News & Topics

横浜合同法律事務所ニュース13

安保五〇年

弁護士 畑山 穰

 今年は、一九六〇年に日米安全保障条約が改定されてから満五〇年にあたります。

 そもそも日米安全保障条約は、一九五一年のサンフランシスコ平和条約締結によりアメリカの日本占領が終わり、日本が主権を回復して独立国となるため、アメリカ軍は軍事基地を撤収して本国へ引き上げなければならなくなるのに、そのまま居座り続けることができるよう日本に認めさせた条約であります。

 つまり、安保条約はもともと日本の平和と日本国民の利益を守るために結ばれたものではなく、第二次世界大戦後、米ソが二大陣営にわかれてにらみ合う冷戦のさなか、アメリカが自国の利益を守りアメリカの世界的覇権を確立する目的で、日本に押しつけたものであり、アメリカが決定権を握る世界軍事戦略のなかに日本を位置づけ利用するためのものでありますから、最悪の場合、日本はアメリカの戦争にいや応なくまきこまれかねません。

 一九六〇年、時の岸信介首相とアメリカのアイゼンハウアー大統領は、日本の基地提供義務だけを規定していたそれまでの安保条約を、相互防衛的性格を持ち日本に軍備増強義務を負わせる現行安保条約に強化改定しようとしましたが、このときには、その危険性を察知した国民が、今日、六〇年安保闘争と呼ばれる歴史的な大反対運動をまきおこし、安保条約改定は阻止できなかったものの岸内閣を総辞職に追い込みました。

 それから五〇年、米軍機墜落事故、米軍人による犯罪、軍事演習による騒音、環境破壊、経済発展の阻害、日常生活におけるさまざまな障害、人権侵害、等々、日米安保条約による基地押しつけのひずみを一身に引き受けさせられてきた沖縄県民の怒りは、沖縄県知事以下普天間飛行場のある地元宜野湾市や関係自治体の市町村長は申すに及ばず、全自治体の首長さんたちが参加する本年四月二五日の読谷村運動広場における一〇万人近い文字どおりの党派を超えた県民集会の成功に結実しました。

 普天間基地撤去問題で、後を引き継いだ菅内閣は、日米同盟の重視、抑止力の必要性を正面に掲げて開き直り、迷走を重ねて自滅した鳩山内閣が敷いた公約違反の県内移設日米合意路線をあくまでも追求しようとしております。

 政府のこの動きに対抗して、運動の側には、今や、普天間基地の移設問題を超えて、政府に安保条約一〇条の終了通告の権利を行使させ、基地問題を抜本的に解決するため日米安保条約そのものの解消を目指す動きも始まりつつあります。

 日本国民が沖縄県民のように結集すれば、普天間基地の撤去ばかりかその元凶である安保条約そのものをなくすことも夢ではありません。

 普天間基地撤去実現をまず嚆矢として、日本全国からアメリカの軍事基地をなくす展望を切り開く、勢いのある運動を展開しようではありませんか。

 

通貨オプション被害 

弁護士 浅川 壽一
  1. 通貨オプション。この耳慣れない商品を金融機関から勧誘され、何億円もの損害が発生するという被害が発生しています。通貨オプションとは、金融商品のなかでデリバティブ取引といわれるものです。その仕組みは、ある一定の商品を一定の価格で買う権利または売る権利の売買と説明されます。法的には条件付権利の売買、経済的効果からみると保険契約に類似し、一昔前に被害があったワラント(新株引受権)も、このオプション取引の一種です。
  2. 小職が担当している事件では、大手証券会社が一般の事業会社に対し、オプション取引のもつ危険性を十分に説明せず、取引を勧誘したものでした。オプション取引では、売り手になった場合、理論上無限大の損失が発生する可能性があるのです(ちょうど、保険契約の保険会社と同じような立場に立たされます)。こうした危険性を十分に説明せず、大手証券会社は「配当がいい」といった利点だけを強調し、販売していました。
  3. 営業員のセールストークは、「塩漬けになった株券があったら、それをウチの会社に預けて、担保にしましょう。それを担保にしてオプション取引をすれば、配当が得られますよ」というものでした。確かにオプション取引を開始するためには、担保が必要です。しかし、その「担保」の本当の意味は、顧客に損失が発生したとき、証券会社がその担保にした株券を売却して損失に埋めるという意味です。営業員の説明から、こうした「担保」のもつ本当の意味を読み取れる人は、なかなかいないと思います。
  4. 通貨オプション取引には、市場が存在しないという問題もあります。上場されている株式や債券は、市場で取引がなされており、その価格形成が明確といえます。しかし、通貨オプション取引には市場が存在せず、オプションの価格形成は証券会社が作り出した数式でしか検証することができません。つまり、通貨オプション取引の価格は、いわばブラックボックスの中で形成されており、証券会社の言い値で取引をせざるを得ないという問題もあるのです。
  5. このように、通貨オプション取引には、多くの問題があります。現在、証券訴訟を専門に扱う弁護士が集まって、全国各地で訴訟が起きています。大手の金融機関が、こんなに危険な商品を売る時代になってしまいました。今後も、同様の訴訟は増えていくのかもしれません。私達弁護士は、こうした訴訟に対応すべく、研鑽を怠ってはなりません。
 

国会の不作為?

