News & Topics

横浜合同法律事務所ニュース14

新春のごあいさつ

弁護士 畑山 穰

 明けましておめでとうございます。

 昨年のごあいさつでは、自民党から民主党への政権交替をうけて、これは主権者である私たち国民の力が実現した民主主義をすすめる一歩であることの確認とともに、民主党を牛耳る小沢一郎氏が田中角栄もと首相の愛弟子として政界を闊歩してきた金権腐敗の影を色濃く残す権謀術数家であること、鳩山由紀夫首相も「はと」どころかはっきりした改憲派であり油断もすきもならない人たちであることに皆さんのご注意をお願いしました。

 そして、国民生活第一を掲げて皆さんから選ばれ政権の座についた民主党が、決して手放しで政治を信託できる政党ではなく、この政権に公約のとおり、国民のための政治を実行させていくには、私たち国民の不断の監視と要求と運動による働きかけが必要であることも申し添えました。

 昨一年間の政治の様々な動きを振りかえってみますとき、普天間の米軍基地撤去問題における鳩山内閣の迷走と自滅、そのあとを受けた菅内閣が、政権交替で国民から拒否されたはずの自民党政治の古い路線への回帰をいよいよ急ぐばかりか、閣僚も議員も重要な政治問題についててんでんばらばらの議論を言い散らかし、なかには憲法九条をもつ平和国家として、自民党でさえもそれなりに自制、抑制をうたわざるを得なかった専守防衛や武器輸出三原則の歯止めを取りはずそうとはね上がった動きを示したり、失業と不況に苦しむ国民をよそに、法務大臣ほど楽な仕事はないと、国会軽視、国民無視のたるみきった放言でたちまち大臣席から転げ落ちてしまう柳田氏の例が出てくるという状況でありました。

 なかなか出口の見えない世界同時不況のなかでわが国も苦しんでおります。862兆円という途方もない財政赤字をどう解決するのか。社会の基盤である働くひとたちを苦しめる失業率の高止まり、非正規労働者の権利保護のために派遣労働法を改正すること、後期高齢者健康保険制度を廃止することなど、医療、教育、社会保障、社会福祉の後退を食い止め前進させる問題、尖閣列島、北方領土などの領土問題、そうかと思うと北朝鮮による韓国大延坪島への砲撃と核開発問題など、私たちを取り巻く課題は山積しております。

 堂々たる大木も、初めから大木であったわけではありません。小さな種から芽をだし、風雪に耐えて大きく育つものです。

 この春には統一地方選挙があります。

 私たち国民の側も、もうそろそろ二大政党制などというまやかしにはごまかされず、本当に、私たち庶民の味方として日本の政治の革新と国民のための政治を私たち国民と一緒になって実現する政党、政治勢力はどこなのかを見定めて、私たち庶民の木を、大きく、しかも早く育て上げるときだと思います。そのために、この一年、がんばっていきます。

 

あなたの時給は幾らですか?

弁護士 田渕 大輔

 契約内容は本来自由に決められるものですが、労働契約においては、労働者を保護する観点から、法律による多くの制約があります。その中の一つとして、最低賃金法という法律による制約があります。

 最低賃金法は文字通り、給与の額を定めるにあたって最低額を保障する法律です。契約当事者の間で、最低賃金以下の金額を給与額と決めても、労働者は最低賃金額で計算した給与を請求できます。また、使用者に対する罰則もあります。

 現在、神奈川県の最低賃金は時給818円ですが、神奈川県を含む複数の都道府県において、最低賃金の時給額が生活保護費を時給換算した金額を下回る状態にあります。そのため、最低賃金が生活保護費を下回る状態を是正することが急務となっています。また、今年の6月には、2020年までに全国平均で時給1000円を目指すことが、政労使の代表からなる雇用戦略会議の場で確認されています。

 最低賃金の引き上げに反対する立場の人々からは、最低賃金を引き上げると中小企業は潰れてしまうであるとか、最低賃金を引き上げることで企業が雇用を控えるようになり、労働者から多様な働き方が奪われてしまうとの批判が加えられます。

 しかし、果たして時給1000円は給与として高すぎる金額なのでしょうか。例えば1年間で1800時間働くとして、時給1000円ならば年収は180万円にしかなりません。1ヶ月わずか15万円です。しかも、ここから生活に必要な諸経費を除けば、まさにギリギリの生活を送るしかありません。体調を崩して仕事を休んだり、病気や怪我をして通院するようなことになれば、たちまち生活は破綻してしまうでしょう。

