというように,非正規社員の人々を部品か何かのように扱っているに過ぎないのです。

 この様な人を人とも思わない解雇は,決して許されないものです。

 

米兵犯罪被害事件のいま

弁護士 高橋 宏
  1. 山崎事件判決
     昨年は神奈川の米兵犯罪の闘いにとって大きな前進のあった年でした。
     5月20日、山崎事件(佐藤好重さんに対する強盗殺人事件)の判決が言い渡され、これまで、勤務時間外の犯罪は米兵の個人的な問題だから米軍や国には責任がないとされてきた問題について、決着がつけられました。判決によって、米軍上司は、米海軍規則第7章を根拠とする司令官の権限に基づいて、米軍兵士に対して、深夜外出制限や飲酒制限をする監督権限を与えられており、勤務時間外の不祥事防止のために、米軍兵士を監督する義務を負っていたことが明確に示されたのでした。  これは、今年1月19日に判決を迎える田畑事件(タクシー運転手への強盗傷害事件)や、証拠調べが始まろうとしている近藤事件(米海軍人事部副部長による傷害致死事件)にも、非常に大きな展望を与える判決でした。
     つまり、米海軍上司が、勤務時間外の不祥事防止のために与えられた、これらの権限を行使し、このとき、深夜外出制限や飲酒制限を行っていたら、山崎事件は防ぐことができたということが明らかになったのでした。ましてや、山崎事件後に発生した田畑事件や近藤事件は、規制をしながら違反を黙認していたのであり、なおさらでした。

  2. 残された課題
     もっとも、横浜地裁判決は、その上で、米海軍上司の監督権限を具体的にどのように使うかについては、米海軍上司に広範な裁量権が与えられているとして、本件の時期に、深夜外出規制や飲酒規制をしていなかったことが、監督権限の濫用とはいえないとして、結論的には、山崎さんの請求を認めませんでした。
     しかし、米兵犯罪は一般の犯罪に比べて、5〜8倍もの高い割合で凶悪犯罪が発生しています。しかも、このような凶悪犯罪が、山崎事件が発生する何年も前から繰り返されてきたのです。それでも、これらの権限を行使せずに、その結果、リースによる犯行が発生してしまったのに、それも米海軍上司の裁量のうちだなとどいうことで済ませることが出来るのでしょうか。
     ましてや、米兵犯罪は、一般の犯罪とは異なって、軍隊の本質(加害者側の問題)、良き隣人政策(被害者側の問題)、裁判権放棄密約(取り締まりの問題)という、米兵犯罪を誘発する独自の問題が存在しています。米兵犯罪は、その危険性が具現化したものという本質をもっています。そして、これらの危険性は、いずれも米軍や日本政府によって創り出されたものなのです。自ら危険な状態を創出した以上は、その危険が具現化しないように努めるべきは当然で、米兵犯罪という結果が発生しても、なお裁量のうちだなどといって許されるはずはありません。
     横浜地裁判決は、米兵犯罪特有のこれらの点については、ほとんど判決で触れておらず、見落としているといっても過言ではありません。

  3. さらなる前進の年に
     本年は、神奈川の米兵犯罪3事件のいずれの事件にとっても、昨年の成果の上に、さらに大きな成果を結実させる年にしたいものです。

(年頭挨拶)高橋 宏

新自由主義と軍事大国化の行き着くところは、既に明らかになった。
受け皿になったのは、選挙のために国民の声にすり寄った小沢民主党。早くも正体が露呈し始め、裏切りは時間の問題。 であれば、今こそ力を合わせて。

 

□建設アスベスト訴訟の1年

弁護士 阪田 勝彦
  1. 戦後目覚ましい日本の高度経済成長に貢献した建設業界。その裏側で、発ガン物質を吸入させられ続けた大工さんなどの建設作業従事者が、国とアスベスト含有建材メーカーを訴えた神奈川建設アスベスト裁判も2008年6月の横浜地裁への提訴、それに続く11月21日の第一回期日から数えて1年強が経過した。

  2. 1年間の裁判が経過してゆく中、実に7人もの原告が次々と亡くなっていった。亡くなった原告の遺族の中には、夫を亡くして四十九日も終わらぬままに法廷での意見をしていただいた方もいた。
     「(この裁判の解決は)自分には間に合わないが、後に続く人のために道をつくらなくてはいけない」亡くなった原告は、アスベストによってガンに蝕まれた身体のまま、そういって裁判の原告となった。その原告の妻は、夫の遺志を継いで、夫のような被害者がもう二度と生まれないようにとの気持ちで裁判を引き継ぎ闘っていくと話した。

  3. アスベストは、戦前は、軍艦や工場など限定的な使用しか日本では使われることはなかった。住宅に用いられることになるのは戦後、建材メーカーの積極的な政府などへの働きかけによる。敗戦により軍需が無くなったアスベスト業界は、その需要を住宅に向けることとなり、その耐火性に優れた性能を全面に打ち出し、企業の壁を越えてアスベストそのものを普及するために、「石綿協会」なる業界団体を作り出した。
     程なく、アスベストは海外での発ガン性を指摘され、1972(昭和47年)には、WHO(世界保健機関)、ILOにおいて発ガン物質であると明確に発表され、海外でのアスベスト使用量は激減してゆく。アメリカでは、アスベストに関する多数の訴訟が起こり、大混乱が生じてゆく。
     その中、日本は、世界の趨勢に反してアスベストの使用量を増加してゆく。日本はこのころまさに空前の高度成長期を迎え、高層ビルを大量に造り続けていた。アスベストの危険性を知り抜いていた、政府や建材メーカー、知識人は、致命的なアスベストの使用を、建設作業従事者の生命への危険性を知りながら、みて見ぬふりをしてきた。
     そして、この見殺しの事態は、もう一度起こる。1980年代後半から90年代前半の空前の不動産バブル期の建設ラッシュ時である。大手建材メーカーで「クボタショック」で知られる「クボタ」は、バブル以前にアスベストの使用をやめるつもりであったが、バブルに乗り遅れまいとして、さらにアスベストをまき散らし続けた。
     ただ、莫大なお金を儲けたいという理由で、働く人に発ガン物質をすわせ続けたのであった。