弁護士 田渕 大輔

 日本国憲法の改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法が本年5月18日に施行されました。そもそも、国民投票法は、2007年、多くの問題点と議論の不十分さを指摘されながら、時の安倍政権の下で成立しました。その目的は、言うまでもなく、戦後レジームからの脱却を掲げた安倍政権の任期中に、日本国憲法を改正することにありました。

 もっとも、安倍政権は、その後間もなく崩壊し、以後、政権が目まぐるしく変わる中で、憲法改正の議論も下火になり、国民投票法の施行日は静かに迎えられたのでした。

 現状は、憲法改正が具体的な政治課題として取り上げられること自体、非常に少なくなっており、憲法改正案を審議するため国会に設置されることが予定されている憲法審査会についても、未だ委員の任命はなされておらず、参議院では憲法審査会の規程すら未整備という状況です。

 このような状況に対し、国民投票法が施行されたにもかかわらず、憲法審査会が機能していない、規程すら整備されていないという現状は、国会の不作為であり、許されないとする主張を耳にすることがあります。国会の不作為論は、国民投票法の成立をめぐる攻防の中でも、憲法が国民投票法の存在を予定しているにもかかわらず、国民投票法を戦後定めてこなかったこと自体、国会の不作為であって許されないのだといった文脈で語られることがありました。

 しかし、そもそも「不作為」とは、「為すべきことを為さないこと」を意味するのであって、憲法という国家の最も重要な法規範について、国民の間に多くの意見があり、議論が十分煮詰まっていない状況の中、拙速に結論を出すことが「為すべきこと」であるはずがありません。

 そもそも、問題が山積している今の日本において、憲法改正を行うよりも前に、国会が為すべきことは山程あるはずです。その中には、社会保障の問題をはじめとして、私たち国民の日常生活に直結する重要な問題が多く含まれています。そうした優先順位の高い問題を解決しないまま、憲法改正を急ぐ必要など無いことは明らかであり、憲法改正が進まない現状に対して、国会の不作為論を持ち出して非難することは、全くの筋違いであると言うべきでしょう。

 

「堀越事件判決」
 意見表明は犯罪ではない

弁護士 小口 千恵子

 「戦争参加に反対しよう」「消費税増税に反対しよう」こういった意見を表明することは、大変大切なことです。賛成・反対の意見をそれぞれ表明し合って国の進路を決めて行くのが民主主義の社会です。

 ところが、国=時の政権にとって都合の悪い意見を表明する人を刑務所に入れたり罰金を課する国が存在するのです。それは、現代の日本の話です。北朝鮮だけの話でなく、戦時中の話でもありません。

 2004年春以降、各戸の郵便ポストに国の政策を批判する意見を記載した政治ビラを配布した人が立て続けに逮捕され、裁判所がこれらが「犯罪」だとして有罪判決を出すという事態が発生しました。住居侵入罪に当たるとか国家公務員法に違反するというのです。

 ポストにビラを配布することは普通のことのはずですが、政府は、犯罪者の烙印を押し刑罰を加えてこのボラ配布をやめさせたかったのです。 このような政府のやり方に対して、国際人権規約委員会は、日本に対して「表現の自由と参政権に対して課されたあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである」との意見を出したほどでした。

 逮捕起訴された人の一人に社会保険事務所に勤務する公務員の堀越さんがいました。この堀越さんに対しては、警察の公安係が、24時間体制で監視、多い時には1日11名もの警察官が車4台、ビデオカメラ6台をもって尾行し続けたことが明らかになりました。公安警察と堀越さんとどちらが害悪だと思いますか?

 ところが、第一審は、これまでの裁判所の流れを汲んで堀越さんに対して有罪判決。裁判所は憲法を守り、公平な結論を出すところと思っている人にはがっかりな結論でした。やはり裁判官はおのれ可愛さが最優先で権力にへつらう人が多いのですね。裁判官も後ろめたかったのでしょう。罰金刑に普通はつけない執行猶予を付けました。

 この控訴審の東京高等裁判所は本年3月29日、無罪判決を言い渡しまいした。ようやく国際標準に合う判決が出されたのです。

 他方、堀越さんと同様ビラ配布をした公務員の宇治橋さんに対し、東京高等裁判所は本年5月13日、一審有罪判決を維持する判決を言い渡しました。国家のためには公務員個人の政治活動は一切許されないという恐ろしい考えが堂々と書かれたものでした。権力を背景に生き続けて憲法を忘れてしまったようです。

 二つの事件は最高裁へと進みました。国民の意見を弾圧する政府に対し、はっきりノーと示す判決が出されるよう、監視していきましょう。

 

非正規、派遣切り事件の今

弁護士 田井 勝

第1 非正規、派遣切り事件について

いわゆる「リーマンショック」以降、2009年初頭から、いすゞに始まり、大企業の多くが非正規社員の大量解雇、派遣切りを行いました。そして全国各地で、非正規の裁判が提起され、この神奈川でも、いすゞと日産の非正規社員解雇事件など、裁判で多くの事件が争われています。

第2 松下PDP最高裁判決の影響

宙に浮いた年金記録の確認作業は、これまでにある程度進んできていますが、残っている記録を派遣切り事件の多くは、派遣元ではなく派遣先に対する直接雇用を求めるものです。これは、派遣先が派遣法の条文に違反する違法派遣を行いつつ、派遣労働者の直接の使用者のごとくふるまってきた以上、かかる実態に即して派遣先に責任を認めさせるべき、との理由によるものです。
しかしながら、最高裁判所は2009年12月、いわゆる松下PDP事件において、派遣先(注文主)の直接雇用責任を否定しました。同判決は、偽装請負について労働者派遣状態であり、労働者派遣法の範囲内の違反に過ぎない以上、雇用主の派遣会社(請負会社)と労働者の雇用契約は無効にならない、と判断するものでした。
この最高裁判決が下されて以降、全国各地の地方裁判所は、同様の派遣切り裁判で、労働者に対する派遣先の契約責任を認めず、労働者の請求を棄却するものが続いています。いずれも、違法派遣の実態につき、裁判所が派遣法の趣旨に応じて的確に判断しているとは言い難いものばかりで、裁判所が雇用の実態をほとんど無視しているのが現状です。