 さらに、最低賃金との比較対象として引き合いに出されることの多い生活保護費ですが、厚生労働省が行っている時給換算の方法には、幾つもの問題点が指摘されています。厚生労働省が行っている方法の問題点を正した形で行われた計算では、神奈川県における生活保護費の時給換算額について、1200円台あるいは1400円台との数値も算出されているのです。

 最低賃金が引き上げられることは、最低賃金水準で働いている人々の給与を直接引き上げる効果を生むだけでなく、賃金水準全体の引き上げにもつながる効果が期待できます。デフレから脱却できず、内需が極度に冷え込んでいる今、働く人々の給与が増えれば、国内の景気回復にも資することでしょう。

 働く人みんなが幸せになるために、最低賃金の早期かつ大幅な引き上げを実現していくことは不可欠なのです。

 
 

大阪地検の証拠改ざんと証拠隠蔽

弁護士 小口 千惠子

 大阪地検の特捜部の主任検事が郵便不正事件の捜査過程で物的証拠を改ざんしたことが明らかになりました。マスコミは前代未聞の事件として、特捜の存続問題を議論しています。

 しかし、捜査機関による証拠の改ざん・ねつ造、無罪を証明する証拠の隠滅などは今に始まったことではありません。日本の捜査機関の根深い体質そのものなのです。捜査機関が客観的な証拠とは無関係にストーリーを組み立て、これと異なることを説明する目撃者に対して自分たちのストーリー通りの証言を強い、あるいは形勢が悪くなるたびに供述を次々と変えさせるといったことは、弁護士であれば誰もが経験しています。

 これが捜査手法の王道となった原因は、裁判所がすべての証拠の開示を命じることをせず、不合理なことがあっても目をつぶり、捜査機関の作文である供述のみで有罪判決を出し続けたことにあります。これが、日本の刑事裁判の有罪率99.99%の実態なのです。

 これらの手法は一旦死刑判決が出てその後えん罪と判明した多くの事件でも共通しています。例えば免田事件では、事件当日に一緒に居たというアリバイ証言を捜査機関が変更させ、また、物証の着衣を破棄するなどしました。

 このような事実に基礎を置かない自白や供述調書の偏重が誤判やえん罪の温床となることは、以前から指摘され続けていることです。日弁連や国際機関は自白強要の場となる前近代的な警察の留置場の廃止を求めて来ましたが、この制度は一向に改善されませんでした。そして、裁判員制度が導入された時には、短期間の公判手続きの中で真実を見極める必要があることから、取り調べの全面可視化や証拠の全面開示を強く求めましたが、検察庁はこれにあくまでも反対しています。

 最高裁は控えめながら、取り調べの際に作成した捜査官のメモは開示されるべきとの判断を示しています。最高検もこれに従いメモを適正に保存するように通知を出したのですが、その中で、必要性の乏しいメモは保管しておくと開示するかどうかで無用な問題が生じかねないので速やかに廃棄すべきとしていました。郵便不正事件では6人の検事はこれに従って「取り調べをメモしたノートはすべて廃棄した」のでした。

 国家権力は、政策遂行への反対運動が盛り上がると、証拠をねつ造して、その中心人物に対して刑事事件をでっち上げることさえします。例えば民営化路線の先駆けとなった国鉄民営化の際、国労組合員は公務執行妨害罪と傷害罪をでっち上げられました。

 権力は、国民の監視がなければ濫用されてしまうのです。これを監視して適正に運用させるのは私たち国民であることを忘れてはなりません。

 

派遣法改正で派遣労働者の職は失われるのか
〜東京大学社会科学研究所のアンケートから〜

弁護士 田井 勝
  1.  国会で審議予定の労働者派遣法改正案に盛り込まれた製造業派遣の原則禁止について、製造現場で働く派遣社員のうち、55.3パーセントが「反対」と解答し、「賛成」は13.5パーセントにとどまる - 先日、東京大学社会科学研究所というところが調査したこのアンケート結果が、マスコミで報道されました。また、派遣社員の反対の理由は、製造業派遣が原則禁止されると、自分たちの職が失われるのではないか、というものでした。 
     このアンケート結果に代表されるように、現在多くのマスコミで「派遣法改正により、派遣労働者の職が失われるのではないか」という報道がなされています。

  2.  確かに、製造業派遣業に従事している派遣労働者にとって、その製造業派遣が原則禁止されることを不安視するのは当然と言えば当然のことです。
     では、派遣法が改正されることで、派遣労働者の職は失われるのでしょうか。
     派遣先の企業は、労働者を必要としています。製造業派遣が禁止されたとしても、企業は仕事があるならば、派遣ではなく、有期とはいえ、直接雇用で労働者を採用するはずです。つまり、製造業の労働者の職が失われるかどうかは、企業に仕事があるかどうかで決まるのであり、製造業派遣の禁止とは関係がないはずなのです。
     また、そもそも改正派遣法は、派遣という働き方の全面禁止を要求するものでなく、一時的・臨時的派遣労働(例えば、冬の一定時期だけ働くような形態)自体は、存続するのです。今回の派遣法改正は、違法、脱法な派遣労働の在り方を改善、整備するものであり、派遣労働者の仕事を否定する内容ではありません。