  4. この一年で様々な事実が明らかになってきた。国のアスベスト推進の政策、建材メーカーの相互の関わり、特にわずか10年ほど前まで国は、厚木基地など基地周辺住民の防音工事にアスベスト建材をわざわざ指定して使わせていた。最早先進国では用いられず、価格も激安なアスベスト建材を、爆音の被害者宅に捨てていたようなものだ。

  5. 一年が経ったが、この理不尽を忘れず、心半ばに斃れていった人たちのためにも、今一度思いを新たに頑張っていきたい。
 

事務所ニュース 2010年新年号

弁護士 太田 啓子

性暴力に関する日本の刑法の問題点〜 海外の法制度との比較

 クイズです。以下の@〜Dのうち、日本の刑法で「強姦罪」に該当するのはどれでしょうか(いずれも、暴行又は脅迫を手段として行われたものとします)。@男性器を女性器に挿入する A器具、棒などの異物を女性器に挿入する B指や手拳を女性器に挿入するC男性器を被害者の肛門に挿入する D男性器を被害者の口に挿入する。

 正解は、「@のみ」です。あくまで、「男性器」を「女性器」に挿入した場合のみが「強姦罪」に該当するということです。また「強姦罪」の被害者は女性のみとされており、男性(乳幼児も含みます)が無理に肛門性交をさせられても「強姦罪」にはなりません。もちろん、男性が被害者になる場合も上記A〜Dも「強制わいせつ罪」という名の犯罪には該当しますが、その法定刑は強姦罪の「3年以上の有期懲役」よりは低く、「6月以上10年以下の懲役」です。しかし、A〜Dも、男性が被害者になる場合も、被害者の精神的・肉体的苦痛は甚大だと思いませんか。被害者が受ける苦痛の大きさを基準に考えると、このように強姦罪と強制わいせつ罪に法定刑に差があることに合理的な理由があるとは思えません。

  最近、性暴力に関して先進的な法制度をもつ外国の例を勉強する機会に恵まれました。この分野で先進的法制度を持つスウェーデンでは、何回かの法改正を経て、現在では「何びとも、暴力または犯罪行為をするという脅しをもって、他者に性交もしくは、その侵害性や全体状況に鑑み性交と同程度の性行為を強要したものは、強姦罪とにより最低2年、最高6年の懲役刑に処する」という規定になっているそうです。被害者の性別は問われませんし、性交そのものでなくても、「強姦罪」として処罰することができる内容です。犯罪行為の具体的な態様の違いは、量刑で反映されるということです。

 また、スウェーデンでは、被害者が未成年だった場合、公訴時効(10年)は、18歳になったときから起算するのだそうです。具体的には、10歳のときに被害に遭った場合、被害から10年後の20歳で時効になってしまうのではなく、18歳から10年後の28歳まで時効は完成しないので、それまでは強姦罪として処罰するために起訴することができるということです。これも日本と違うところで、日本では強姦行為がおわった時から7年経ってしまうと公訴時効が完成してしまうので、それ以降に警察に相談するのでは、たとえ犯人がわかっていても刑事裁判にかけることができません。従って、子供のうちに被害に遭い、意味も分からず誰にも相談できず悩み、大人になってやっと「犯人を罰してほしい」と考えるようになっても、もう法的にはできないということになってしまいます(詳細は割愛しますが、民事でも同様の問題があります)。

 他にも性暴力に関する日本の法制度にはいくつか問題があり、弁護士実務を行うなかで被害者からご相談を受けても現行法の限界の前に辛くもどかしく思うことが多々あるので、捜査や医療現場でも被害者への厚い配慮があるというスウェーデンの話は、どれを聞いてもまさに「別の国の話のよう・・・」という思いになりました。 ただ、とても印象的だったのは、今は先進的なスウェーデンでも、1962年の刑法改正の前までは、強姦罪について今の日本の刑法と同じような規定を有しており、その後の改正論議の中では「被害者に落ち度がある場合には法定刑を軽くしよう」という意見が出たことさえあったということでした。良い法制度は、初めから当然のものとしてあるわけではなく、問題意識を社会全体で共有し、議論しながら少しずつ作られてゆくものなのですね。お隣の韓国や中国でも、問題意識がある人たちの色々な動きがあるそうで、勇気づけられる思いになりました。 政権交代し、是非はともかく確かに色々な変化は実感しつつある今の日本社会ですが、性暴力に関する法制度についても、おかしいことはおかしいと声をあげ続け、変化につなげることが重要だと思っています。

以上

 
たまプラーザ 無料法律相談はじめました 横浜合同法律事務所のブログはこちら トップページ 事務所紹介 取り扱い事件一覧 法律相談のご案内 費用について 所属弁護士 事務所への道順 リンク集 News & Topics 横浜合同法律事務所9条の会からのお知らせ 新規登録弁護士採用のお知らせ