第3 実態は直接雇用

形式上は派遣元との契約であっても、その実態は派遣先が労働者を直接指揮命令し、継続的に雇用し続ける「常用代替」であって、労働者が派遣先の正社員であることは明らかです。特に、日産の事件に至っては、原告が派遣元と契約する前に派遣先と面接を行い、派遣先が労働者の採用を決定するといった事前面接も行われており、日産と原告らとの間に直接の雇用契約の合意があったことは明らかです。
各地での不当な裁判に抗議しつつ、これまで以上に、かかる雇用実態を裁判所に伝える必要があります。

 派遣労働は雇用が安定せず、低賃金、かつスキルが蓄積されにくい、など、労働者にとってプラスの面を見つけることは困難です。世論の一部には「派遣を選んだ者の自己責任」という意見もあります。もちろん、派遣を選好する労働者もいるようですが、派遣社員の多くは、正社員になりたいにもかかわらず、直接雇用を否定され、やむを得ず派遣の道を選択しているものが大半です。
日産など大企業は、自らの勝手な経営判断で派遣社員を大量に解雇し、現在、黒字経営に転化しています。大企業が、派遣労働者を物のごとく扱い、自らの利益のみを追求することを許していいはずもありません。
裁判所には多数者の利益ではなく、少数者の権利こそ保護すべき役目があります。派遣先の責任を認めさせるべく、これからも頑張っていきたいと思います。

以上

 

マンション役員の「輪番制」

弁護士 中村 宏

 分譲マンションの管理組合役員はどのように決められているだろうか。国土交通省の調査によれば(2008年),抽選又は順番で選任されることが多いという回答が69%だった。。

 分譲マンションにお住まいの皆さんは十分おわかりの通り,マンションの役員はそれこそボランティアで,重大なことは全部自分たちで決めなければならない。たとえ管理会社に管理を委託している場合でもそうだから,自主管理のマンションならなおさら大変だ。それこそ大修繕の年にあたったりしたら,あるいは管理費不払とか何か訴訟を抱えたら,そしてその年に理事長にでもなってしまったら,それこそゾッとするほど大変である。

 ということで役員を順番に選任しているところも多い。それはみんなが管理に参加し,かつ責任を分かち合うという点では,一つの有意義なやり方である。それでは逆に,順番に当たった年,自身の様々な理由で役員になることができなかったらどうするのか。親族の介護,自身の病気,仕事の関係,その他の生活上の事情でどうしても役員などできない事情も誰にでも発生する。しかし,お隣さんのそのような事情で自分に役員がより早く回ってきたら,あるいはみんながみんな自分の都合を言い出したら,真面目に役員やっている方が「何でウチだけ」と言いたくなる。さらに賃借住戸が多くなってくると,規約の規定などでは居住者で役員だけを回すことも多いから,そこに不公平感が生まれてくるのも,また致し方ない。

 という悩みから,例えば非居住のオーナーからは「協力金」を集めたりして少しでも不公平感を解消しようとしているマンションもある。また少額であるが役員に実費や場合によっては報酬を支給しているマンションもある。不在者からの「協力金」徴収については額次第では適法であるという最高裁判決が先日出されたことも記憶に新しい(最高裁2010年1月26日判決)。

 しかし,さらにマンションによっては,規約で「輪番制」を決め,就任資格があるにも関わらず,自分の事情で役員就任を断った者に対して「罰金」を課しているところもあるという。しかしそこまでくると果たしてそれは適法なのであろうか。管理組合の役員は善管注意義務という義務を負う。当然お金の管理も伴うし,責任も伴う役職である。輪番制だからといって不適任者が選任されても困る。また少なくとも役員のうちの理事長はマンション法では「管理者」という役を自動的に仰せつかったこととなる。管理者は規約に特別の規定がない限りは総会で選出されるとされている(マンション法26条)。従って本来選出自体は総会で行うのが筋であろう。私は「輪番制とする」と管理規約に規定されているだけでは,強制的な就任義務を伴う輪番制を引いたというには不十分で,規約に別表でもつくり何年度は何号室のオーナーが役員に就任するということまで具体的に規定していないと,それは「規約での特別な規定」として有効な輪番制を定めたとはならないと考えている。そこまでの規定なしに「輪番制とする」と規定されていたとしても,それは選出についての考え方を宣言しているだけである。選任を辞退できないとか,役員就任義務があるとか,まして辞退したら「罰金」を払うことは認められないと考えている。

 ただしこの点についての判決例はまだ私の知る限りない。とりあえずそこまで強制しなくても,現代の「輪番制」はそれなりに機能しているところが多いようである。マンションの法律問題は,いろいろ考え出すといろいろおもしろい論点を提供してくれる。

 

第4次厚木基地爆音訴訟と全国の基地訴訟、そして普天間基地

弁護士 関守 麻紀子
  1.  厚木基地周辺に住む7000名を越える住民が原告になって、第4次厚木基地爆音訴訟が闘われています。4度目の訴訟であること、7000名もの人が原告になっていることからも、米軍のジェット機や自衛隊機が発生させる爆音、エンジン調整音などによる被害がいかにひどいものであるか、理解していただけると思います。