  3.  2008年末、リーマンショックに端を発した、自動車製造業における派遣切りが、大きな社会問題となりました。この時、企業は「100年に一度の不況」をキーワードに、自分たちの行為を正当化しようとしました。
     しかしながら、多くの企業は、派遣切りをした時期に多くの内部留保を有しており、また、黒字経営であった企業も多く存しました。
     彼らには派遣切りを正当化する理由など何もなく、自らの利益追求のため、解雇しやすい派遣社員を切ったに過ぎません。このことは、現在日本中で行われている多くの派遣切り裁判の中で明らかとなっています。

  4. 派遣法改正による、派遣労働者への悪影響を伝える報道は、企業側の主張によったものが大半です。前述のアンケート結果も、派遣会社が同研究所に調査資金を提供して行われたものと言われています。
     違法な常用代替や派遣切りがあっても、現在の派遣法では、派遣先も派遣元もほとんど責任を負いません。
     派遣法が改正されない限り、派遣社員の雇用の安定は考えられず、このままでは、再び、企業が安易な派遣切りを行うことも可能です。

     上記報道により、派遣法改正の流れが逆戻りすべきではありません。十分に審議された上で、派遣法が抜本改正される必要があります。
 

「許し合い、信じよう」ジュリーと誓う

弁護士 関守 麻紀子
  1.  沢田研二が「かながわ女性9条の会」の企画「愛LOVE9条」に参加して「我が窮状」を歌ってくれると聞いたとき、驚きました。
     「我が窮状」はジュリー自らが作詞した歌で、「我が窮状 守れないなら 真の平和ありえない」などの歌詞から、「『窮状』は『9条』だ」、などと、ネットなどで話題になっていました。
     ジュリーのような大御所が、1曲だけとはいえ、市民の集まりで歌ってくれるというのは、相当大変なことのはず。ジュリーの出演は、多くの人に勇気を与えると思いました。

  2.  当日は、あの広い神奈川県民ホールが埋め尽くされました(ほとんどが女性)。神奈フィルのメンバーの演奏、湯川れい子さんの講演、とプログラムが進み、ついにジュリーが登場。
     「今日はひとりの神奈川県民として参加しました」とのあいさつに、2000人もの参加者の気持ちがぎゅっと一つになったように感じました。
     ジュリーは、本当に、気持ちを込めて、歌いました。ひとつひとつの詞に込められた思いは、参加者みなの心の奥深くに届いたと思います。

  3.  この数年、普通の人が普通に生活していくことが難しくなってきている、と感じています。お金がないので子どもに進学を断念させなければならないと泣くお母さん、睡眠時間を削りいくつもの仕事を掛け持ちして働いても生活が安定せず、疲労と不安とで、心身ともにへとへとになっている人。普通に生きて生活することが、今は、簡単なことではないのです。
     「人間関係がうまく行かないし、将来のこととか、不安・・・」と言う高校生に、大人として何と言えばよいのか、言葉に詰まったこともありました。「自分自身を、周りの人たちを、未来を、信じようよ」と言ってあげたい。しかし、口にすることは簡単だけれど、普通に生活することすら難しい状況で、未来を信じろなんて簡単に言っていいのか・・・。
     そんなとき、ジュリーの「我が窮状 守りきりたい 許し合い 信じよう」のフレーズがぐっと胸に響きました。
     周囲や未来を信じることが難しいような社会では、ひとりひとりの尊厳が守られているとはとうてい言えないのです。互いに、許し合い、信じ合える社会を作らなければならない、そう思いました。
 

日本年金機構移行で消えた年金問題は解決されるのか
〜日本年金機構に行って調査してきました〜

弁護士 近藤 ちとせ
  1.  何のために年金事務所に行くのか
     皆さんは,2007年に発覚した消えた年金問題がその後どうなったかご存じでしょうか。消えた年金問題は,約5000万件の年金記録が消えてたという問題でしたが,当時の自公政権は,この問題があたかも社会保険庁の個々の職員の怠慢やミスが原因であるかのように取り上げ,社会保険庁を解体して民営化することで解決するという方針をとりました。民主党政権になった後も,結局はこの方針が引き継がれ,社会保険庁は2009年末をもって解体され,現在は日本年金機構という民間の組織が,厚生労働省から委託を受けて私たちの年金に関する事務処理を行っています。
     私たちは,自由法曹団神奈川支部(神奈川の法律家の団体)の一員として,2008年以来,この消えた年金問題と社会保険庁の解体の問題に関心を持ち,消えた年金問題の解決は進んでいるのか,そのために社会保険庁の解体は正しい選択なのか等について知るべく,2008年12月には当時の社会保険事務所へ,そして,今年2010年の11月2日には,年金事務所を訪問し,調査を実施してきました。