  2.  全国で爆音訴訟が闘われています。沖縄の嘉手納基地や普天間基地、山口の岩国基地、東京の横田基地、金沢の小松基地。それぞれ基地形成過程や使用形態など異なりますが、みな、爆音、墜落事故の被害やその恐怖に苦しめられています。原告たちは「全国基地爆音訴訟連絡会議」を結成してともに闘う体制を作り、弁護団も合同で弁護団会議を開き、情報や意見を交換しています。

  3.  人々は、「基地被害は理解できる、しかし、米軍による抑止力は必要である」と言います。
     しかし、沖縄や、基地周辺に住む住民たちは、現実に、日々、基地による被害を被っています。「はじめに基地ありき」の議論ではなく、自分や家族が人間として尊厳を持って生きられるのかということと、米軍基地がここにこの日本にあることが必要なのかということを、ぎりぎりの悩みを考え抜いているのです。ぎりぎりと考え抜けば、これまでの日米関係を見直し、日本が他国や東アジアの人々とどのような関係を作り上げていくべきかを真剣に模索しなければならないことに考えが至ります。これは、沖縄や基地周辺住民だけの悩みではない。国民みなが、考えなければならない問題です。

  4.  2009年夏の民主党政権誕生後、普天間基地移設問題が大きく取り上げられるようになり、国民が、米軍基地被害をわがこととしてとらえようとする土壌が生まれつつあると感じられるようになりましたが、それもつかの間、5月28日の日米共同声明、その後の鳩山元首相の辞任劇により、すべては浅はかな鳩山元首相の問題であった、日米関係は今さら見直しができるものではない、と決着されそうになっているように感じます。
     普天間基地移設問題が、鳩山元首相の浅はかな言動の象徴としてのみ扱われ、国民の議論の場から葬り去られるようなことがあってはなりません。普天間基地を沖縄県内・日本国内に移設して米軍基地を維持し続ける必要があるのか、真剣に議論を続けなければなりません。
 

公務の解体で国民の生活が危ない〜小さな政府は国民のためなのか〜

弁護士 近藤 ちとせ

 6月17日,自由法曹団神奈川支部等の主催で,「公務の解体で国民生活が危ない6.17集会」が行われました。集会では,神戸大学経済学部教授の二宮厚美先生からご講演を頂き,民営化が広がる現場からの報告も受けました。
 今回は,この講演の報告と,公務の解体は誰のためなのか,本当に公務を解体してよいのかということについて考えます。

  1. 国民のセイフティーネットをズタズタにして大丈夫なのか?

     6.17集会を行った目的の一つは,公務の解体は何のためになされているかを知りたいということにありました。
     私たち弁護士は,日頃から多くの労働者の方々に接していますが,今,多くの労働者が置かれた立場は,驚くほど不安定なものです。派遣社員や契約社員の方々は,会社の経営が少しでも「悪くなりそう」という理由で,簡単に「もう来なくてよい」と言われて雇い止めにされています。
     それなのに,他方では,職業安定所や,労働基準監督署,年金事務所,保健所,保育所,国立病院など,国民の最低限の生活を支える公務員の職務は「効率化」「小さな政府」などのスローガンの下,民営化されたり地方自治体に業務の移行をされたりしています。
     不安定な雇用の下,追い詰められる国民が多い中,国によるセイフティーネットも外され,国民の生活は本当に大丈夫なのか!?というのが,私たち,自由法曹団神奈川支部の弁護士が疑問に思ったポイントでした。
  2. 公務の解体は誰のため?

     二宮先生の話によると,公務の解体の背景には,多国籍化された企業がそれを必要としているということがあるのだそうです。つまり,日本の企業が従来のゼネコン中心型(公共工事をどんどん行い国内でお金を儲けようという型)から,多国籍企業中心型(他国の市場で他国との競争で勝ち抜くことを目的とする型)へと変化したことに,公務の解体の本当のポイントがあるというのです。
     現在の日本経済を牽引する自動車,電気製品等を製造する大型企業は,他の国の市場で勝ち残ることを目的としているのであって,日本国民が豊かとなって国内で多くの商品を売ることは目指していない,むしろ,他国との競争に不利な条件,例えば会社による社会保険料負担,法人税の負担,年金などを負担も全てやめてしまいたい。公共事業については福祉,社会保障,教育と何であってもとにかく安上がりにすることが,結局は企業の負担を削減するということなのです。
  3. 国民の生活を守るためには公務の充実も大切

     マスコミは,まるで今の国の財政悪化が,すべて公務員のせいであるかのように「事業仕分け」「無駄の排除」「天下り廃止」などのスローガンを毎日連呼し,公務員バッシングを続け,公務の縮小を叫んでいます。
     しかし,もともと公務員が行っている公務というのは,憲法25条,26条等によって,国民の最低限の生活を保障するために,国が国民に対して保障すべきものとして制度化されてきたものです。例えば,生活保護制度,国立病院制度,国立大学制度,職業安定制度,年金制度などは,利益追求を目的とするのではなく,国民の生活をよりよいものとするために設けられてきたのです。これらは,「安かろう悪かろう」ではいけない,充実したサービスとして国民に保障されなければなりません。
     そして,充実したサービスのためには,継続的に業務を行い,十分な知識を有する公務員が必要なのではないでしょうか。毎年,毎年,これらの業務を担う業者が入れ替わり,「引き継ぎがない」「分からない」などと答えていたのでは,国民は充実したサービスも得られません。
     社会保障や,福祉,教育などを全て商品化することが,私たち国民の生活を良くするものなのか,もっと考えていかなければならないと思います。
 