  2.  2008年に社会保険事務所を訪ねたときの状況
     調査当日は,横浜南社会保険事務所に夕方6時頃事務所に着きましたが,ほとんどの職員は残業中でした。当時の組合の調査に寄れば,2008年8月の段階で,21時以降に退庁する職員は,全職員の80%,23時以降に退庁する人は,全職員の職員の12%ということでした。この当時,一人あたり平均の残業時間は,月80時間を超えていましたが,残業手当などの超過勤務手当は,予算を理由に月12時間までしか支払われないということでした。
      当時の職員の方々にお話を聞いたところ,消えた年金問題発覚の後,社会保険事務所の窓口には年金相談のために人が押し寄せ,朝9時の開庁前から事務所の入り口には20人待ち、30人待ちという列ができ,開庁したらすぐに相談受付を打ちきって,それから夕方まで相談業務をひたすらこなす状況でした。また,当時は,消えた年金問題の専門部はかったので、他の徴収部,納付部などの職員が,朝8時から夜7時まで消えた年金問題について相談窓口で相談を行い,その後に初めて自分の部署の職務に戻って,通常の業務を始める有様でした。残業は,必然的なものだったのです。

  3.  今回の実態調査の状況(2010年11月2日)
     今年の11月2日,日本年金機構横浜南事務所(以前の横浜南社会保険事務所と同じ場所)を訪問しました。
     事務所では,南事務所の大塚所長が対応してくれました。大塚所長は,民間の金融機関出身で,2009年2月に社会保険庁により採用され,今年の1月から南事務所の所長となり,11ヶ月が経ったところであるとのことでした。

    1.  時間外手当未払いはなくなった
       今回の調査で分かったことは,社保庁時代とはことなり,残業時間は法律の範囲で収まり,残業手当も支払われているということでした。その背景には,残業時間の減少があるとのことでした。
       残業時間については,年間360時間までという協定になっているが,月平均で30時間までは残業をしていないはずというのです。

    2.  外部委託の増加
       また,日本年金機構に移行してからは,元々社会保険事務所が行っていた事務を外部へ委託することが増えたとのことでした。特に納付・徴収業務については外注が増え,年金の納付等については「もしもしホットライン」というところに外注し,戸別訪問や電話かけをしてもらっているとのことでした。
       また,これまで,免除対象者への対処については,職員が専門で回っていたが,それについても外部委託になりました。
       さらに,年金問題解明のための事務は,それまでは社会保険事務所で行っていましたが,現在は全国をブロック分けして,各ブロックに置かれることとなったセンターと呼ばれる事務所で,別に行っているとのことでした。そして,このセンターで行われるパソコンへの打ち込み業務や,郵便物の発送業務などが外部委託されているとのことです。

    3.  日本年金機構の抱える問題
       これだけを聞くと,外部委託によって,職員の残業量は減り,業務は正常化したのではないかとも思われます。しかし,今回の調査では,以下の問題点も浮かび上がってきました。

      〜外部委託労働者の労働条件〜
       これまで社会保険事務所の職員が行っていた事務の一部は,前記のように外部委託されることになりました。しかし,この外部委託の法形式は請負が多く,働く人々は,不安定な地位での就業を余儀なくされているという問題があります。
       また,今回外部委託が請負の形式でなされることになったのは,当初日本年金機構が派遣の形式で外部委託していたところ,派遣法に違反しているとの指摘を受けたことによります。そのため,請負形式で外部委託することとなりましたが,請負負契約では,派遣とは異なり,働く現場において上司などが直接指示をしたりすることはできません。そのため,外部委託の人たちが,複雑な年金業務をこなすことができるのかという問題も気になります。

      〜有期雇用の増加〜
       横浜南事務所の職員は,全員で64名ですが,そのうち,社会保険庁出身の職員は20〜25名,機構に移行する際に民間から採用された人が,6人か7人,そして,職員の約55%が有期雇用とのことでした。
       有期雇用の人たちは,基本的に賃金が低く,また,最長で7年以内に雇い止めとなることが予定されています。短期間で職を変えさせられる職員に,年金等に関する専門的な知識を身につけることを求めたり,年金業務を責任を持って遂行することを求めるのは,無理があるのではないでしょうか。