4.21沖縄県民大会

弁護士 高橋 宏
  1. 沖縄ツアー
     自由法曹団神奈川支部では、普天間基地の移設問題を、沖縄と連帯して闘おうをテーマに、4月10〜12日にかけて、新人弁護士を中心に約30名が参加して沖縄ツアーを行いました。
     唯一の地上戦が行われ、1950年の講和後も、1972年まではアメリカの占領下であり続け、本土復帰後も、未だに米軍基地の島であり続けてきたことを追体験することは、ほとんど全ての沖縄県民が、どうして普天間の県内移設を絶対に認めないのかを、実感をもって知ることが出来、非常に有意義でした。
     鳩山内閣は、最低でも県外移設としていた方針を転換した理由について、抑止力についての認識不足と説明し、マスコミも抑止力論を大合唱しました。
     けれども、アメリカはアジア・中東への出撃拠点として、長年にわたって「沖縄を返せ」の声を拒否し続け、沖縄を占領下に置いてきたのです。沖縄県民にとって、米軍基地が、日本の防衛のための抑止力とは無縁のものであることは、説明を要しない事実です。そのような沖縄県民が抑止力論などに惑わされるはずがありません。

  2. 県民大会
     そこで、沖縄ツアーに引き続き、神奈川支部として、4月21日の県民大会にも参加してきました。
     これまで辺野古移設案で進めてきた仲井真沖縄県知事も、圧倒的な県民の声の前に、ついに、県内移設反対のこの県民大会に出席するに至り、沖縄県内の全ての自治体が参加した大会になりました。全ての市役所、町役場が、住民に対して、県民大会への出席を呼びかけました。県内の全ての政党も、県民大会に参加しました。もっとも、県内の政党と言ってよいかはわかりませんが、幸福実現党だけは、唯一、県民大会に反対する宣伝を行っていました。
     会場を埋め尽くした9万人の熱気は、凄いの一言で、それと同じくらいに、会場までの大渋滞で、会場に到着出来なかった人の多さに、この大会の凄さを実感しました。
    自由法曹団沖縄支部の団旗は、大渋滞に巻き込まれ、遂に会場に届きませんでした。
    県民大会は、3時過ぎには終わったものの、大会に向かう大渋滞の列はいつまでも続き、5時過ぎになってようやく会場に着いた人たちもいたとのことでした。

  3. 6.4集会、署名運動
     鳩山内閣から菅内閣に変わったことにより、マスコミは、あたかも辺野古沖案で決まったかのような扱いをしています。
     しかし、「これ以上新たな基地を作らせない」との県民の思いは生半可なものではないのです。安保改定50年の今年、普天間の闘いを沖縄だけの闘いにするのではなく、全国民的な問題として取り組むことが不可欠です。
     6月4日、神奈川では、「普天間基地無条件撤去!オキナワ・かながわ連帯集会」が行われ、連帯署名に取り組むことが決意されました。是非ともご協力をお願いします。
 

子どもの貧困問題

弁護士 阪田 勝彦
  1. 子どもの貧困
     「貧困」というと、福岡の生活保護受給ができず亡くなった高齢者の事件や、派遣切り などに代表される非正規労働者の貧困問題がイメージされると思います。
     しかし、これら大人が貧困に陥るということは、その貧困家庭の構成員である子どもにも貧困がのしかかってくることになるのです。
     未成熟な年代の子どもが貧困にあうと様々な不利益が出てきます。子どもが乳幼児期には、暴力・虐待に繋がり易いと言われ、就学期には、学力低下(塾に通える子と通えない子では歴然たる格差が生じます)はもちろん、修学旅行費や給食費すら払えず、不登校や非行、場合によっては、学校を退学せざるを得ない子どもまで出ています。
     これら子どもに与える貧困は、子どもが自ら回避する術はありません。それにもかかわらず、子どもは貧困による不利益を一心に受けることとなるのです。また、このような貧困による不利益を受けた子どもは、自ら家庭を持った際に、さらにその家庭にも貧困が継承されてゆくこととなってしまうのです。
     そして、いまや日本の子どもの7人に1人が貧困状態にあると言われているのです。

  2. このような貧困が生まれてくる原因は何か?
    1. 労働に関する問題
       ひとつは、労働問題としての側面です。現在、派遣労働などの非正規労働の不安定で、過酷な労働条件の問題があります。このような非正規労働の親を持つ子どもに貧困が継承されるのは当然のことです。
    2. 社会福祉制度の欠陥
       いまひとつは、わが国の社会福祉制度の欠陥にも原因があります。通常、個人の収入は、そこから税金が控除され、その税金をつかって福祉の原資に回し、ひとりひとりの不平等を緩和しようとします(富の再分配)。
       多くの国では、収入は少なくてもこの再分配によって、貧困から救われていっています。しかし、驚くべき事に日本では、これが逆転現象が生じていることが報告されています(「子どもの貧困白書」明石書店)。
       これは、本来経済格差などを緩和して平等を実現するための社会福祉制度が、日本では逆に作用しているという衝撃的な結果です。
    3. 教育費の異常な高騰など教育施策の欠陥
       また、日本は、教育費が異常なまでに高額であることもその原因となっています。今高校の無償化法が通りましたが、私学との格差は依然著しく、大学教育を受けようと思うと、とても不可能です。海外では、大学教育で日本のように、数百万円もの教育費をとる国はほとんどありません。国がそこに支出をするからです。

  3. このような貧困が生まれてくる原因は何か?
     子どもの貧困問題は、このような複合的な理由により発生しており、それぞれの問題に取り組む人たちが連携して解決に取り組んでゆく必要があると思います。
 

事務所ニュース原稿 2010年夏号

弁護士 太田 啓子

民法(債権法)改正の中で時効制度はどう変わるのか〜債権の消滅時効について

 昨年11月から、法務省の法制審議会民法(債権関係)部会(以下「部会」)で、債権法の見直しについて議論されています。今年の6月に既に10回目の会議が行われており、順調にいけば平成23年の通常国会で議論されることになります。