      〜年金記録整備の進捗状況〜
       2010年10月12日,民主党政権は,年金記録の原簿である6億件の紙台帳記録とコンピューター上の記録の突合を開始すると発表しました。これは,もともと年金記録には古い記録である紙台帳の記録と,新しい記録であるコンピュータの記録とがありますが,これらの整合性を検査する手続きです。手順としては,古い年金記録である紙台帳の内容をすべてコンピュータに打ち込み,それを元々打ち込んである新しいコンピューターの記録と照合させ,マッチングするというものです。
       この記録の突合は,基本的に外部委託で行うこととされており,横浜では現在,みなとみらいのクイーンズタワーの8階から11階の会場を借り切って作業が始まっています。
       しかし,この6億件の記録の突合については,そもそも,もともと入力されているコンピューターの記録が正しく,紙台帳の記録が誤っているとは限らないため,そもそも確認ができず無駄な作業に終わるのではないかという疑問が,日本年金機構の内部からも聞こえてきています。
       また,コンピューターへの入力は,全て外部委託で行われますが,コンピューターの入力に間違いがあると,結局は,新しい記録とのマッチングも不正確になる可能性が指摘されています。しかも,日本年金機構で聞いた話では,このコンピューター入力の外部委託は入札で決められているところ,入札には,日本語の不自由な外国人労働者も参加していたとのことであり,さらなる不安を感じざるを得ません。
 

田畑事件判決ー米兵犯罪

弁護士 高橋 宏
  1.  田畑事件
     2010年9月30日、東京高等裁判所で田畑事件の控訴審判決がありました。
     横須賀の米兵犯罪では、2006年1月3日早朝に発生した山崎事件がよく知られています。田畑事件は、この山崎事件が発生した同じ年の2006年の9月5日早朝に発生した、タクシー運転手の田畑さんに対する強盗傷害事件です。
     この事件は、山崎事件と同様、前日から夜通し早朝まで飲酒した米兵が起こしたものでした。午前6時ころ、タクシー代を支払わずに車を下り、運賃を請求した田畑さんに対し、米兵のひとりが3〜4回投げ飛ばし、別の米兵が、田畑さんの顔面を、正面から殴って、田畑さんの義歯ブリッジを3つに砕いてしまう程の怪我を負わせたというものです。

  2.  驚くべき「規制」の実態
     米軍は、飲酒が米兵犯罪の主要な原因になっているとして、山崎事件発生後、米兵犯罪を防止するために、米兵に対して、深夜の外出規制及び深夜の飲酒規制を実施しました。ところが、田畑事件の加害者米兵は、この規制を完全に破って、深夜に外出した上、早朝まで飲酒して、この事件を起こしました。
     しかも、これらの外出規制や飲酒規制を破っていたのは、この加害者米兵だけではありませんでした。ほとんどの米兵が、これらの規制を、頻繁に破っており、それなのに、米軍当局は、規制に違反した米兵を見ても、特に注意をしたりすることはなかったというのです。このような信じがたい実態が、加害者米兵の証言によって明らかになりました。
     田畑事件は、このような米軍当局の取締まりの実態の中で、起こるべくして起こったといってよい事件でした。

  3.  東京高裁判決
     2010年9月30日に下された高裁判決は、以上のような取締りの実態から、米軍による規制が徹底されていた場合には、本件事件は発生しなかった可能性を否定できないとの判断を示しました。ところが、判決は、そのような判断をすることと、在日米海軍が飲酒規制等を徹底しなかったことが違法であることとは、別個の問題であるとしました。そして、それ以上に特別な理由も示すことなく、規制を徹底しなかったことが、米軍上司の監督義務の違反にならないとした原判決に誤りはないとの判断を下したのでした。
     しかしながら、これでは、結論を述べているだけのことで、米兵の違反行為に対する黙認が、米軍上司の監督義務違反にならないことの理由が全く不明と言わざるを得ません。

  4.  怒りの上告
     外出規制や飲酒規制は、米兵犯罪の予防のために必要であるとして、米軍自らが定めた規制です。その規制違反を米軍が黙認し続けた結果、またもや米兵犯罪が繰り返されたのです。それなのに、それでも米軍の黙認行為が違法ではないというのであれば、一体、何のための規制なのかと考える方が常識的なのではないのでしょうか。
     それとも、アメリカと米軍に対しては、常識は通用しなくてもよいというのでしょうか。 裁判所も含め、わが国が、このような姿勢を続けている限り、米兵犯罪は、いつまでも当然のように、繰り返されてしまうのではないでしょうか。
     田畑さんは、10月14日、最高裁判所に対して、怒りの上告を行いました。
 

2011年教科書採択問題

弁護士 阪田 勝彦

 あまり知られていないが、来年2011年は中学校の教科書採択の年である。教科書は子どもが勉強をする基礎となるものであり、その重要性は極めて大きい。その中でも歴史教科書は、従来の歴史教科書を「自虐史観」の影響を強く受けているとして、新たな歴史教科書をつくろうという運動を進める団体が作成した、いわゆる「つくる会」教科書の存在もあり、議論を呼んでいる。

 横浜市における教科書採択は以下のような手続きになっている。まず,条例上,学校長・研究者や保護者などで構成される教科書取扱審議会という諮問機関が調査委員などを用いて調査し,対象教科書の評価をして答申する。そしてその答申を受けて,教育委員会が教科書採択を行うという仕組みになっている。

 2001年度までは,諮問機関の調査段階で,学校票という意見を出すことができ,現場の声を教科書採択に反映させることができていたが,条例の改訂によってこの制度は廃止されてしまった。2005年度教科書採択では,6名の教育委員のうち,前横浜市長中田宏から肝入りで任命された今田忠彦委員だけが「つくる会教科書」に票を投じたが,残り5名の教育委員は票を投じず,つくる会教科書の採択は見送られた。

 しかし,この結果を受けて,中田前市長は,今田委員以外の教育委員を全員入れ替え,今田委員を教育委員長に任命する。そして迎えた2009年度教科書採択において,この教育委員会は暴挙に出る。即ち,採択の前の諮問である教科書取扱審議会においては,最低評価だった自由社版教科書(6つある推薦項目のうち,全18区で自由社版は9区でわずか1項目の推薦を受けるにとどまった。残り9区では評価ゼロ)を18行政区のうち8区(港南区,港北区,青葉区,都筑区,金沢区,緑区,瀬谷区,旭区)で採択したのである。諮問機関の答申を完全に無視した異常な採択であった。

 表を見ると一目瞭然だが,2009年度教科書採択は,横浜市教委の採択は諮問機関の答申を完全に無視している。3つの候補となっている教科書で合計6ポイント中何ポイントを獲得できたかをみると、自由社は最高で1ポイントしか獲得できていない、酷いことに評価ゼロであった金沢区・緑区ですら自由社が採択されている。これは群馬中央バス最高裁判決が示した審議会答申尊重義務(原則として答申に従い,これに反した行政処分を行う際には特段の合理的理由を要する)に違反する疑いが濃厚である。

 また、自由社版「つくる会」教科書は、主に心理学者の手によって作成されているため、歴史学的な誤りが多いことが指摘されている。実際に検定合格後に多数の記述の誤りが見つかり、自由社自身が文科省に40カ所に渡る訂正の申し立てを行っているような状況である。自由社版教科書が採択されているのは、全国でも横浜市以外では4校しかない(東京都市大学付属等々力中学、甲子園学院中学(兵庫)、岡山学芸館清秀中学、真和中学校(熊本))。それが横浜市だけ、8区もの中学校で使用することとなるのである。

 このような教科書を子ども達が使用しなければならないことから,その不十分な点を補うべく,横浜市教職員組合(浜教組)は全組合員に資料集を配布した。その資料集の記載上,教科書を全く使用しないよう促す記載はなかったが、これに対して、自由社版「つくる会」教科書の促進をすすめる団体は、教科書不使用運動であるなどとして市議会に圧力を加え、来年度の教科書採択でさらに、横浜市立中学校に自由社版「つくる会」教科書を広めようと活動を行っているのが現状である。

 考えなくてはいけないのは、子ども達が何を学ぶべきなのかという視点である。先の大戦の悲惨な記述を「自虐的」としてしりぞけ美化することが、本当に子ども達のためとなるのか、この問題の中心となってしまった、横浜市在住の中学生の子を持つ親の世代は選択を迫られている。

以上

 

債権法改正の議論のご紹介(雇用契約と時効に関する諸問題)

弁護士 太田 啓子

 前回の事務所ニュースに引き続き、現在法制審議会の民法部会で議論されている債権法改正の内容のうち、時効をテーマに取り上げます。時効の中でも雇用契約に関連する時効について、議論の内容をご紹介します。