 債権法改正に関し議論されている内容は多岐にわたりますが、本稿では債権の消滅時効についてとりあげます。債権とは簡単にいえば、特定の人に対し何らかの給付を請求できる権利のことで、例えば人にお金を貸した場合にその弁済を求める権利や、傷害被害を負わされた場合に加害者に対し損害賠償を求める権利などです。債権が時効で消滅するというのは、本来であれば実現できたはずの権利を一定の期間の経過によって法が奪うことですから、いつから時効期間が始まると定めるかは極めて重要です。

 インターネット上で公開されている部会の議事録を見たところ、現段階(平成22年6月20日時点)ではまだ時効制度についての議論はなされておらず、債権の消滅時効に関してどのような変更が議論されるのかはわかりません。しかし、部会での審議が始まるより前である昨年4月に、民法学者有志からなる「民法(債権法)改正検討委員会」(以下「委員会」)が発表した「債権法改正の基本方針」(以下「基本方針」)は、委員会の構成員が部会の委員と重なっていることもあり、今後の議論の方向性を探るためにおおいに参考になると思われます。従って以下では適宜基本方針の内容にも触れながら債権の消滅時効に関する問題点について述べます。

 現行の民法では、消滅時効は「権利を行使することができる時」から進行し、10年間債権を行使しないときには時効で消滅するとされています。また、不法行為に基づく損害賠償請求権については「損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様」とされています。このほか、より短期の時効が様々な形で定められています。

 ここで、時効の起算点である「権利を行使することができる時」とか「損害及び加害者を知った時」というのは一見一義的なようにも思えますが、具体的な事件に即して考えると判断に悩むこともあります。例えば職業病のじん肺にかかって労災認定を受け、その後に、勤務していた会社に対し安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求をしたいと考えたとき、10年という時効期間は労災認定を受けたときから進行するのか、会社を退職したときから進行するのか。じん肺が進行し、それが原因で本人が死亡した後に遺族が損害賠償請求したいと考えたとき、時効期間はいつから進行したことになるのか。いつを「権利を行使することができる時」だったと解釈するかによって、権利を行使できるかどうかが変わってしまうことになるので、時効の起算点の解釈をめぐって数々の紛争がありました。最高裁判所の判例では、この「権利を行使することを得るとき」とは,「単にその権利の行使について法律上の障害がないというだけではなく、さら に権利の性質上、その権利行使が現実に期待できるようになった時」をいうものとされています。さらに,「当時の客観的状況に照らし,その権利行使が現実に 期待できないような特段の事情が存する場合に」は「その間は,消滅時効は進行しない」ともされています。このように条文を解釈することで今までの司法の場では紛争解決が図られてきたわけですが、条文の文言と解釈との間にはいわば隙間があるわけで、その隙間が存在することは現行の民法の規定の不備だとも考えられます、

さて、「基本方針」では、債権の消滅時効について以下のような提案がされています(委員会ホームページより抜粋)。
【3.1.3.44】(債権時効の起算点と時効期間の原則)
〈1〉債権時効の期間は、民法その他の法律に別段の定めがある場合を除き、債権を行使することができる時から[10年]を経過することによって満了する。
〈2〉〈1〉の期間が経過する前であっても、債権者が債権発生の原因及び債務者を知ったときは、その知った時または債権を行使することができる時のいずれが後に到来した時から[3年/4年/5年]の経過により、債権時効の期間は満了する。
【〈2〉の時効期間を3年とする場合】
〈3〉〈1〉にもかかわらず、債権者(債権者が未成年者または成年被後見人である場合は、その法定代理人)が債権を行使することができる時から[10年]以内に債権発生の原因及び債務者を知ったときは、その知った時から[3年]が経過するまで、債権時効の期間は満了しない。
【3.1.3.49】(人格的利益等の侵害による損害賠償の債権時効期間)
 [生命、身体、名誉その他の人格的利益]に対する侵害による損害賠償請求権における【3.1.3.44】の規程の適用については、次の通りとする。
〈ア〉【3.1.3.44】〈1〉の期間は[30年]とする。
〈イ〉【3.1.3.44】〈2〉の期間は[5/10年]とする。
〈ウ〉【3.1.3.44】〈3〉は適用しない。

 基本方針は、不法行為による損害賠償請求権について定める現行の民法724条や現行民法が定める諸短期消滅時効規定は廃止し、債権時効として上記の規定に一本化しようとするものです。

 気になるのは、生命、身体その他の人格的利益に対する侵害による損害賠償請求権について、「債権発生の原因及び債務者を知ったとき」から起算して「5年」で時効消滅するという案【3.1.3.44〈イ〉】です(5年または10年とされていますが)。現行民法であれば、例えばじん肺になったことについての安全配慮義務違反を問う損害賠償請求権の時効は起算点から10年ですから、もし債権法改正により「5年」とされると現行法よりも権利を有する者の保護に欠けることになります。基本方針では「債権発生の原因及び債務者を知ったとき」から起算する時効期間を「債権を行使することができる時」から起算する時効期間より短くする理由について、債権者の帰責性(債権を放置したことがそれに該当するとされています)がより強いからであると説明されています。しかし実際に法的紛争を抱えた当事者の方が、訴訟などの紛争解決手段をとるまでには様々な葛藤や煩わしさもあるものですから、5年間「債権を放置」して訴訟等を起こさなかったことが、権利を失ってもやむを得ないほど強い帰責性といえるのかどうか個人的には疑問を感じますし、民法が公共財である以上、広く市民の意見を聞いて慎重に決定されるべきでしょう。

 また、基本方針では時効の起算点については「債権を行使することができる時」「債権発生の原因及び債務者を知ったとき」とされているのですが、いままでの判例の集積を踏まえて文言を変更することも提案されています。民法学者有志から成る「時効研究会」が昨年9月に発表した改正提案においては、債権の消滅時効は、「債権者に権利行使を期待することができる時から」5年の経過によって完成する、とされています(別冊NBLNo.122)。起算点についての条文の文言をこのように変更するべきなのか、現行民法の規律を維持することでよいのかも今後議論されることになるでしょう。

 債権の消滅時効については他にもいくつも論点がありますが、紙幅が尽きてしまいました。

 民法典のうち財産法に関する部分は明治31年の施行以来、平成16年に全面的に現代語化された以外は、部分的な改正はあっても全面的な改正はなされていません。社会情勢の変化や判例法理の集積などに照らせば、民法(債権法)改正を行う必要性自体はあるのだと思いますが、改正の影響は重大です。

 立教大学法学部の角紀代恵教授(民法)は朝日新聞への寄稿の中で「どんな不具合があるのか確かめもせず、いきなり法制審で議論を始めるのは乱暴」「部会の委員に学者が7人もいるのに、消滅時効や債権譲渡など重要な見直し対象事項を専門に研究している学者が入っていない。」「専門家のいない分野の議論が十分に行われるか、きわめて疑問」などと述べ、「債権法改正の論議が慎重に透明性をもって進められることを願う」と結んでいます(平成22年4月30日付朝日新聞 「私の視点」)。

 民法(債権法)の改正は市民生活や企業活動に大きな影響を与えるものですから、具体的規定ごとに、どのような改正が望ましいのかが幅広い層の意見を聞いて慎重に議論されるべきであり、今後の部会での議論の状況に引き続き注目が必要です。

以上

 
 

司法修習生に対する給費制存続を!

弁護士 西村 紀子

 司法試験に合格した後の司法修習生に対する給費制が大きな問題となっています。

 現在、弁護士、検察官、裁判官になるためには、司法改革により2004年以降に創設された法科大学院に入学して、ここで2〜3年勉強をした上で司法試験を受験し、司法試験に合格した後、司法修習生となって1年間に亘り実務を学び、司法修習が修了したら、晴れて、弁護士、検察官、裁判官になれるという仕組みになっています。

 従前、この司法修習生には、1年間の司法修習期間中は給与が支給され、これに対応する形で、アルバイト等の副業も一切禁止されて修習に専念する義務を負うという形で司法修習期間中に実務を学ぶという制度でした。

 ところが、2010年11月から法律が改正され、司法修習生に対する給与が廃止され、生活費がない人には、お金を1年間に最高300万円まで貸し付けるという制度に切り替わることとされました。アルバイト禁止で修習に専念する義務はそのままであるため、アルバイト等で生活費を確保することすら許されず、修習期間中無給で生活できるだけの預金がない人は、借金をしなくてはならなくなるのです。

 このような制度変更となったのは、ひとえに、司法制度改革による法曹人口増加に伴う財政問題のためです。

 しかし、この制度変更を放置することは、法曹に多様な人材を確保するとともに市民の権利の守り手を増やすという司法制度改革の趣旨に逆行し、市民が安心して相談できる弁護士がいなくなるということにもなりかねない、危機的な状況を生み出しかねないのです。

 司法改革により、従前は誰でも受験が可能であった司法試験を新たに創設した法科大学院の卒業生に限定したため、司法試験受験を志す人は、4年間の大学を卒業した後さらに2〜3年の法科大学院に入学しなくてはなりません。ところが、法科大学院での勉強による経済的負担は重く、アルバイトが可能ではあっても多くの法科大学院生が借入の奨学金に頼らざるを得ず、現状では、晴れて司法試験に合格した司法修習生の過半数が法科大学院時代に学費・生活費のために平均320万円の借金を抱えている状況にあります(日弁連調査)。このような多額の借金を背負った上、さらに1年間の司法修習期間中が無給でアルバイトもできず1年間の生活費は自分の貯蓄か借金のいずれかに頼らなくてはならないとしたら、法律家になりたくても経済的事情から断念せざるをえない者が多くなり、法律家になれるのはお金持ちだけ、ということになりかねません。

 また、仮に、多額の借金を背負ってなんとか法律家になったとしても、何百万円もの借金を背負った状態の駆け出しの弁護士に、人権活動やお金がなくて困っている人達の事件を扱うゆとりなどありようはずがありません。どんなに市民のための事件をやりたいと思って法曹を志した人だとしても、まずは自分の借金の返済ということになっても、それは、やむを得ないとしかいいようがありません。

 現在、日本弁護士連合会及び各地の弁護士会では、司法試験合格者への借金の強要をやめさせ給費制を維持するための取り組みを開始しています。

 多くの方に、給費制の廃止が、市民の権利擁護活動の危機をもたらす制度の改悪であることをご理解いただき、給費制維持のための活動にご協力いただけるよう御願いする次第です。 

                              

以上

   
 

日弁連による大阪府警に対する警告〜人権救済申立

弁護士 宋 惠燕

大阪府警による違法な捜査

 2007年1月28日,大阪府警警備部外事課が指揮する百名近い捜査員・機動隊員が突如として滋賀朝鮮初級学校(準学校法人滋賀朝鮮学園が設置運営する学校であり,在日コリアンの児童らが在籍する小学校相当の初等教育機関)に土足で踏入り,約4時間にわたって同学校内を大規模な強制捜査をした。