  1. 賃金債権の消滅時効
     現在の民法では債権の原則的な時効期間は10年ですが、例外として短期消滅時効の制度があり、賃金債権については1年で時効消滅することになっています(174条)。ただし、労働者保護の観点から労働基準法(以下「労基法」)で特則が定められ、賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権の時効期間は2年間、退職手当の請求権は5年とされています。
     ところで法制審議会民法(債権法)部会(以下「部会」)での議論では、短期消滅時効制度を廃止して時効期間をできるだけ統一化ないし単純化する、具体的には、債権の原則的な時効期間を3年または5年にするという案について検討されています。
     部会の議事録をみると、債権の原則的な時効期間について3年は支持されておらず、短縮化するとしてもその期間は5年を支持するという意見が目立ちます。ただし、そもそも現在の時効期間を変える必要性はあるのかと疑問を投げかけ、慎重な検討を要するとする意見もありましたので、実際に債権の原則的な時効期間が短縮化されるかの見通しははっきりわからないと思います。
     もし民法改正で債権の原則的な時効期間が5年とされた場合、賃金債権の時効期間が民法より短い2年のままでは、労働者保護を目的とする労基法の精神からして本末転倒なので、労基法上の時効期間も少なくとも民法上の時効期間と同じかそれ以上に延長すべきだと考えられます。また、退職手当と賃金債権の相違を重視するなら、退職手当については賃金債権より更に長い時効期間を定めるべきということになります。ただし、労基法上、罰則付きで使用者に課せられている労働者名簿、賃金台帳等労働関係上の重要な書類の保存義務の期間は3年間ですから、時効期間の延長は、使用者側の負担を過重にするもので不適切だとの見解もあります。もし賃金債権の時効期間を延長する場合には書類の保存義務期間についても検討が必要になるでしょう。

  2. 不法行為による損害賠償請求権の時効(現行民法724条)の廃止
     現行民法724条は「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする」と定めていますが、部会の議論では、この条文を廃止して、債権一般の原則的な時効期間と同じ3年か5年に統一すること、また、生命や身体等の損害賠償請求権については原則的な時効期間より長期の期間を定めること、後段の「20年」については現在は時効ではなく除斥期間と解されているところ、時効であるということを立法で明確にするということが検討されています。
     労働災害について使用者に民事責任を追及する場合、不法行為構成と債務不履行構成の両方が考えるのですが、債務不履行構成をとることのメリットの一つは、不法行為構成より時効期間が長いことでした。もし時効期間が統一されると、このメリットはなくなるので、時効期間にとらわれずに法的構成を考えることができるようになります。
     また、除斥期間というのは時効と異なり中断が無く、20年を越えてからの損害賠償請求では大きな壁になっていましたので、もしこれが立法で時効と明確化されるのであれば、被災者にとっては有利でしょう。

  3. 時効期間の合意による変更
     部会では、当事者間の合意で、法律の規定と異なる時効期間や起算点を設定することの可否についても議論されています。
     しかし議事録をみると、これは、労使、消費者と事業者、中小企業と大企業など、一般的に力関係や情報量に差があると考えられる契約の弱者側の立場から反対意見が多く出されており、評判が悪いようです。例えば労使関係では、採用時に使用者から「賃金債権の時効期間について短くすることに合意しなければ採用しない」と言われて、採用を希望する立場からそれを断ることができるか、ということが懸念されています。
     このような懸念に配慮し、原則として当事者の合意で時効期間を変更できるとしつつ、濫用が典型的に予想されるような、消費者取引や労働の場面については認めないようにするという案も、部会の議論では出てきています。
     しかし、そのような濫用の懸念を押してまで立法によって合意による時効期間の変更を認める必要があるのか、現在でも当事者が契約で「この請求については1年以内に申し出てください、1年以内に申し出ないときにはもう駄目です」とその権利の内容を決めるという合意自体は、強行法規に抵触しないか等の制約はあっても原則としてあり得るのだからそれで十分ではないかというのが私の個人的な意見です。

以上

 

日本国憲法史上最大の汚点「レッドパージ」
〜被害者に対して早期の救済を!〜

弁護士 根岸 義道
  1.  現在の我が国の憲法である日本国憲法が、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三大原則に基づく民主主義的憲法で、昭和21年11月3日に公布、昭和22年5月3日に施行されたものであることは、多くの人々がご存じだと思います。

  2.  ところが、昭和24年及び25年に、当時も合法政党であった日本共産党の党員や支持者、労働組合で共産党員と一緒に活動していた者、あるいはこれらの者と誤解された者が、日本共産党の党員もしくは支持者であると言うだけで、ある日突然国ぐるみの解雇が行われ、公務職場から、教育現場から、大企業から排除されていきました。いわゆるレッド・パージと呼ばれているもので、これにより職を奪われ、路頭に迷うことになった人々は、全国で推定四万人にものぼったといいます。
     もちろん、この頃は日本国憲法が既に施行されておりましたから、日本国憲法一九条が定める思想・良心の自由や二一条の集会・結社・言論・出版等の自由を蹂躙するもので、明白な憲法違反の出来事でした。

  3.  レッド・パージは、第二次大戦の敗戦国である日本を占領した米軍総司令部が、日本の民主化をめざした当初の方針を転向して、日本を「共産主義の防波堤」にする(いわゆる「逆コース」)ために、日本共産党の党員や支持者を公務職場、教育現場、大企業等から排除することを日本政府や大企業に指示することにより行われました。
     この指示の内容は、前記のとおり日本国憲法に違反したものでしたが、それだけではなく、敗戦後の日本のあり方として「言論・宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重の確立」を定めた国際協約であるポツダム宣言にも反するもので、どこから見ても法的正当性は存在しないものでした。
     ところが、本来憲法の番人であるべき最高裁は、総司令部の指示の法的効力を何ら検討せず、総司令部の指示には超憲法的な効力があるとして、これらの暴挙を認め、それどころか昭和27年4月のサンフランシスコ条約の発効によって日本が占領から独立し、日本国憲法を享受できるようになったにもかかわらず、その後も超憲法的権力によって被害を受けた人々の被害救済を認めようともせずに今日に至りました。

  4. 被害者たちの救済を求める運動は継続されており、この運動によってまず平成20年10月に日本弁護士連合会が国や旭硝子・JFEスチールに対して被害者である申立人の被害回復のために名誉回復や保障を含めた適切な措置をとることを勧告し、次いで平成22年2月に横浜弁護士会も国に対して同様の勧告を行いました。
     レッド・パージが行われてから既に60年が経過し、被害者は高齢化していますので、早期に救済措置を実現させ、日本国憲法最大の汚点を濯ぐ必要があります。
     現在、被害者たちは、救済を求める請願署名なども行っておりますので、多くの人々に関心を持っていただき、ご協力をお願いしたいと思います。
 

司法修習生の給費制廃止1年先送りへ 維持を求めてPR活動

弁護士 北神 英典

 ニュースでご存知の人もいると思いますが、昨年廃止される予定だった司法修習生の「給費(給料)制」が、もう1年、生き延びることになりました。

 弁護士会は、給費制の廃止は、金持ちの子供しか弁護士や裁判官になれない社会を生み、格差をますます固定化すると訴えて反対してきました。当事務所でも、東京で行われた2000人パレードに参加したり、署名集めをお願いしたり、存続を求める活動をしてきました。廃止の先送りは、こうした訴えが一応世論の理解を得た結果といえるでしょう。

 司法修習生とは、弁護士や裁判官、検察官(法曹三者と呼ばれます)のいわば見習いです。司法試験の合格者は、さらに1年間、司法修習生として現実の弁護士の仕事や裁判の仕組みなどを勉強し、その上で国家試験に合格して初めて法曹の仕事をすることができるようになります。

 もっとも司法修習生が生活のことを考えずに勉強に専念できる環境を整えないと、アルバイトに精を出して勉強を怠り、そのツケを一般市民が払わなければならなくなる可能性があります。そこで、国は、司法修習生に勉強に専念する義務を課す一方で、給与を支払ってきました。

 ところが、司法改革という名の規制緩和によって、司法修習生が大量に生み出される一方、これに伴って膨らむ給与については、国はもはや面倒を見切れないとの政治判断で、給費制は廃止され、代わって生活費を貸し付ける「貸与制」が昨年11月から導入されることになっていました。

 法曹の仕事は、程度の差はあれ公共的な要素があり、弁護士の仕事も、それが単に当該弁護士の収入や生活を支えているという以上の意味を持っていると感じます。経済的には絶対にペイしないえん罪事件の弁護活動や、およそ救済困難と考えられていた公害や薬害裁判で弁護団を組み、5年、10年と国や大企業と争い、被害救済につながったというケースもあります。弁護士のこうした活動の原動力の一つは、自分の職業が公共的な性格を帯びていることに対する自覚であると思います。そうした自覚を支えている制度のひとつが司法修習生時代の給費制であるといえます。

 これに対して貸与制は、生活費の借り入れは修習生個人の先行投資であるとの考え方、法曹の仕事を純粋なビジネスとみる割り切った考え方に立っているように思えてなりません。

 社会に関心がなく、ただ自分が高収入を得ることさえできればいいと思っている弁護士、中には依頼者を食い物にしているとしか思えない弁護士も、既に相当数いるように思われます。この上、職業の公共性という建前も奪ってしまえば、弁護士のモラルの低下は一気に進み、最後は一般市民の利益が損なわれる結果を招くのではないか、本当に心配です。

 給費制の廃止 - 貸与制の開始は1年先送りされたにすぎません。貸与制に向けた流れを改めることができるのか、勝負は今年です。

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