 大阪府警は,大阪市内のくず鉄業者が業務用トラックの使用本拠地を知人の自宅とし,保管場所を滋賀朝鮮初級学校の敷地内の駐車場と偽って滋賀運輸支局に登録したという電磁的公正証書原本不実記録罪の被疑事実(いわゆる「車庫とばし」)によってくず鉄業者らを逮捕し,同日,その自宅を強制捜査したほか,保管場所として登録された滋賀朝鮮初級学校に強制捜査を行ったのである。

 大阪府警は,朝鮮学校における強制捜査において,被疑事実とは明らかに無関係である,学籍簿(児童らの写真,成績,教諭による所見,家族構成,家族の職業等を記載しているもの)を,校長の制止にも拘わらず,執拗に閲覧した上,被疑事実とは無関係な児童や保護者の住所・家族構成・個人の携帯電話の番号等の個人情報が記載された名簿までをも押収した。

 このように軽微な事件に大がかりな捜査が行われた背景には,朝鮮総連に関連する軽微事件を被疑事件とする大規模捜査を繰り返し,朝鮮民主主義人民共和国に対して圧力をかけるという政治目的があった。

日弁連による警告と意義

 滋賀朝鮮学園とこのような異常な事態を憂慮した40名の弁護士有志は,それぞれ日弁連に対し,権利侵害状態の是正を求める人権救済申立をし,日弁連は,調査の結果,大阪府警による違法捜査があったとして警告をした。

 違憲・違法な捜査を行い重大な人権侵害を行った大阪府警が警告を真摯に受け止め,今後の捜査活動等を改めるべきであることは当然である。

 しかし,そもそも,大阪府警が違法な強制捜査を行うことができたのは,裁判所が捜索差押許可状を発付したからである。

 このような重大な人権侵害が生じてしまった大きな原因の一つして,裁判官による事前のチェック機能が働かず,安易に捜索差押えを許可してしまったことが挙げられる。

 「車庫とばし」という軽微な事件の解明に朝鮮学校に対する強制捜査が必要か否かを令状発付裁判官が真剣に検討したとは到底考えられない。被疑事実とは関係のないことが一見して明らかである「海外送金依頼書,組織図,国内外郵便物及び関係書類」について令状発付裁判官が漫然と捜索差押を許可したことは,あまりにも杜撰な行為であったとしかいいようがない。

 もっとも,全国各地において,政治目的のための同種の違法な捜索が多発したことからわかるように,正当な理由がなく捜索差押許可状を発付したのは大阪地方裁判所の裁判官だけではない。

 日弁連による警告は,大阪府警に対してのみなされたが,この警告を,警察組織のみならず全ての裁判官も真摯に受け止め,今後の捜索差押許可状の発付のあり方について今一度吟味すべきである。

以上

   
 

◎ 警察にささやかな「恩返し」を - 分限免職の取消審査請求

弁護士 北神 英典

 5月に神奈川県警を分限免職になった若い警察官の職場復帰を求める審査請求を人事委員会に申し立てました。徹底した「上命下服」と「組織さえ守ればいい」とする警察の「組織至上主義」を打ち破りたいと決意を新たにしています。

 申立てをした森川さんは、2006年4月に警察官になった若者です。いつも余ってごみになる振り込め詐欺防止のチラシを、たくさん作っても無駄ではないか - と地域課の先輩に本音をぶつける。あるいは、新任警察官への「洗礼」として伝統的に行われている実況見分調書の再三の書き直し命令に、つい、弱音を吐いてしまう。徹底的な「上命下服」の世界にあっても、「おかしい」と感じたことはつい口にしてしまう正直で飾り気のない人です。

▽1人だけトイレ前に机

 森川さんは、警察官になった直後から「コイツはうちの組織になじまない」という烙印を押されたようです。警察署の先輩や上司から「お前みたいなやつは、警察にいてはいけない」と言われ続け、署員では一人だけ、1階カウンターの外の廊下に机を出して執務をするよう命じられました。机が置かれたのは、なんとトイレの前でした。交番での宿直では、まったく仮眠を取らせてもらえないといった、いびりの標的にされました。

▽上に厚く下に薄い

 上司は、いじめてやれば、森川さんは自発的に辞めていくだろうとたかをくくっていたのではないかと思います。森川さんが辞めずに頑張ったので、しびれを切らした県警は、理由をこじつけて分限免職という非常手段に打って出てきたのです。

 私の前職である共同通信記者時代、警察は重要な取材先でした。駆け出しの盛岡支局では、取材のやり方だけでなく挨拶の仕方や電話のかけ方など、口うるさい岩手県警の幹部や盛岡東警察署の幹部らから、あれこれ指導を受けました。取材を通して、極端に「上に厚く下に薄い」警察の組織というものを知りました。

 ノンキャリアの警察官が満足に手当ももらえないまま、日常的に長時間の超過勤務を強いられている一方で、キャリアの県警首脳は高給をもらい、休日には当然のように民間企業のゴルフ接待を受けていました。ノンキャリアでも署長クラスに昇りつめた一握りの警察官は、盆暮れに数多くの中元・歳暮を受け取り、地元有力企業に天下っていました。

▽現場が「モノ言える」組織に

 あれから20年以上の月日が流れましたが、「上に厚く下に薄い」体質、不合理な命令でも絶対服従のカルチャーは何も変わっていません。

 私は、この審査請求を通じて、そういう病んだ警察の体質に風穴を開け、現場を支えている圧倒的多数のノンキャリアの警察官が、モノを言える組織に変え、ささやかな「恩返し」をしたいと考えています。

   
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